16.暗礁
宝箱の中身を見てミモザは言った。
「ーーない」
一つ前も、そのもう一つ前の宝箱にも何も入っていなかった。
「ミモザさん、どうしましょう?」
ジーンからの問いかけにミモザは腕を組むと目をつぶった。
ゆっくりと瞼を開く。そして言った。
「いや、本当にどうしましょう?」
「…………」
首を傾げるミモザとジーンは顔を見合わせた。
二人の宝探しはいきなり暗礁に乗り上げていた。
話は数刻前に遡る。
実を言うとミモザには探す当てがあった。
エイドから資料を受け取った時、おそらくこれだけではまだ謎を解くには情報が足りないな、とミモザは悟った。
つまり、まずは手がかりから探す必要があると考えたのだ。
そして専門家や学者が探しても見つからない『願いの叶う石』である。普通に探して行ける場所にその手がかりがないことは確実だ。
つまり、試練を攻略しないと行けない場所に手がかりがある可能性は高いはずだ、と推測した。
そこで当たりをつけたのが、ゲームの『収集要素』である。
ゲームでは第三の塔を攻略することで『合成技術』の祝福が手に入る。そしてその祝福により、梯子や網を作成することが可能となり、行ける場所が増えるのだ。
そしてその場所にはプレイヤーの『収集要素』としての記念品のような物が宝箱に入れて置かれていた。
ミモザの記憶が確かならば、シリーズ一作目では特に意味のない物が入っていたはずだ。しかし二作目では一作目とは違う物が宝箱に入っていたような気がするのだ。
それがなんだったのか、何に使うのかまでは思い出せない。
しかし物語に関わる何かだった……、はずだ。
(わからないけど)
内容までは思い出せないけれど、そのはずなのだ。
しかしここで問題がある。
ミモザには銅の祝福しかないという問題だ。
正直に言うとミモザには祝福を使った梯子の作成などは困難である。せいぜいが縄一本を作るのが精一杯だ。
だが、それを解決できる人間がいる。
ジーンだ。
銀の祝福を持つジーンであれば、梯子を作ることなど造作もないことなのである。
その技術をいかんなく発揮してもらい、二人はものすごい高いところにあるくぼみやら横穴やら、はてはキャットウォークのような張り出した崖やらを探索した。
その結果、三つほどの宝箱を見つけたのだ。
しかし、開けたら空だった。
全部空だった。
「…………」
「……誰かが開けて持ってったんでしょうね」
ジーンが冷静に言う。
ミモザもそれには同意だ。
確かに大変とはいえ、第三の塔は命の危険はない塔だ。そして銀の祝福なら比較的手に入りやすいものである。
誰かが先んじてたどり着いていてもおかしくはない。
(ーーと、いうか)
ステラじゃないだろうな、という疑念がミモザの頭をよぎる。
金の祝福を持つはずのステラだ。彼女ならば回収は容易いだろう。
(え? これ詰んでる?)
収集要素が本当に『願いの叶う石』に関わっているとは限らないが、しかし中身の確認すらできないのは痛手である。
もしこれがないと『願いの叶う石』が見つからず、ストーリーを進められないとしたら……。
ぶるり、とミモザは顔面蒼白で身を震わせた。
「い、いや! まだ決めつけるのは早い! もっと何かないかを探そう! 大丈夫! 見つかる、見つかる!!」
「そ、そうですよね!」
えいえいおー、と二人は再び拳を上げて探索を再開した。たとえその掛け声がから元気であってもそこは気にしてはいけない。
そうして更に数時間後、二人は更に四つの宝箱を見つけた。つまり全部で計七つの宝箱を見つけたのである。
その見つけた七つ目の宝箱にはーー、
「……アルベルトくん?」
『アルベルトくん』、こと、走り回る謎植物の石像が入っていた。




