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17 選ぶ道の先は

いつも読んでくださりありがとうございます。

大変申し訳ないのですが、書き溜めた分が尽きてきたため更新頻度を週に1〜2回に変更したいと思います。

ご迷惑をおかけしますがよろしくお願い致します。

 フィリップが立ち去った後、ミモザ達はとりあえず店内へと戻った。

「……ごめんなさい」

 店は元々仕込みのための休憩時間だったこともあり、閉店の札をかけてある。がらんとした店内でアイクはうつむいてぽつりとこぼした。

「アイク……」

 ダグはその場に膝をつくと弟の肩に手を置いた。

「よく頑張った。後は兄ちゃんが領主様と話をつけてやるからな。お前は何も謝る必要なんてない」

 しかしその兄の言葉を遮るように「そんなことない!」とアイクは叫んだ。

「ぼくっ、ぼくは……っ、大切な物を守りたいのに、結局逃げることしかできなかったっ! お兄ちゃんに頼ることしかできなかった……っ!」

 俯いたまま涙を流し、アイクは強く強くその手を握りしめる。

「悔しい……っ!!」

「アイク……」

 そんな弟の様子にさすがのダグも言葉に迷ったようだった。しかし兄として諭すように話しかける。

「誰かを頼ることは悪いことでも恥ずかしいことでもない。それも重大な決断だし勇気のいる行動だ。悔しい気持ちがあるのはわかる。だがフィリップと真正面から向き合ったとしてそれであいつが反省してくれると思うか? あいつはガキだ。だから理屈が通用しない。ちゃんと環境を整えて保護者にきちんと長い時間をかけて指導してもらう必要があると兄ちゃんは思う。そうしないと解決は難しい」

「…………」

 兄の言葉を聞いてもアイクの表情は晴れなかった。ダグの言い分が正しいことはわかっているのだろう。けれど納得するには感情が追いつかないのだ。

 難しい顔で黙り込む弟に、ダグは「アイク」と再び声をかけようとして、

「なら強くなればいい」

 遮られてそちらを向いた。その落ち着いた静かな声はミモザの背後から届いた。

「おまえ……」

「レオン様……」

 ミモザも振り向くと階段から降りてきたらしいレオンハルトが立っていた。彼はどうやら2階から先ほどのやりとりを見ていたのかすべての事情を知っているようだ。そのままミモザの横を通り過ぎてアイクの前へと立つと、腕を組んで彼のことを見下ろした。

「今回、君が逃げたのは適切な判断だったと俺も思う。しかしそれで納得がいかないと言うのならば君が強くなるほかないだろう」

「そんな簡単に……」

 ダグが非難の声を上げるのをその視線だけでレオンハルトは制した。ダグが黙り込んだのを確認すると再びその視線をアイクへと戻す。

「俺が鍛えてやろう」

 その金色の瞳を細めてにやりと笑う。

「なに、ちょうど時間はありあまるほどにあるんだ。君自身の手で今度は追い払ってやるといい。領主への直談判はアイクの報復が終わってからでもいいだろう」

「それは……、解決とは違うだろ」

「ああ違う」

 ダグの言葉にレオンハルトは迷いなく頷いた。

「君の提案は正しい。本来解決を図るだけならばこの上なく効率的だ。しかしそれだけでは収まらない感情もあるだろう?」

 そう言うとレオンハルトはその金色の瞳をアイクへと向けた。

「君が選べ」

 鋭い視線を向けて、そう告げる。

「君の兄の言うことは正しい。俺の言うことはおそらく不正解だ。これはただ君の感情を満足させるかどうかというわがままの話だ。だからきちんと考えた上で君が選びなさい。望むのならば俺が修行をつけてやる」

 レオンハルトのその提案に、一瞬聞き流しかけたミモザはある事に気づいて顔を青ざめさせると、慌てて彼の背後でぶんぶんと首を横に振って手で大きくバッテンを作り声は出さずに口をぱくぱくと動かして訴えた。

(修行はダメ! 地獄を見るぞ!)

 しかし真剣にレオンハルトのことを見ているアイクにはミモザのその必死の訴えは見えなかったようだ。

「お願いします!」

 彼は決意をその瞳に宿し、決断をくだした。

「いい返事だ」

 レオンハルトは満足そうに頷く。

 ミモザは肩を落とすと、

(どうか彼の未来に幸が多からんことを……)

 手を合わせて祈りを捧げた。

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― 新着の感想 ―
[一言] レオンハルトの修行はモミザが誰よりもわかっているw やっぱ微笑ましいです。 ありがとうございます。
[一言]  (*´・人・)←祈ってる
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