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【コミカライズ化!】小さくて可愛い文芸部の知的な先輩を、膝の上に乗せたら毎日座ってくるようになった  作者: ゆめいげつ
第一章 椅子から恋人

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第77話 先輩の、休日(柚子先輩視点)

 ボクは、昔から雨が好きだ。

 雨が降っていれば、わざわざ外に出なくて良いから。

 屋根を叩く、雨の音も好きだ。

 強い雨も、弱い雨も、どっちだって常に音を出して非日常の世界を創ってくれる。

 そんな異世界で読む本は格別なんだ。

 

 そしてボクはもっと雨が好きになった。

 雨のおかげで、翔くんともっと近づけたから。

 い、色々あったけど近づけた、はず……。

 ちょっと我慢できなくて、ふ、雰囲気というかその、流されちゃったところはあるけれど、それでも確かにあの時は、幸せだった。


 背中に感じた、翔くんの大きさも。

 手を握ってくれた、翔くんの優しさも。

 急に頭を撫でた、翔くんのいじわるさも。

 一緒にベッドに倒れた時の、翔くんの鼓動も。


 ――全部、思い出せる。

 

 彼が寝ていたベッドに包まり、まるで彼に包まれているように感じる日曜日の昼下がり。

 外はまだ雨、でもその幸せな雨がボクたちを近づけてくれた。


 ああ、また早く会いたいな。

 でも、どんな顔したら良いんだろう。

 頭で考えるたびにドキドキして。

 匂いを嗅ぐたびにドキドキして。

 このまま一生ここで、翔くんを感じられたら――。


「お姉ちゃーん、私のジャージ知ら……」

「うわあぁっ!?」


 ――また檸檬が急に入ってきた。

 ボクは慌ててミノムシみたいに掛け布団を被りくるまった。


「……エッチなことしてた?」

「し、してないよ!?」


 この子はいつもいつも、ボクをなんだと思っているんだろう。

 あの時も、もうちょっと入ってくるのが遅かったら、遅かったらぁ……。


「……私のジャージ、知らない?」

「……し、知らない」


 ドキッとした。

 長い前髪に隠れていない右目がジッとボクを見つめてくる。


「……お姉ちゃんが何を言わずに私から借りて翔くんが一時的に着た後に、洗濯カゴに入れていた私のジャージ、知らない?」

「……し、ししし、知らないよ?」


 すごい具体的になった。

 ま、まるでボクを疑ってるみたいに。

 そ、そそそ、そんな子じゃなかったはずなのになぁ。


「……突撃ベッドダーイブッ!!」

「うわあああっっ!?」


 檸檬が飛び込んできた!


「ぐへへへへ! その身包み全部脱いでもらおうかお姉ちゃん!!」

「や、やめっ! やめてぇーっ!!」


 抵抗むなしくボクが包まっていた布団は全部剥ぎ取られてしまう。

 妹の成長をこんなことで感じたくなかったよ、ボクは。


「……うわ、やっぱり」

「驚きのうわと、確信のやっぱりを繋げるのはどうかと……」

「翔くんが着ていた妹のジャージをこっそり盗んで着ているエッチなお姉ちゃんに言われたくないな」

「か、借りただけだもん……」

「……ジャージ着ながら体を隠すように胸を抱いてるお姉ちゃん、涙目ですごくエッチだから写真撮っていい?」

「駄目に決まってるでしょっ!?」


 この子は、この子はぁ……!


「翔くん、喜ぶと思うんだけどなぁ……」

「ほ、ほんとに……?」

「もう抵抗ゼロじゃん。エッチ完堕ちだね!」

「だからボクにもわかる言葉で喋ってよ!?」


 妹なのに、妹なのに、完全に手のひらの上で転がされている。

 くやしい、くやしい、くやしい、くやしい。

 ちょっと前まで、ずっとボクの後ろをくっついてきてたのに。

 くっついて、かぁ……。


「……翔くん、ボクのことどう思ってるんだろ?」

「…………ほえ?」


 なに、その顔。


「だって、聞いても答えてくれないし……」

「……え? き、聞いたの!?」

「う、うん……って言っても、翔くんからだけど……」

「えぇっ!? こ、答えは!?」

「か、翔くんから教えてくれなきゃ、やだって……」

「……私、バカップルのやり取り聞かされてる?」

「違うよ!?」


 真剣に悩んでるのに、もう!


「…………お姉ちゃん、どっちなの?」

「ど、どっちって?」

「告白。したいの? されたいの?」

「さ、されたいって。そんな……」

「なるほど、されたいんだ。誘い受けタイプ、エッチだね」

「なんでそこでまたエッチ!?」


 間にエッチ挟まないと駄目なの?


「まあ放っておいても明日からまた部活エッチすると思うから大丈夫でしょ」

「しないよ!? エッチから離れて! してないから!」

「座らないの?」

「……座るって、エッチかな?」

「お姉ちゃんがエッチ」

「それただの悪口じゃない!?」


 また姉妹喧嘩に発展する。

 そう思ったときだった。


 ――ピロン。

 ベッドの脇に置いていたスマホが鳴って。


「あ、翔くんからだよお姉ちゃん!」


 それを檸檬が見ようとしたから慌てボクが取って。


「休みの日になにかな? 連絡先交換してよかったねお姉ちゃん!」

「う、うるさいなぁ……え?」


 そうして、スマホを見たんだ。


カケル『すみません。風邪、引いちゃいました……柚子先輩は大丈夫ですか?』


 メッセージでも翔くんは優しくて。

 でも、これは……ボクのせいだった。

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