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スターライト・テイル  作者: 夕月 星夜


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「改めて名乗らせてもらうね。僕はカイル・セフォード、冒険者ギルド所属のパーティー『銀の明星』の剣士でリーダーなんだ」

「私はアンジュ・ルシリア。魔法使いよ」

「そして私がセインだ。精霊獣と呼ばれている」


カイルの言葉にアンジュとセインがそれぞれ声を上げる。


「この三人が基本のメンバーだけど、回復担当がいないんだ。そこでコーラルさんと専属に近い契約で協力をしてもらってる」

「今紹介していただいた、薬師のコーラルです。薬の材料回収などのお手伝いをしていただく代わりとして、一緒に冒険に行くことがあります」

「コーラルさんは腕のいい薬師なんだ。そのことは、手当てを受けた二人もわかると思う」


カイルの言葉に青年とシルフィーリアが頷いた。


「で、そちらのお姉さんがシルフィーリアさんってお名前は聞いた。何かに追われてて、コーラルさんだけでは守れないから僕たちを頼ってきて、追手によってシルフィーリアさんの声が奪われた。それしかわからないから、話せる範囲での情報が欲しい。それと、これからどうするのかもね」

「さっき約束した通り、シルフィンさんの声を取り戻すの協力するから、そのためにも教えてほしいな」


カイルとアンジュが見つめるのは青年だ。シルフィーリアに関しては助けると決めた以上そう動くだけだが、青年に関しては明確な意思表示をされていない。

食事をとり話せるようになった今、情報を求めるのは当然のことだった。


「……なあ、あんたの名前、シルフィーリアっていうのか?」

『ええ。どうぞシルフィンと呼んでください』


やわらかく微笑むシルフィーリアに青年はほんの少し困ったような顔になり、緑の目を微かに細める。


「薬師はいい。こいつらはこう言っているが、ガキには違いない。あんたはそれでも、こいつらを信用してるか? 声を取り戻せると思っているか? あの女から、逃げられると?」


きつい声音だ。カイルたちを信用しないと言い切った口調は、正直なところカイルたちには慣れたもの。

なにしろ実際子供であることは確かであり、懸念する人は少なくない。ただ、冒険者とは実力主義な部分が主であり、ギルド依頼を窓口が是としていれば依頼を受けることに問題はない。

そしてこれまでカイルたちは依頼を失敗したことがない。自分たちが出来る依頼をきちんと見分け仕事をこなす、基本中の基本をしっかり守れる冒険者というのは、実は数が少なく貴重なのだ。

それゆえギルド職員や実力のある冒険者に侮られることはなく、アンジュは恥ずかしがるが二つ名をつけられるほどの冒険者として認められている。

そして、青年のように疑心を口にした人にはいつもこう告げていた。


「僕たちは、出来ない仕事を引き受けるほど無謀でも無茶でもない。目的を果たす前に死んだら元も子もないからね」

「目的?」

「うん、だから遊びでやってるわけじゃないよ」


きっぱりと言い切ったカイルと隣で頷くアンジュ。そんな二人にシルフィーリアが微笑んだ。


『私は、この方々を信じます』

「あんたはもうちょっと人を疑え。俺を含めてな」

『私を庇って大怪我をしながら海に飛び込んで共に逃げてくださったあなたを疑えと?』


皮肉めいた言葉に返されたのはやはり穏やかな微笑みで、青年がぐっと言葉に詰まった。


「その怪我、シルフィーリアさんを守ったからなの?」

『はい。声だけでなく逃げられないよう手足の骨を折ろうとしたらしいのですが、そこに飛び込んで来てくださいまして。けれど、そのせいでこんなに大怪我を……』


包帯に包まれた青年の手にそっと触れ、シルフィーリアは痛ましげなまなざしになる。


『たくさん血が出ていて痛かったでしょうに、私を抱えて海に飛び込んでくださいました。そして力強く泳いで、砂浜までたどり着いたところでコーラル様に見つけていただいたのです』

「え、まって、船に乗ったとかじゃなくてそのまま飛び込んだの!? よく無事だったねぇ」


カイルが感心した声を上げたのには理由がある。このリーンという島には港以外に安全な上陸が出来る場所がほぼないのだ。

北の山脈は険しく海岸沿いには崖が続く自然の要塞であり、その他の場所も遠浅や潮のぶつかりあう岩礁や、激しい海流のポイントだったりと慣れた地元の漁師が小舟を使う以外では近づけない島なのである。

そこに生身で無事にたどり着けるのは、それこそ幸運というべきだろう。


「でも、それでわかった。コーラルさんが私たちを頼ってでも二人を守ろうとしてたのは、そういう事だったんだ」

「ええ。私たちでは守りきることも、呪いを解くことも出来なかった。だからカイル君たちの力を借りたいというのは、本当のことです。でもそれ以上に、この出会いを失いたくなかった」


そう言ってコーラルはそっと胸元を押さえる。服の下、首から下げた小さな袋の中には名前の由来となった青いサンゴの欠片が入っていた。

彼もまた、幸運によって海に運ばれてきた過去がある。


「私と同じように、海が生かしてくれた命を守りたいのです」





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