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短編集(詩やSSなど含む)

【企画提出版】あまり目立ちたくない俺だが美少女二人との距離が近い。~とあるヒロインの家庭の事情~

※企画へ提出した物を改稿して掲載します。



 何処の学校にも、学年全体を通してマドンナやヒロインと呼ばれる女の子がいる。


「おはよう!! のどか!!」

「あらおはよう美鈴」


 俺の目の前で元気に挨拶をするのが、学校の男子に影響を与える事もある元気印の塊、伊藤美鈴(いとうみすず)。彼女は高校2年生ではあるけど、地域選抜に選ばれているという程に、女子バスケット界ではそこそこ名前の売れている人物である。


 170センチを超える身長に茶髪のボブカットで、顔も小さく卵型。スポーツをしているから体形もスラッとしていて、一見するモデルかとも思える程整っている容姿で、学校の中で表立ってファンクラブがあるほど男子だけじゃなく女子にも人気がある。


 そしてその伊藤に挨拶を返したのが、これまた伊藤と人気を二分するほどに絶大な支持を受けている人物で、名前は御園のどか(みそののどか)


 御園はどちらかというとおっとり系の美人さんで、黒いストレートの髪が腰ほどまで伸び、完全に手入れされたその髪が風などで揺れるたびに、キラキラとエフェクトがかかっているかのようなキラメキを振りまく。スッとした鼻立ちと、少し大きめな黒い瞳ネコ目の持ち主で、陶器のように色白な肌をしている。


 そんな目立つ容姿をしているだけではなく、学業も優秀。成績上位者の欄から落ちた所を見かけたことがない程、安定した成績を誇り、それだけでも生徒から慕われている要因になっているけど、その佇まいからも生徒だけならず先生からの信頼も厚い。


 噂によると、担任の先生からの推薦という事で、生徒会会長へ立候補したらとの話が有ったそうだけど、「自分はそのような大役をこなせるような人物ではありません」というセリフで、にべもなく断ったそうだ。



 そんな二人を間近で見ながら学校へと向かって歩いている俺は、所謂『普通の男子高校生』と言っていい程、何か取り柄があるわけでもない地味な容姿を持つ小笠原晴(おがさわらはる)。前を歩く二人と同じ高校に通う高2男子だ。


 ただし、所謂という部分には注釈が付く。

 俺には――いや、()()には、誰にも言えない秘密があるのだ。それは今は知られるわけにはいかない。





「はるぅ!!」

「あん?」

 授業間の休み時間に廊下へと出てトイレへむかってると、大きな声で俺の名前を呼びつつ、俺の方へと駆けてくる人物がいた。俺は名前を呼ばれたことに立ち止まり、声のした方へと振りむいた。


ドン!!

「ぶふぉ!!」

「あれ?」

 立ち止まることなく俺に体当たりをかましたその女子は驚きの声を上げるが、体当たりされた俺は思いっきり後ろ向きに廊下をごろごろと転がる。


「いてて……」

「だ、大丈夫?」

「て、てめぇ……伊藤……。何しやがる!!」

「ご、ごめん!!」

 ようやく転がり止まると、体当たり時にぶつけられた腹と頭をさすりながら起き上がり、その痛みの原因を作ったやつの事を睨みつけた。


「何か用か?」

「え? なにも無いよ? ただ晴を見かけたから声を掛けただけぇ」

「声を掛けただけじゃねぇよ!! 思いっきり吹っ飛ばしただろうが!!」

「それは晴が軽いからじゃない? 私は悪くないよ? ね?」

「…………」

 そう言われてしまうと何も言えないのが辛いところ。実の所起き上がった俺とその俺に並ぶようにして立つ伊藤は同じくらいの身長なのだけど――実質2センチほど俺の方がでかいだけ――スポーツをしていて鍛えている伊藤とは異なり、俺は何もしていないというよりも運動があまり得意では無いのでそんなに体格は良くない。


 伊藤の勢いのある体当たりを何も予告なしで受けると、簡単に吹っ飛ぶほどのもの()しか生憎持ち合わせていないのだ。


「……まぁいいや。特に用がないなら、俺トイレ行くからな」

「うん!! まったねぇ!!」

 バイバイと言いながら元気に廊下を駆け戻って行く伊藤。その後ろ姿を見ながらやれやれとため息を吐く。


 視線を周囲に向けると、俺に向かい投げかけられている鋭い視線に気が付いた。


――まったく!! これだから校内では出来るだけ声を掛けたりするなって言ってるのに……。

 周囲の視線の元はわかりきっている。校内でも人気のある伊藤と仲良さげに話す俺の事がどういう関係なのか気になるやつと、そもそも彼女と話す事自体が気に入らない奴の視線だ。


 そんな視線を振り払うように、俺はトイレへ向かい歩き出した。

 


 そう皆には内緒にしているが、先ほどの伊藤――いや、美鈴とは家が2軒ほど隣に住んでいるという、生まれた時からの幼馴染なのだ。


 アイツが今のように目立つ存在に成り始めた時から、俺は出来る限り学校などではそういう事を知られないようにするために振る舞って来た。俺みたいなやつと一緒にいるところを見られない様にするためなのだけど、それが美鈴にはどうにも伝わっていない。





 色々と気を使いながらようやく終業時間がやってきて、俺は出来る限り早めに学校を出て家路へと急ぐ。


 美鈴は部活があるために一緒に帰ることは滅多にないので、そこだけは安心できるところなのだが、もう一つ俺には心配しているというか、特に気を付けなければならない事が有る。


「あら?」

「げっ!!」

 急いで出たはずなのに、昇降口でその気を付けねばならない相手とばったり出くわす。


――コイツ……。俺の事を付けてるわけじゃないよな?

