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スターライト・テイル  作者: 夕月 星夜


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シルフィーリアから返されたペンダントをそっと撫で、アンジュは困ったように笑う。


「私も見せてもらったんだけど、これといって私の身の証を立てられる物はなかったの。でもね、刺繍があっちこっちに伝わる有名な文様を、あんまり上手じゃない人がひと針ひと針丁寧に縫ってくれたんだなって事とか、私を入れた籠もよくある蔦で編まれた物だけど、外側を頑丈に作った中にわざわざやわらかな新梢で作った籠を合わせてあったとか、こんな高価そうなペンダントを一緒に入れておくとか……その、邪魔だから捨てたって感じじゃないんだ」

『何か事情があって、手放さざるを得なかったのかもしれない、と?』


シルフィーリアが問いかけると、多分ねとアンジュは頷いた。


「私を見つけたのはお師匠様なんだけど、門の前の見つけやすく、かつ雨風の影響を受けにくい場所にいたって。その位置だったらお師匠様の結界に情報が伝わってもおかしくなかったのに、お師匠様いつからいたのかわからなかったって言うんだ。それだけの魔法の使い手がわざわざ置いていったんじゃないかって……それだけの事が、私にあるんじゃないかなって」

『アンジュさん……』

「お師匠様もカイルのお母さんも大好きなんだ。だから、わざわざ自分が何なのかなんて知りに行かなくてもよかった。でも、そうは出来なかったの」


そう言って、アンジュは自分の手のひらをじっと見つめた。


「シルフィンさんはあんまり感じないかもしれないけど、私には純粋な人間とは思えないくらいの魔力があるの。でも、他の種族の特性は少なくとも外見的、行動や衝動的な面でも判断できない。そして、魔力はどんどん強くなっていて……今のまま増えていくなら、自分の魔力が制御出来なくなる可能性がある。だから、私は自分がなんなのかを知らなくちゃいけない。そのために、冒険者をしてるの」

『冒険者の資格は、各国共通で使えるから、でしょうか』


シルフィーリアが口にしたように、冒険者の資格は組合が存在する場所であれば有効だ。そして組合は国や大陸をまたぎ、特殊な国を除いて設置されている。

かつて魔族と呼ばれる者たちが与えた甚大な影響を各国が協力して対処した際に同盟を結んだのが元であり、団結を確認する方法として生まれた組織が始まりとされている。

現在では各地の魔物退治や危険地帯の探索等が主な仕事だが、冒険者を名乗るには組合の試験を合格し資格を得る必要があり、かつ組合に定期的な実績報告を行わなければ資格をはく奪される事もあった。

その分冒険者の資格を有する人は年齢職業関係なく評価をされ、組合から依頼を受けることも可能となる。そして何よりも各国共通の身分証明となる為、多くの人が周知する資格のひとつだった。

ちなみに組合はこれ以外にも商業や貿易、農業など地域や流通に関わるものなどもあり、各地に展開するものもあれば地域に密着したものもある。そして複数を所持する事が可能となっており、冒険者の資格を持っていればすべての他の組合資格を冒険者の資格に反映も出来るので、冒険者の資格を取ろうとする人は多かった。

また、冒険者の資格は他の資格と異なり年齢による受験制限を決めていない。いち早く広範囲を行動するための資格としてアンジュとカイルが冒険者を選ぶのも道理であった。


「カイルはね、優しいから私に付き合ってくれてるの。カイルはちゃんとお母さんがいて、お父さんが誰かを知らなくても問題ないのに、私が一人で冒険者になるのは駄目だよって。だったら僕もなるよって言って、一緒にいてくれてるの。凄く凄く嬉しいけど、そんな優しいカイルを傷つけるかもしれない今がとても怖くて、早くなんとか手がかりだけでも欲しくて。だから、さっきシルフィンさんにいいなぁって言っちゃったんだ……ごめんなさい」


しょんぼりするアンジュを、シルフィーリアはそっと抱き締める。


『いいえ、ちっとも気にしていません。それより、たくさんお話ししてくださってありがとう……あの時、急に王族の末裔だなんて言われて混乱しておりましたが、アンジュさんが皆様を止めてくださったおかげて一息つけました。攫われた後に言われた事がどういう事だったのか、私が王族の末裔であるならばと考えれば少しわかってまいりましたし』

「何か言われたの?」

『ええ。あの方、クイグ様以外の方々も私を姫と呼んでいました。お嬢様と呼ばれていた女性もです。そして彼女は私の血を探していたと。悲願を叶える最後の一手が私の血だと。てっきり、光の民である事が理由だと思っていましたが、王族の末裔だからだったのでしょう』

「悲願? それ、どんな内容かわかる?」

『詳しくは……ただ、取り戻さなければいけない、とだけ』

「うーん、流石にそれだけじゃわかんないなぁ。コーラルさんがいいよって言ってくれたら、クイグさんにも聞いてみようかな」


そう言ってシルフィーリアの腕の中、顔を上げたアンジュはそれまでのしょんぼりと悔いる顔ではなく、次を見据える強いまなざしになっていた。




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