14.願いの叶う石
「こちらを見てください」
そう言って彼は二枚の紙を取り出した。
「これは写しになっていまして、本物は石板に書かれていたそうです」
一枚は古代語で書かれており、もう一枚はどうやらそれを翻訳した物のようだ。
ミモザはとりあえず翻訳された物の方を手に取った。
そこには『願いの叶う石 隠し場所』というタイトルがあり、その下には箇条書きで文字が並んでいた。
『石はひとつの願いしか叶えられない』
『石はある場所に隠した』
『方角を間違えると石の場所には辿りつけない』
『12の中で必要なのは2つだけ』
『置くのは1日の終わりと始まりの場所』
『始まりは北にある』
『この説明には嘘がある』
(うん……)
これだけだと意味不明である。
しかしそれらの文章よりも更に意味不明な物がそこには描かれていた。
箇条書きの一番下、そこには……、
「なんでこの謎植物が描かれているんですか?」
第三の塔の嫌なマスコット。毒々しい色の茎と葉っぱを持つモンスター。
試練の時に鍵へと姿を変えた、金切り声をあげて縦横無尽に走り回る二足歩行の植物の姿が描かれていた。
「どうやらそれも重要なヒントのようなんです」
そう言うと彼は静かにある文字を指差した。
「……『アルベルトくん』?」
「ええ、アルベルトくんです」
その謎植物の下に書かれている文字だ。
まったく意味がわからない。
そういう顔をミモザがしていたからだろう、レイルは「これはですね」と説明をしてくれる。
「この石板を書いた人物がこの植物につけていた愛称のようです」
「……奇特な人もいたもんですね」
あの試練の挑戦者達にトラウマを植え付けまくっている植物に愛称をつけるなど。
「ちなみに正式名称は歩行型植物A型というらしいのですが……」
「Bもいるんですか!?」
「他の試練の塔にいるらしいですね。確か第七の塔でしたか」
「……ああー」
(いたな……)
ミモザは思い出す。
あの巨大な謎植物のことを。
ジーンと二人でなんとか檻に入れたのは思い出したくない思い出である。
「この石板はこの街の博物館に納められていまして、一般に公開されているのですが、一部文字が読めないところがあるんです」
言われてみればなるほど、二行ほど何が書いてあるのかがわからない部分がある。
そのどちらもが『石は』という書き出しから始まってはいるものの、その続きが削れて読めなくなっていた。
「……ミモザさん」
あらたまった顔をしてレイルはミモザのことを見る。
「ゲームの方は現在行き詰まっていますね?」
それは質問ではなく確信だった。
「ええ、まぁ」
「ではこういうのはどうでしょう? ゲームとは別にある物を持ってきてくれればジーンさんと妹の関係を認めるというのは?」
「……ある物というのは」
「これです」
彼は『願いの叶う石』という文字をなぞってみせた。
「これを持ってきていただけるなら、二人の関係を認めましょう」
そこまで聞いてやっとミモザは思い出した。
ゲームでは確かに、この『願いの叶う石』を探す展開があった。
主人公のステラはそのために再び第三の塔を訪れるのだ。
(『願いの叶う石』を見つければ二人の関係を認めるというのは……)
おそらくそれがあればレイルが二人を阻む理由がなくなるからだ。
『願いの叶う石』でレイラの病気が治ってしまえば、レイラがジーンに会いたがらない理由も、交際を阻む理由もなくなる。
「……わかりました」
ミモザはゆっくりと一つ瞬きをした後に頷いてみせた。
その顔に浮かぶのは不敵な笑みだ。
「『願いの叶う石』。僕が見つけてみせましょう!」
「ちちぃ?」
『そんな安請け合いして大丈夫か?』とチロが囁く。それにミモザはウインクを返すと、
「今の僕にはこういうことに強い支援者がいるからね」
と囁き返した。
「ちーち?」
『支援者?』とチロは首をひねる。
それにミモザはにやりと不気味に笑うだけだった。
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