隠れんぼ
夢のあとさき。
坊主が上手に屏風に絵を描いた。
漢方薬の商家は、伏魔殿。櫻舞う、瓦の上の死体が、鮮血、美しい。
子供の遊びには魔物が潜む。
子供の落書きの中に、家族がひとり多い。
七代先まで呪ってやる、
祟り家、宿場町の家々の中、一件だけ売地に出されている。
人の業とは…。切なき血潮。
綺麗な傘の下の、醜い濡れ女。
般若のお面を被った、娘が、山の鬼に喰われにゆく。
櫻の頃、川に嬰児が流される。
人より怖い、大黒屋。
軒の下の、凧あげ。
お寺の、神社の、孕まし。
看板より出ずる、太田胃酸の男が、部屋の電気を消してゆく。
祇園精舎の鐘がなり、諸行無常の辻斬りが、密かに暗躍する。
鉄道模型で、遊ぶ子供、贄が欲しいという。
頭から風呂敷を被った男、竹林で燃やされる。
妖しげな露店の商人、毒を売る。
まこと、此の世は、けったいな。
そういったお婆が、いかさま辻占いになる。
泣き腫らした娘が、櫻の下で、自害する。
悲劇に非業。街角で、鬼も泣いている。
悲しみの宿場町。
どこか遠くへ行こう。学徒出陣。
そんな物騒なことを言いながら、風車を揺らす戦後。
疎開先の芋は喰い飽きたと、泣きながら芋粥を喰う父親。
肝油が旨いと言って喰って鼻血を出す、栄養価の高し。
一面の野原に、向日葵畑で隠れんぼ。
お兄ちゃん、置いていかないでと迷い子の、綺麗な風車は風に吹かれし。
誰もゐない、駅の構内で、下着を脱ぐ遊び。
あの子が好きなのよ、と言いながら、真っ赤な口紅を引いて遊ぶ、子供の頃。
恋文は、川へ流します。紅い糸を、戯れに小指に巻いて、風に吹かせる遊び。
夏の入道雲を見つめすぎて、眠れない午前三時半の夢枕。
線香花火を、あの洞窟の奥で。幽霊との恋。
お寺のお坊さんが、雨になると差す傘に、蝸牛。
芋畑に、紛れ込む白蔵主。お伽噺には、悲しい逸話が隠されていて、涙で前が見えません。
昔話を詠んだ後、お寺で、先祖供養の線香を上げにきました。
南無阿弥陀仏。
嗚呼、此れで成仏できる。ようよう苦労しなさった。
お坊様も、微笑み顔。
夢の幕間。夕暮れの銭湯上がり、通りを冷たい秋の風が心地いい。
秋の風には魔物が棲むよ。
摺り硝子にへばりつく家守。火の用心。家内安全。
行き場を失った蝙蝠が、舌先三寸、胸三寸。
縁日で、お面を売っている。
金魚を喰らおうか、熱帯魚を喰らおうか。
人に化けた狐が、路地をうろつく。
妖しい陰。