『空飛ぶお菓子屋さん』
「きょっう♪からはっじまっる~♪」 不思議なヒトと名高いマリーは歌を唄いながら店の前を箒で掃いていた。 「どうしたんだよ。バカ」 そう問うのは幼馴染の
五郎。 「今日から開店なの」 マリーは、五郎の態度を気にも留めずに返した。 「これがぁ?ただのオンボロ小屋にしか 見えないなぁ」 五郎は柱を強く小突いて、強度を確かめる。 まるで壊すような勢いだ。
「ホントにこれが空を飛ぶのか?」五郎はいぶかしむようだが。マリーは自信満々に、元気よく答えた。「もちろん!」その一言で五郎の表情もパッと明るくなった。
「今どきは配達に人の手は、いっらないの~♪」 そうマリーが言うと五郎が喜んで 「ならうちのビールも空を飛ばせるか!?」 そう言ったとたんマリーは悲しそうな顔になった。
「ビールはだめ。こぼれちゃう...」 「飛ばせないのか」 五郎は、不服そうに呟く。 マリーはいつもの調子を整えるのに躊躇した。
「でも液状じゃなければなんでも飛ばせるわ」マリーは強気に言い、わたあめ、チョコレート、ゼリービーンズが並んだテーブルを運んできて、「空飛ぶお菓子屋さん」の準備を進めた。
「ふふ。私はお子様だからこれで満足なのよ」 マリーがそう言う。すると五郎がワインを持って来ると、マリーのお菓子を食べ 「お前はもう18だ。そろそろ大人が必要だ」 そう言って、グラスにワインを注いだ。
執筆: nu ts hideri