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小さくて可愛い文芸部の知的な先輩を、膝の上に乗せたら毎日座ってくるようになった  作者: ゆめいげつ
第一章 椅子から恋人

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第15話 先輩の、妹(柚子先輩視点)

 ボクは、急いでいた。

 玄関で靴を脱いでスリッパを履く。

 爆発してしまいそうな恥ずかしさを原動力に階段を駆け上がり、二階の廊下を抜けてボクの部屋……ではなく隣の部屋の扉を開けた。


「うわあああああああああんっ! 寝顔見られちゃったよぉっ!!」

「えっ!? なになにお姉ちゃんエッチな話!?」


 上下ピンクで合わせたシャツとショーツでベッドに寝転んでいた金髪の女の子は、ボクが入ってくるやいなや興奮した様子でピンク色の妄想全開になる。


 みなと) 檸檬れもん)。ボクの一つ下で、翔君と同い年な十五歳の妹だ。

 妹なのに、姉であるボクよりも大きい。

 い、色々と……。

 

 妹に、檸檬に相談するのは凄く恥ずかしい。

 前から素質があったけど高校デビューしてから変な知識ばっかり興味を持つから、なるべく相談したくなかったんだけど……と、友達には言えないし……。


「任せてお姉ちゃん! 少女漫画を極めた私がなんでも相談乗ったげる!」

「……乗ってあげる、ね?」


 不安だ。

 ボクも檸檬も趣味は読書。

 ボクは小説で、檸檬は少女漫画だった。それもちょっと過激なやつ。

 もう、既に不安だった。


「で、で、で! 寝顔を誰に見られたの!? 前から言ってた後輩の翔くん!?」

「ええっ!? ど、どうして!?」


 な、何で知ってるの!?

 相談しに来たの初めてなのに!


「だってお姉ちゃん、最近毎晩部屋で大声出してるし!」

「うぁ……うぅ……」


 き、聞こえてた……!?


「お姉ちゃん頭良いのにそういうところ抜けてるんだからー!」

「う、うるさいなぁ!」


 顔から火が出そうだった。

 今すぐボクの部屋に走ってアオウミガメのミー君ぬいぐるみに顔を埋めたい。


「それでそれで! どうして寝顔を見られちゃったの!?」

「え、ど、どうしてって……?」

「もう! 原因がわからないんじゃ相談に乗れないじゃん?」

「…………」


 言ってることは凄く正しい。

 けど、見てほしいんだ。

 檸檬の目がキラキラしてる。宝物を見つけた子供のようにキラキラしてる。

 人の恋バナって、みんな好きだよね……。


「い、言わなきゃ駄目?」

「じゃあ何しに来たの?」


 正論やめてよ。


「……だ、誰にも言わないでよ?」

「もちろん!」

「ま、ママにもね!?」

「わかってるって!」

「絶対だよ!?」

「任せて!」


 うぅ、不安。

 けど、言うしかないよね……。


「そ、その……今日、寝不足でさ」

「うんうん、昨日遅くまでうるさかったもんね」

「えっ……そ、それで寝ぼけててさ!」

「うんうん!」

「いつもみたいに、翔くんの膝に乗ったんだけど……」

「…………え?」

「気持ち良くていつの間にか寝ちゃったみたいで……」

「…………」

「ね、寝顔見られちゃって恥ずかしくて……」


 今思い出しただけでも恥ずかしい……。


「……お姉ちゃん」


 檸檬の視線が痛い……。


「……これ、エッチな話?」

「違うよ!?」

「違わないよ!?」

「どこが!?」

「お姉ちゃん……」


 え、何その哀れなものを見る目は。

 実の妹からそんな目をされるの、ボク?


「いつものように膝に乗ったって、なに?」

「え、それは最近いつもボクが翔くん、の……」


 あ。

 ああ。

 あああああああああああああああああっ!?

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