『線形的な共産主義』
足には泥がへばりついている。 あの角を曲がれば、ひと段落つく。 行きつけの喫茶店に入るのだ。 そこで、待ち合わせをしている。 喫茶店に着くと、もう奴はいた。 でっぷりと椅子に腰掛けていた。
奴の思い浮かべる理想は一定のペースでこの国を共産主義に塗り替えることだ。急ぐでもなく、しかし遅れなく計画を進めていく。それはまるで「線形的な共産主義」とでもいうべきか。
「Говорит москва...」 私はラジオから流れてくる政府の発表を聞いて憤慨した。 「畜生っ何が線型的だ!そんな計画で事業がうまくいくわけないだろ!」 成功すれば上級国民、しくじればシベリー
いや、シベリー以下だ。 「Говорит москва...」 ラジオの冒頭が、脳内でリフレインする。 頼んでいたコーヒーが一人でにカタカタ揺れたような気がした。 成功すれば良いのだ。それしかない。
とにかくやるだけやるしかない。俺は決意するようにコーヒーを一気呵成に飲み込み。眼前のやつに強い口調で言い放つ。
「行くぞ! 時代は線型的な農地だ。それは広大でなくてはならない。まず村の区画整理からだ! 何事も定規で引いたように行う。効率のためだ! 機械化だ!」
おらああああああ! 整備された世界はあっという間に統制された。 すごいや。
執筆: nu, ts, hideri