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小さくて可愛い文芸部の知的な先輩を、膝の上に乗せたら毎日座ってくるようになった  作者: ゆめいげつ
第一章 椅子から恋人

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第55話 先輩の、お姉ちゃん宣言

 もうそろそろ心臓が持たないかもしれない可愛さを、柚子先輩がこれでもかと俺の膝の上で振り撒いている。

 柚子先輩の可愛さには癒し効果があるけれど、過剰摂取はとても危険なんだ。

 長距離走の後に全力ダッシュしたぐらい心臓が高鳴っている。

 ドキドキ以上のドキドキだ。


「う、うぅぅぅぅ……っ!」


 しかしそれは俺だけじゃないみたいで。

 時間差で柚子先輩が恥ずかしり、手で顔を隠した。

 流石の柚子先輩もさっきの発言はとても恥ずかしかったようだ。

 体を丸めて防御姿勢を取る柚子先輩。

 何度も言うけど、俺の膝の上で。

 防御でさえ可愛さ攻撃となって、俺を襲っていた。


「ゆ、柚子先輩……そ、そろそろ休憩にしませんか!?」


 提案。

 これ以上はお互いの身も心も持たない。


「そ、そうだね……! ちょ、ちょっと休憩しよっか!」


 いそいそ。

 柚子先輩が俺からすぐに立ち上がり隣の椅子に座る。


 ここは新芽高校文芸部。

 休憩が必要な、運動部顔負けの部活だった。


「…………」

「…………」


 そして生まれるのは無言。

 き、気まずい。

 悪いことは多分していないはずなのにとんでもなく気まずい。

 クソッ、こんな時に気を利かせられるのができる後輩だろう!

 なにか、なにか話題を……!


「か、翔くん……?」

「はいっ!?」


 なんと柚子先輩から話しかけてくれた。

 情けないけど助かったし、嬉しい。

 横を見てみれば柚子先輩は下を向き、両手の指を弄っている。

 可愛い。

 正統派な可愛さだ。

 

「さ、さっき、一人っ子って言ってたよね……?」

「え、あ、はい! バリバリの一人っ子です!」


 バリバリの一人っ子ってなんだ?


「う、羨ましいよね……?」

「は、はい……?」


 え、姉妹マウント?

 いやいやまさか柚子先輩に限ってそんなことはしないだろう。

 でも確かにさっき羨ましいですって言ったし、それは本心だけど。


「……よ、よーし!」

「えっと、柚子先輩?」


 立ち上がった柚子先輩を俺は見上げる。

 その顔が赤いのは、夕陽のせいか、さっきの名残か、それとも他の理由か。


「きゅ、休憩終わり!」

「え、もうですか!?」


 陸上部時代にもあまり言わなかった弱音をつい吐いてしまった。

 文芸部は厳しい。

 スパルタ指導な柚子先輩。


「か、翔くんはそのまま座ってて!」

「は、はい……」


 柚子先輩に倣って立ち上がろうとしたけど、座ってて良いらしい。

 まあ文芸部は椅子に座るのが基本だし、そりゃそうか。


「……すー! はー! すー! はー……!」


 深呼吸してる。

 柚子先輩がすごい深呼吸してる

 両手をちゃんと伸ばして模範的な深呼吸してる。

 手を上げた時につられてピンと足がつま先立ちしちゃってる。

 可愛い。


「か、翔くん!」

「は、はいっ!」


 全国の教本に載せられるレベルの深呼吸が終わり、柚子先輩が俺を見た。

 立っている柚子先輩、座る俺。

 休憩が終わったということは、また柚子先輩が俺の膝の上に――。


「あ、あのさっ!」


 ――座らなかった。

 本日二度目。


 座らない代わりに柚子先輩は立ったまま俺の両肩に手を置いて。


「い、今からボクが……か、翔くんのお姉ちゃんだから……!」


 真っ赤な顔で俺を覗き込み、そう宣言した。

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[一言] か・・・はっ・・・(血糖値スパイク)
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