還暦勇者? 異世界転移する 1
私の名は【竹田信晴】武田信玄好きの父に俗名
「晴信」を逆さにして命名された。
目笠電機産業株式会社 埼玉支社第一営業部
第一課の課長をしていた。
60歳定年から継続雇用で平社員から再出発の
日に、とんでもないことに巻き込まれてしまう。
果たして私は無事に「古希(70歳)」を迎える
ことが出来るのだろうか?
ピリピリッ!、ピリピリッ!、ピリピリッ!
私のスマホの目覚ましアラームが鳴ってる。
いつもの朝に、いつもの目覚ましアラームだが
零和6年4月1日は新たな出発の朝になるはず
・・・だった。
いや?改めて想い返すと、ある意味その通りに
なったのか。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
(う~ん目蓋が重い。二日酔い?年甲斐もなく
昨夜は羽目を外し過ぎたか)
それでも意を決して目を開けると、裸眼でぼや
ける近視の目に見覚えの無い天井が見えた。
(はて・・・自宅じゃないな?ここはどこだ?
そんな事より早くアラームを止めないと)
「どっこいしょっ」と、いつもの口癖を言い
ながら重い身体を起こそうと寝返りを打って
手を伸ばした。
その時だ、私の掌は『むにゅ』とした弾力の
軟式テニスボールのような手触りを感じた。
(なんだ?)一瞬戸惑ったものの、触り覚えの
ある"それ"を思わず掌に包み込み圧縮&開放を
繰り返した。
それは紛れもなく全ての男子が憧れる"それ"に
間違い無かった。
更に圧縮&開放すると、再び『むにゅ』とした
感覚と共に「あんっ❤」と言う艶っぽい声。
驚いた私は、今一度裸眼でぼやける近視の目を
擦り擦り凝視すると、見覚えのある女性の顔が
そこにあった。
「咲良くんか?」と問い掛けると「あっ、課長
おはようございますぅ」と屈託なく挨拶をする
彼女は、やはり【鴨川咲良】だった。
彼女は、目笠電機産業株式会社 埼玉支社第一
営業部第一課の部下だ。
(いや、今日からは同僚だな)
我社では、60歳定年後引き続き職場に残れる
制度がある。(但し役職は無く平社員だが)
「あぁ、おはよう。ところで咲良くん、ここは
何処だね?」と問い掛ける私に、彼女は再び
笑顔で言った。
「やだなぁ課長、ここ私のアパートですよぉ」
「昨夜泊ったじぁないですかぁ、えへっ」
「昨夜は私の還暦(60歳)祝いだったが、
そのあと私は君の家に泊まったのか?」と聞く
私に少々拗ねた表情で咲良くんは話を続けた。
「そうですよぉ、覚えてないんですか?昨夜は
あんなに激しかったのにっ」と答えたあと唇を
尖らせた。
私は「ふう」と小さく溜息をつき、(この娘は
けろっと、とんでもないことを言うんだなぁ)と
苦笑いした。
目覚ましアラームは、まだ鳴り響いていた。