 そう疑ってしまう程に、その人物とはクラスも違うというのに()()帰宅する時間が被ることが多い。


「今帰りかしら?」

「……そうだけど」

「なら一緒に帰りませんか?」

「……そういうのは出来る限りしないって言ってるだろ?」

 その人物を見つめながら俺が返事をするけど、その人物はニコリと笑って俺の視線を何とも平気な顔をして躱す。


「あら残念ですね。振られちゃいましたか」

「だからそういうの止めてくれ……」

 ぐすんと泣く仕草をするその人物――そう、御園のどかは俺の言葉を聞いてすぐに顔を上げ、ペロッと舌を出してからニコリとほほ笑む。


「では()()()帰りますね」

「あぁ……」

 ひらひらと手を振りながら、俺の目の前から歩いて離れていく御園。そしてその後ろ姿を見つめる俺に、またしてもいつの間にか集まっていた周囲の人だかりから視線が注がれる。


――もう勘弁してくれ……。

 大きなため息をつきながら、俺は下駄箱から通学用の靴を取り出しつつ、内履きを急いで脱いで履き替え、乱暴に内履きをしまうと急いで外へと歩き出した。


「ただいまぁ……」

 ちょっと疲れた体を引きずる様にしながらもようやく家にたどり着き、誰もいない家のドアを開けて挨拶しながら中へと入る。


 すると奥の方からぱたぱたとこちらへ向かいかけてくる足音が聞こえて来た。


「おかえりなさい晴!!」

「ぐえぇ!!」

 玄関に腰を下ろして靴を脱いでいると、先ほどの足音の持ち主が、いきなり後ろからがばりと覆いかぶさるように抱き着いて来た。その勢いのまま俺は思いっきり首を絞められて変な声が漏れる。


「は、なせ……、死んじゃう……から」

「あらごめん!!」

 俺の声に気が付いてすぐに俺から離れると、本当に申し訳なさそうに謝罪する。


「はぁ、ウチに来てたのか……」

「うん。今日はおじさんとおばさん遅くなるらしいから、私が夕ご飯作りに来たの」

「……俺、何も聞いてないんだけど……」

「あれ? そうなの?」

 がっくり項垂れる俺に、ちょっとわざとらしく驚く御園。


「まぁまぁいいじゃない!! それよりも今日の夕ご飯は晴の好きな唐揚げだからね!!」

「唐揚げ!? うん。まぁそれは嬉しいんだけどさ、良いのか? のどかの家の方は……」

「もちろん後でちゃんとするわよ? それよりもまずは旦那様のご飯の支度の方が大事なの!!」

「いやまだ旦那じゃねぇし……」

 俺の言葉は既にキッチンへと向かっていたのどかの耳には届かなかった。



 俺と御園のどかは、周囲に知られない様にしているけど婚約者同士。だから中学生になったころからこうして時々のどかが家にやって来るのだけど、既に両家ではそれが当たり前になっていて、誰も何も言わない。


 俺が小さい頃、のどかの父が何やら危ない事件に巻き込まれた事が有って、それを俺の父さんが助けた事が有るらしく、どのような事が有ったのか詳しくは聞いて無いけど、その事を非常に大きな恩として何か返そうと考えたのどかの親父さん。


 特に彼女という存在のいない俺と、他には言いづらい環境に生きるのどか。だからこそのどかの事情を知る、俺の家の事を気にいったという事も有るのだろうけど、その縁でちょうど子供同士が同じ歳だったという俺達の婚約が決まった。


――反対することも特になかったなぁ……。のどかも嫌とは言わなかったし……。

 当時の事を思い出して考える。


 因みに俺の父さんはサラリーマンをしつつ空手道場の師範だったりする。母さんは保険のセールスレディとして今もなお働いている。



 一度着替えた俺がキッチンへと向かうと、楽しそうに料理をしているのどかがいた。

 少しその様子を見ていると、テーブルの上に置いてあったスマホがブルブルと振動しながら呼び出し音を響かせた。


「のどか電話みたいだぞ」

「え? んもう!! しかたないなぁ!!」

 調理の手を止めスマホを手に取ると、ちょっと眉間にしわを寄せる。そしてキッチンを出てその電話の相手をすると、更に険しい顔をして戻ってきた。


「ちょっと用事できちゃった……。すぐに終わらせて帰るね」

「あぁ……」


 本当に手早く料理をすませ、のどかは残念そうな顔をして帰って行った。それを俺は黙って見送る。



 心の中で彼女の無事を祈りながら。



 





 晴と一緒の時間を邪魔され、家に着いたのどかは――。


「いいかお前ら!! うちらの稼業はなめられちゃいけねぇんだ!! おとしまえ付けに行ってこい!!」


「「「「「へい!!」」」」



 そこには邪魔をされ腹を立てる和服姿のきりっとした女の子の姿があり、大勢の男性の前で大きな声で指示を出している。その女の子こそが袖をまくり、体の前で腕組みをするのどか。

 

 構成員が100人を超える実家、やのつく稼業の組長さん。


 それが――とあるヒロインの裏の顔なのだ。


お読み頂いた皆様に感謝を!!


 このお話は企画用に冒頭部分のみを執筆したものなので、この先もあるっちゃあります。

 現在連載にするかどうか迷ってますが、リクエストがあれば執筆にとりかかり、新たに連載版として掲載することになるとは思いますが、その場合少しお時間を頂くかも……。


 企画中、このお話に感想を残してくださった方に改めて感謝を!!

 改めてこのお話をよろしくお願いします。m(__)m


※作品の中を少し加筆してあります。

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