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小さくて可愛い文芸部の知的な先輩を、膝の上に乗せたら毎日座ってくるようになった  作者: ゆめいげつ
第一章 椅子から恋人

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第17話 先輩の、観察

 柚子先輩は、可愛い。

 非常に残念だけど今日は委員会活動の日で文芸部に言っても柚子先輩に会えないので、部活以外での柚子先輩の可愛さについて語ろうと思う。


 ◆


「ゆずゆず、おはよー!」

「姫ちん、おはよー!」


 朝。

 学校の下駄箱で柚子先輩は姫ちんと呼んだ仲の良い友達と笑顔で挨拶。

 まるで太陽のような笑顔だ。


「……ん、んー!」

「あたし取ろうか?」

「だ、だいじょうぶ……!」


 運命の悪戯か、柚子先輩の下駄箱の位置はかなり上にあった。

 背の低い柚子先輩は毎日精一杯の背伸びをして上履きを取っている。

 間違っても気を利かせて取ってあげてはいけない。不機嫌になってしまうから。

 俺は一度やらかした。


「取れたー!」

「おー、流石ゆずゆずー!」

「ふっふーん」


 無事に上履きを手に入れ、姫ちん先輩から拍手をもらいご満悦の柚子先輩。

 開幕から可愛いのスタートダッシュを決めていた。


 ◆


 二時間目。

 柚子先輩のクラスは体育で長距離走だった。


「……ひぃ、ひぇ……」

「ゆずゆず頑張ってー! あと三周だよー!」


 腕はだらんと垂れ、ボロボロのフォームで歩くのと大差ない速度で走る体操服姿の柚子先輩。

 体を動かすのが苦手な柚子先輩はとにかく必死だった。


「じゃああたし先にゴールで待ってるからねー!」

「……ま、まってへぇ……うぇ……」


 運動神経抜群の姫ちん先輩に三度目の周回遅れにされてしまう柚子先輩。

 それでも諦めず最後まで走りきろうとする姿勢に俺は感動している。

 それはそうと、白の半袖ポロシャツと青のハーフパンツ体操服姿が可愛い。


 ◆


 昼休み。

 柚子先輩は教室でクラスメイトに囲まれていた。


「ゆずゆずー……さっきの授業のとこ教えてー……」

「しょうがないなぁ姫ちんは。どこがわからなかったの?」

「ぜんぶー……」

「全部!?」

「湊さん私も教えてー!」

「私も私もー!」

「柚子せんせー!」

「わ、わわわわっ!?」


 学年トップの成績を誇る柚子先輩はクラス中の人気者だった。

 複数の女子生徒に囲まれもみくちゃに……いやあれ、撫でられてないか?

 俺だってまだ柚子先輩を撫でたことないのに!

 しかし柚子先生……ありだな。


 ◆


 放課後。

 これで、柚子先輩の可愛さが毎日のように更新されていくことがわかったと思う。

 いやあ、今日も可愛かった。


「翔、お前それストーカーじゃね?」

「いや違うけど」

「違わねぇよ」


 と、いきなり失礼なことを言ったコイツは友人A。

 

「先輩目当てに休み時間ごとに二年の教室に行くのは重症だと思うぞ?」

「二時間目の体育は教室の窓から覗くだけで我慢したからセーフかなって」

「アウトだよ」


 俺が柚子先輩を膝の上に乗せることになるきっかけを作ってくれた男。

 名前を、天城(あまぎ) 綾斗(あやと)。だから友人A。

 スポーツ万能、成績優秀、高身長、茶髪でハーフのイケメン、一年生ながらに野球部のエースで四番の将来を有望視されている超有名人。

 まるで漫画やアニメの世界から出てきたような完璧超人で、中学校からの俺の親友だ。


「しかしまさか、あの翔がこんなに夢中になるなんてなぁ……」

「いやあ、そんな褒めなくて良いって」

「褒めてねぇよ」


 褒め言葉だけど。


「それで……どこまでいったんだ?」

「どこまでって?」

「お前が好きな先輩と進展はあったのか?」


 その何気ない質問に、俺は衝撃を受けた。


「や、野球馬鹿の綾斗が人の恋に興味を……?」

「俺をなんだと思ってたの!? 俺だって親友が好きな人と仲良くなって、あーんなことやこーんなことをしてるかどうかぐらい気になるわ!」


 言葉選びのセンスが凄くダサかった。

 まあ、そこは俺も、健全な男子高校生だし、したくない訳じゃないけど……。


「ねえ今エッチな話してた!?」

「うわっ!」

「だ、誰だっ!?」


 すると突然、金髪の女の子が俺と綾斗の間に入り込んできたんだ。

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