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スターライト・テイル  作者: 夕月 星夜


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2

 カイルたちが住むこの国はリーンという島国だ。

 国名の由来は女神リーンの使いである白き冠梟が翼を広げた姿に似た国土にちなんでリーンと言われているという説、かつてこの島で起こった戦争を女神リーンが止めたのが起源など諸説あるが、一貫して女神リーンに因んだものとされている。

 その中央に位置するのが王都ウィール、その名の通り中心に王城がそびえ立つ円形の大きな街であり、その東門に近い場所にカイルたちの屋敷はあった。

 顔馴染みとなった門番にあっさりと見送られたカイルたちは、セインの背に乗り道なき道を突き進んでいた。

 目的地は南にある学問の都グラークス。街道を使う乗合馬車に乗れば約半日の距離にある。この街道はグラークスだけでなく各地の主要都市すべてに整備され、そのすべてがウィールへと繋がっている。

 これはリーンが建国した際に真っ先に取り掛かられた公共事業として歴史の教科書にも載る有名な話だが、それはリーンが島すべてを治める国家として国民の誰もが自由に行き来出来る、そんな平和な国になったのだと実感できるようにと配慮されたためだそうだ。

 今ウィールの中心にそびえる城はすべての街道が完成してから着手されたものであり、長い戦争で疲弊した国民を何よりも優先した初代女王が新しい城で暮らし始めたのは、二人目の王子が産まれた後だったとか。

 それゆえ完成当時は盛大な祝いが各地で催され、人々は平和を実感したのだと伝えられていた。

 ちなみにグラークスへの道は街道の中でも最もなだらかで美しいとされており、街道を少し外れても迷子になる心配が少ない平原には、今を盛りと言わんがばかりに四季折々の花が咲く。

 その中を突き進むセインはかなりの速度を出しているが、不思議と花が散らされることはない。よく見るとその足は地面ではなく宙を蹴っていた。


「上手くいってるみたいだね」

「ふむ。走る側としては少々軽い感じがするが、まあ問題はないだろう」

「精進しておくよ」


 くすりと笑ったカイルの手には抜き身の剣。刀身には全体的にぽうっと淡い光が宿っている。そして同じ光がセインの足元に薄い板のように現れ、足が離れると同時に音もなく消えていた。


「これなら、花を傷つけることなく走れるでしょ? 前に約束したからね」

「クィン・ビーだったか。時間があればまた挨拶に行くか?」

「うん、そうしよう」


さらりとセインが口にしたのは、危険度指数の高い魔物の一角だ。元々はハニィ・ビーという魔物であり、小さな群れをつくって自分のテリトリーを荒らすものを排除し蜜を集めるのだが、稀に個体進化と呼ばれる上位種クィン・ビーと呼ばれる女王が産まれることがある。

女王の性格は基本的に温厚だが非常に知性が高く、また人語を解すことも出来るため、怒らせた場合群れの統率力を上げ下手な冒険者では太刀打ちできないほどの軍隊を構成して襲ってくることで有名だ。

その一方で友好的な相手には蜜を分け与え共存することを良しとするため、基本的に存在が確認されているクィン・ビーへの攻撃は国によって禁止されている。

この花畑のクィン・ビーもそうであり、それゆえ怒らせることがないよう慎重に行動する必要がある……少なくとも今セインが行うように花畑を突っ切るのは、花を荒らすので怒られる部類に入る。

もっとも、カイルによってつくられた足場を走る分には問題がない。現に何体かすれ違ったハニー・ビーも最初に驚きこそするが、花が荒らされていないとわかった瞬間通常の蜜集めに戻っていた。

ちなみに街道周辺は生物の生活圏として話が付けられているため、立ち入っても怒られることはない。クィン・ビーに会いたい場合は伝令役が先導するので、その場合も可となっている。

カイルたちはかつてクィン・ビーと共存する村からの依頼を受けたことがあり、その縁でクィン・ビーとも面識があるのだ。その結果、クィン・ビーの信頼する冒険者たちの中にカイルたちも含まれており、時々顔を見せに行く程度には仲良くなっていた。


「セイン」

「どうした、アンジュ」

「ここから、街道に戻って」


ふいに口を開いたアンジュ。それまで目を閉じ、周囲の魔力を探っていた彼女の言葉に、セインとカイルは異を唱えることなく進行方向を変えた。


「こっちであっているか」

「うん……呼んでる」


そう告げるアンジュの瞳は、いつにもまして紫の色が濃い。魔力の制御装置である杖なく魔力を使う時、アンジュのまなざしはいつもこうして色を変えるのだ。

視界のその向こうまで見通しているかのような視線は、揺らぐことなくある一点を見つめている。


「カイル、セイン。コーラルさんと一緒に久しぶりな人たちがいるよ」

「ん? じゃあ、移動してるってこと?」

「そう。もうじき、聞こえてくるよ」


そう言うと同時に目をぎゅっと閉じるアンジュ。こめかみをぐりぐりと自分の両手で揉みだすところから、思ったより目にも負担がかかっていたらしい。


「うーん、やっぱりこの魔力の見方変えた方がいいかも……くたびれちゃう」


へにゃりとしているアンジュがそうぼやいた時、どこからか陽気な歌声が聞こえてきた。




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