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スターライト・テイル  作者: 夕月 星夜


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魔法石の明かりで照らされた夜と日の光が差し込む日中で部屋の印象は変わる。特に広々とした食堂は窓も大きく多い分、すべてのカーテンを開ければ十分すぎるほど明るい。

白いクロスは一層白く、朝を彩る果物の色も相まって華やかな食卓だ。

リーンは三食食べる事が多い国だが、庶民と王侯貴族で食事の優先度が異なる。王侯貴族の場合は朝と夜に重点が置かれるが、その理由は移動や仕事などで昼が決まった時間にとれることが少ない為と言われている。代わりに休憩の際、お茶菓子や軽食で夕食まで持たせるのだ。

一方庶民は昼夜に重点を置いた食生活になる。朝まだ薄暗いうちに起き出して作業する時はパパッと何かを口に放り込むだけに留め、昼と夜にしっかり食べて一日を終えれば夜中に空腹で起きる心配がないからだ。

ちなみに冒険者は体が資本である為、食べれる時に食べられるだけ食べる。人によってどこを重点的にするかは異なるが、移動の関係で昼を軽食で済ます人が多いかもしれない。

その他に種族によってもまた様々な様式があるが、カイル達の家での生活様式は庶民寄りだ。

すなわち朝は軽く、各々が食べれそうな物を好きなだけ取り分けて食べる。

自家製の軽い口当たりの丸パン、野菜スープで煮込まれたポリッジ。皮をパリッと焼き上げた太いソーセージに癖の少ないチーズ、庭の菜園で採れた新鮮な野菜には塩胡椒とオランの搾り汁を香りの薄い植物油で合わせたものがかけられてサラダ仕立てになっている。それに葡萄や皮を剥かれたオランなどが好きな時に食べられるようになっていた。


「シルフィンさん、多分普段はヤギのミルクだと思うんだけど、この辺だと手に入らないから牛のミルクになるんだ。昨日の薬草茶だと気にならなかったみたいだけど、そのままで飲みにくかったら無理しないでね」

『わざわざありがとうございます』


カイルに説明されたシルフィーリアは早速ミルクへ手を伸ばす。安定性を追求したマグカップに並々湛えられた白い液は、確かに普段飲んでいるものよりも色が淡くさらりとしている。

まず驚いたのはその冷たさだ。冬から持ってきたのかと思うほど冷たく、ミルクは搾りたての少し温かいものだと思っていたシルフィーリアには新鮮だった。

冷えたカップを口にすれば、見た目通り飲みやすい。ただ普段のミルクとは確かに味も香りも違っており、少しばかり物足りなさも感じる。

とはいえ充分美味しく飲めると伝わるようにっこりすれば、心配そうだったカイルもホッとしたように笑みを返した。


「……おい、なんで俺だけこんなのが用意されているんだ」


困惑と共にそうぼやくクイグの前には朝食に似つかわしくないものが鎮座していた。

すなわち、肉。それも塊をじっくり焼き上げただろう塊の肉だ。


「……お肉を食べて、早く回復しなさいという事でしょうか?」

「限度というものがあるだろう」

「そこはほら、好意ですよ」


にこにこと微笑むコーラルに、どうしたものかと真剣に悩むクイグ。

先程無理をしたクイグだが、幸い傷口が開く事はなかった。ただ治りかけの皮膚をねじったせいでひどく傷んだらしい。とはいえ無理をした事をコーラルにはたしなめられ、次に無理をしたらのたうつほど沁みる薬を使うと言われたので今後は自重しようと決めたのだが。


「用意するの、早すぎないか」


明らかに時間がかかりそうな調理をされた肉を前に途方に暮れていると、パンを持ったアンジュがとことことやって来た。


「クイグさん、お困り?」

「あ、ああ」

「そうだよね、でも優しいお友達がさっきの騒ぎで慌てちゃって。早く治さなきゃ!って」

「そうか。だが、流石に朝からこれはしんどいんだが」

「うん、だからこうしよ?」


そう言うとアンジュはパンに切り込みを入れ、そこにサラダを挟み込む。それからクイグの前の肉を薄く削ぎ、添えられたソースをつけてから同じようにパンへ詰め込めば、即席のサンドだ。


「はい」

「なるほど」


渡されたサンドを齧れば、薄切りの肉のはずなのに思いがけず肉汁が溢れてきた。確かに切り分けた時の弾力で、随分と柔らかそうな肉だとは思ったが、こんなにも肉汁たっぷりとは思わなかった。

さっくりと歯切れよく軽いパンにシャキシャキと歯切れのよいサラダの触感、清涼感のある辛みが混じったソースにオランの香りが合わさり、なんとも言えず美味い。


「流石にこの量一人は無理だから、みんなも食べよ! お肉切っとくね」


すいすいと半分ほどを薄切りにし、アンジュもクイグに作ったのと同じ組み合わせでサンドを作る。カイルはそれに加えてチーズも薄く切って挟み込み、朝からガッツリ食べるようだ。

朝から動いていた二人はだいぶお腹が空いていたらしい。見ていて気持ちがいいほどだ。

それに触発されてかみんなこぞって朝食を食べ、肉こそ残ったもののほぼ空になった食卓は用意をしたベン・ティーを密かに喜ばせたのだった。




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