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第3話 先輩の、気持ち(柚子先輩視点)

 ボクの名前は湊 柚子。

 新芽高校二年生で文芸部部長だ。

 突然だけどボクの後輩は、可愛い。

 スポーツ科なのにボクしかいない文芸部に入ってくれた優しい性格の持ち主だ。

 足を怪我しているというのもあるけれど、まだ彼は高校一年生。

 これからの時間は長いというのに。


 だけど彼、翔くんは文芸部を選んでくれた。

 いつもは君、もしくは城戸くんと呼んでいるけれど、心の中だけは翔くんと呼んでいる。


 素直で、真っすぐで、たまにちょっと変なことところもあるけれど、ボクの唯一の可愛い後輩なのだから、それぐらいしたって良いじゃないか。


 ……まあ、前置きはさておき。


「うああああああああああああああああああああああああああああああああっっ!!」


 悶えてた。

 ボクは自分のベッドの上で悶えてた。

 理由はもちろん、今日あった出来事だ。

 

「椅子になるってなんだよおおおおおおもおおおおおおおおおおおうっっ!!」


 それは翔くんからの提案というか、ボクの失言が招いた結果というか、なんというか。

 いや、お互いが椅子を譲り合っただけの話なんだけどさ。


「ボクの気持ちも知らないでさああああああああああああああ本当にさあああああああああああああっっ!」


 初めての可愛い後輩、しかも男の子。

 ボクだって年頃の女の子だ。

 親しい男の子が隣にいて、気にならない訳がない。


 それなのに、それなのに……っ!

 

「椅子ってなんだよぉ……」


 あたたかかった。

 大きくて、そして優しかった。

 胸が高鳴り過ぎて、心臓の音が翔くんに聞こえちゃうんじゃないかって思った。


「けど、良かった……ハッ!?」


 え、あ、う?

 いや、ボク……今、何を?

 確かに悪くなかったというか、椅子としてみても安定してるだけじゃなく翔くんの体温や息遣い、それに匂いも……ってこれじゃあボクが変態みたいじゃないか!?


「うぅ……」


 ベッドの上でローリングぐるぐる。

 背中を部屋の壁にくっつけた。

 壁は硬く、大きい。

 翔くんも同じだった。だけど違う。

 筋肉質な身体も、男の子なんだなと思うたくましさも、ボクを守ってくれそうな安心感も、全部良かった。


 そして、なにより。


「か、可愛かったなぁ、翔くん……」


 翔君の膝の上に座ってた時、一瞬だけチラ見して気づいた彼の顔。

 ボクの椅子になってるというのに幸せそうで、だけど翔くんも耳まで顔が真っ赤になっていて……。


「……また、やってくれないかなぁ」


 でも、恥ずかしくてボクからはとてもじゃないけど言えない。

 けど、もし、仮にだけど……今日みたいに。

 可愛い後輩の、翔君の頼みなら、まあ……仕方ない、かな?

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