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いつも通り

明日が来るとは限らない。今日を生きれることに感謝を。


「意外と痛くないんだなー」それが私の最期の言葉だった。いわゆる遺言ってやつ。我ながらさいてーな最期だったと思う。でもそれが、私らしくもあった。3年前に新卒で入社した会社は、ぶっちゃけると可もなく不可もなくって感じだった。近年、問題視されてきた過重労働とか、上司のパワハラとかは全く無く、それどころか上司も部下も年齢性別関係無く仲が良かった。連日、早朝のニュースで「上司からの日常的なセクハラか!?」、「深夜残業で過労死」などのテロップを見る度に自分は恵まれているのだと常々思っていた。それでも「可もなく」と感じていたのは、仕事にやりがいを持てなかったからだろうか。

今日もいつも通り出社して、いつも通り定時で退社した。いつも通り、買い物帰りの女子高生やら、最近新しく出来た遊園地の名がデカデカと書かれた袋を持った親子連れやらと電車に揺られながら帰路に着く。いつも通りドア横の角席に座りながら、漫画アプリを開いて無料で読める少女漫画を探す。「まだ少女漫画読んでるの?」大学時代に勉強サークルの友人(仮)に言われたっけか。誰が何読んでようと関係ないのに。良いじゃないか、社会人になって少女漫画を読んでいても。いつも通り7駅先の駅で降りる。いつも通り一番端の改札を出て、いつも通り線路沿いの道を真っ直ぐ家に帰る。いつも通り、いつも通り。冬になり、すっかり沈むのが早くなってしまった太陽。いつも通り、いつも通り。夜道にハイヒールの音を響かせながら。いつも通り、いつも…。その瞬間体にものすごい衝撃が走った。正確に言うと背中に。

「いつも通り」って当たり前じゃないんだな。私は初めて「それ」を震撼させられた。当たり障りない生き方をしてきた。その生き方に私は満足していたし、不満はなかった。そのはずなのに。

その日、私は殺された。

人生100年時代とか言うのになー。明日の朝には新聞の見出しを飾ってたりしてー。「閑静な住宅街で事件25歳女性殺害」とか、近所のおばちゃんとかがインタビュー受けんのかなー、「恨みを買うような子じゃなかったんです」とか言っちゃって。あぁ気になる漫画まだあったのになー。やばっ明日期限のプレゼン資料まだ送ってなかった。まぁいいか、もう死んじゃったんだしね。

「死んでないとしたらどうするの?」

真後ろから聞こえる声に「へっ」と素っ頓狂な声で返事をする。気づけば私は、殺されたはずの線路沿いの道に座り込んでいた。ゆっくりと後ろを振り返る。

「ひっ」

また、素っ頓狂な声を出してしまった。目の前に真っ黒な影があった。

雲から月が顔を出し、その光に照らされて、黒い影が色を取り戻す。微妙に丈が足りていない薄紺色のスーツに、その隙間から覗く蛍光グリーンと蛍光イエローのストライプが入った靴下、オレンジ色に白の水玉ネクタイ、漆黒で艶のある髪は前髪だけ眉上でパッツンと切り揃えられている。おかしいな、世間では1月で冬真っ盛りだって言うのに。その寒さをも忘れてしまうくらい、凍てつくような冷たい瞳が私を見下ろしていた。



物語は続く…

今後ともよろしくお願いします!!!

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