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スターライト・テイル  作者: 夕月 星夜


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5

「差し迫っての問題は検問なんだよね」


戻ってきた二人を見つつ、ネヴァンはぽろんと楽器を鳴らした。


「こんな怪しい二人連れてる旅団なんて、無事に入れるのかなって」

「あ、それは大丈夫。慣れてる」


そう笑うカイルの隣で、ふっとアンジュが遠い目になった。


「もう、何度か経験済みなの。南門も、東門も」

「ん?」

「コーラルさんもだし、それ以外の時もあったけれど、私たちが怪我人を保護するの珍しくないというかなんというか。ほら、私たちってセインがいるでしょう? 大人が横たわっても背中に乗せて運べちゃうから、冒険者ギルド規則守ろうとするとどうしても人助けになるのよね」

「この間のお兄さんも面白かったよね。街道からちょっと外れちゃってクィン・ビーの管轄に迷い込んで、無茶苦茶謝ってた人」

「全身花だらけにされた人だよね、いたいた。花畑の宣伝させられたんだっけ」


ガタイのいい男性がボロボロになりながら花を抱えている姿は、流石に検問で引っかかってしばらく足止めを食らう羽目になっていた。当然、クィン・ビーからちゃんと見届けるよう託されたカイルたちも足止めをされることになり、ちょっとした街の話題になっていた。

ちなみに花畑の宣伝とは、男性が持ってきた花を荒らさないようにしてほしいという意味であり、冒険者ギルドや生産ギルドなどに通達がきちんとされることになった。

そんな話を聞いて、シャーナは鈴を転がすような声で笑う。


「相変わらず、あなたたちは面白いのね。私たちもあちこち見て回っているけれど、なかなか面白いものには出会えないものよ。ねえ、ネヴァン。しばらくみんなと一緒に行くのも、新しい曲作りにはいいんじゃない?」

「んー、確かに。ちょっと曲作りがうまくいかないときには、同行させてもらおうかな? ルリにもいい刺激になるだろうし」

「その時はあらかじめご連絡ください、冒険者ギルド経由で大丈夫なので」

「この島に限っちゃうけどね」


そんな会話をしていると、外からルリが声をかけてきた。


「もうすぐ、南門見えるけど」

「あ、そのまま東門に回って大丈夫。じゃあ、僕たちちょっと外に出るね」

「はいよー」


御者台を経由し、カイルはそのまま並走していたセインの背に移る。アンジュはそのまま、ルリの隣に腰を下ろした。


「アンジュ、僕はこのまま南門と話しつけてくる」

「わかった、こっちは任せて」

「よろしく。セイン、頼んだ」

「承知した」


タッと軽い足音と共に加速したセイン。見る見るうちに遠ざかる姿を眺めつつ、アンジュは胸の前で両手を合わせる。


「アンジュさん? なにしてんの?」

「家に、客人くるよって伝えておかないと。びっくりさせたら、悪いもの」

「え? アンジュさんたちって、カイルさんとセインさんの三人暮らしだよね?」


ルリの疑問に小さく笑うだけで答えたアンジュは、併せていた手をゆっくりと離していく。

それに合わせるようにふわりと小さな白い光が間に産まれ、やがて手のひらに載るほどの小さな鳥の姿に変わった。

どこもかしこも真っ白で、ひらひらと長い金と菫色のリボンをそれぞれの足につけている。


「東門からおゆき、伝言よろしくね」


アンジュがそう言えば、小鳥は軽やかに空へ飛び立ちまっすぐ東門へと向かっていく。


「なんですか、あれ」

「伝言魔法。兵士さんにああやって私の魔法だよってわかりやすくしてるの。あらかじめ申請登録すると、門を通してもらえるってこと……検問待ちとかで遅くなる時とかに使うの」

「ああ、冒険者ギルドに」

「ううん、家……正確には、家を守ってくれてる『優しいお友達』に、ね」


その言葉にはて、と首を傾げるルリ。それ以上を口にせず笑うだけのアンジュ。


「なーんか、誤魔化してるような気が……」

「うん」

「え、そこ肯定しちゃうんですか」

「というか、今の言い方で伝わらなかったことにこっちが驚いてる」

「ええー……今の言い方って……『優しいお友達』ってこと? そんな言葉でピンとくるものないですよ」

「どうした?」


ルリが唇を尖らせていると、ネヴァンがひょっこり顔を出し、そのままアンジュとは反対の御者台に腰を下ろした。


「なんか揉めてる?」

「揉めているというか、問題を出されているというか。でも、『優しいお友達』なんて言われても誰のことかわからないです」

「ん? あ、ああ。なるほどね。アンジュさんはそう言うんだ。ルリ、僕たちも知ってるよ」

「え、嘘。私、記憶力には自信があるんですが」

「まあ、気づかなくても仕方ない、のかな。それに、あんまり有名な言い方でもないしね……『良き隣人』と言えば伝わるかな?」


良き隣人、と口の中で復唱したルリは、ややあって頷く。


「わかりました。妖精のことですね」

「うん。でも、妖精って言い方嫌うから『良き隣人』とかって呼ぶね。アンジュさんたちは『優しいお友達』って呼ぶんだ?」

「うん。本当にそうだから……あ、カイル」

「お待たせ、東門から入って大丈夫だよ。怪我人いるけどこっち混んでるからって言ったら許可貰えた」


そう言って戻ってきたカイルはにこやかに笑った。




.


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