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小さくて可愛い文芸部の知的な先輩を、膝の上に乗せたら毎日座ってくるようになった  作者: ゆめいげつ
第一章 椅子から恋人

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第67話 先輩の、お家

 水の音。

 どしゃぶりの雨の音。

 シャワーから出てくるお湯の音。


 ピカピカの白いタイル。

 明るい照明、高そうなシャンプー等々。


 広い、お風呂。

 柚子先輩の家の、お風呂。


 そこにいる、俺。


「……どうしてこうなった」


 と、言わずにはいられないこの状況。

 付き合ってもいない好きな女の子、それも学校以外で一度も一緒に遊びに行ったことが無い先輩と、初めての外出は先輩のお家。

 リビングでも、自室でもなく、まず入ったのが……お風呂。


 段階、おかしくないですかね?


『翔くん、平気?』

「うわはぁいっ!」


 背中越しにかけられた声に思わず座りながら背中を丸くした。

 もちろん扉越しからの声。

 だけど俺は裸でして、あられもない姿でして、いや風呂なんだから裸で当然かもしれないけどここは柚子先輩のお家でして。

 

『着替え、ここに置いておくよ?』

「あ、ありがとうございます!」


 わかってる。

 扉の向こうにいるだけだからわかってるんだけど、裸で柚子先輩と会話をしていることがなんかこう、すごく……すごい。


『それにしても酷いよね! 翔くんに水を撥ねたままどこか行っちゃったんだから』


 柚子先輩が俺のために怒ってくれている。

 すごく嬉しい。

 だけど今は勘弁してほしい。

 裸なんです、俺。


「はは……まあ俺だけだったんで良かったです」


 どうも俺は車運が無いらしい。

 柚子先輩も巻き込まれてずぶ濡れにならなくて本当に良かった。


『……ボクは、良くないんだけど』


 と、扉越しから少し拗ねた感じの柚子先輩の声がする。

 柚子先輩は、優しい。

 ……けど。


「……柚子先輩」

『だって、それで酷い目に合うのは翔くんで』

「いえ、そうじゃなくて」

『え?』

「その……そこにいられると、出られなくて……」

『……ごっ、ごごごごごごめん! ぼ、ボク外で待ってるから!!』


 ダッダッダ! ガラッ! バタンッ!

 大急ぎで離れていく音と若干の揺れを感じた。


「……柚子先輩?」


 一応、確認のため声をかける。

 返事は無かった。


「……柚子せんぱーい?」


 こっそりとお風呂から脱衣所への扉を開けてみる。

 広くて綺麗な脱衣所、高そうなドラム式洗濯機が動いているだけで柚子先輩の姿は無かった。

 腰にタオルを巻いた俺……そう、このタオルもすごい。

 ふわふっわ、驚くぐらいにふわふっわでいい匂いのするタオル。

 柚子先輩の家はタオルにもこだわっていた。

 それを腰に巻く罪悪感は考えないことにする。


「え?」


 もし万が一の確率で柚子先輩が脱衣所に入ってきても大変なことにならないように、ここからはスピード勝負だった。

 不幸中の幸いにも濡れたのは制服だけだったので、無事だったシャツとパンツを真っ先に着用する。

 汚れた俺の制服を入れて回り続ける洗濯機の横には、ご丁寧に専用のカゴが用意。 

 そこに代えの服がきれいに畳まれていて、それに手が止まった俺でして。


「……うちの、ジャージ?」


 そう、誰がどう見ても新芽高校のジャージだった。

 けど柚子先輩のじゃない。

 だって色が緑、俺と同じ学年色だから。

 柚子先輩の学年色は青、とても似合っている。


 そして当然俺のでもない。

 ……考えられるのは柚子先輩の妹のだろうか?

 いやまさか柚子先輩の妹も新芽高校生で俺と同い年だったなんて、ひょっとしたら何処かで会っているかもしれない。

 俺が普段着ているジャージよりワンサイズ下だから、もしかしたら柚子先輩より大きいのかななんて思いながら俺はありがたくそのジャージを、ジャージを……?

 

 ……え?

 俺、女子のジャージ着るの?

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