罪過の果てに夢を見る
「声劇台本」兼「会話小説」です。
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私個人の規約は以上です。では、ごゆっくりお楽しみください。
上演目安時間
~20分
設定
ミシロ:女性
恋人であったアイカを事故で亡くした。
現在引きこもり中、衰弱死寸前。
アイカ:女性
幽霊
ミシロの恋人
雨の日にわき見運転の車にはねられて死亡。
ミシロが心配でこの世に留まっている。
配役表
ミシロ:
アイカ:
ミシロM「なにもやる気なんて起きない。お腹空いたけど食事する気力もないし、部屋の中ぐちゃぐちゃだけど掃除する気もない。そもそも、起き上がる体力も残ってない」
ミシロ「アイカ…………」
アイカ「なあに?」
ミシロM「絞りだした声とも呼べないそれに、彼女は返事を聞いた。もういないはずのアイカの、私の恋人の返事を聞いた」
アイカ「死にそうだね」
ミシロ「……うん」
アイカ「ごはん、食べてないでしょ?」
ミシロ「……うん」
アイカ「だめだよー、ちゃんと食べないと」
ミシロ「………いらない」
アイカ「私と一緒になりたいの?」
ミシロ「……うん」
アイカ「だめだよ、そんなこと言っちゃ」
ミシロ「アイカとお揃いがいい」
アイカ「それ、私が生きてた時も言ってたよね」
ミシロ「面倒くさい女でごめんね」
アイカ「それはいいからごはんちゃんと食べてね」
ミシロ「……うん」
アイカ「じゃあ、またね」
ミシロ「……うん」
アイカM「私は先週、交通事故に遭った。雨で視界が悪い中、わき見運転の車にはねられた。相手は無免許の未成年。人一人を死なせて、大した罪にも問えないこの国の法律は本当に終わっていると思う。」
ミシロ「……いただきます」
アイカ「カップ麺かー。うーん、食べないよりマシかな」
ミシロ「……やっぱり食べたくない」
アイカ「なんでー、食べてよー」
ミシロ「やだ」
アイカ「子供じゃないんだから、ね?」
ミシロ「やだ」
アイカ「食べないなら私、帰るよ」
ミシロ「……食べる」
アイカ「いい子だね。うん、いい子」
アイカM「死んだはずの私がここにいる理由。そんなの一つしかない。ミシロが心配だからに決まってる。部屋を覗き込んだ時、ずっと泣いているから心配になって残ってしまった」
ミシロ「……アイカ」
アイカ「ん?どしたの?」
ミシロ「……好き」
アイカ「うん、ありがと」
ミシロ「ねぇ、アイカ」
アイカ「私もミシロのこと好きだよ」
ミシロ「……うん。えへへ」
アイカM「ミシロはずっと私のことが見えるわけではないらしい。それに、この子に霊感があるなんて聞いたことないし、なんで私が接触できるのかもよくわからない。お互いの思い入れが強いせいなのか、それともまた別の話なのか、その辺はよくわからなかった」
ミシロ「アイカ、どこ……?」
アイカ「ここにいるよ」
ミシロ「アイカ?ねぇ、アイカ!どこ!返事してよ!!」
アイカ「ミシロ?私はここだよ?落ち着いて、よく見て!」
ミシロ「……アイカ?」
アイカ「うん、アイカだよ」
ミシロ「よかった…」
アイカ「どうしたの、ミシロ?」
ミシロ「アイカが見えなくなって……いなくなったと思って…」
アイカ「大丈夫だよ。私はここにいる、大丈夫だよ」
ミシロ「もうやだよ……」
アイカ「ごめんね、ミシロ」
ミシロ「……うん」
アイカ「そういえば、まだご飯あるの?」
ミシロ「ない、かな…」
アイカ「買いにいこっか」
ミシロ「やだ」
アイカ「なんで?」
ミシロ「話せなくなるから」
アイカ「わがまま言わないの」
ミシロ「私は外で話しててもいいもん」
アイカ「それはダメ。我慢して」
ミシロ「……はい」
アイカ「ん。いい子」
ミシロ「ねぇ、アイカ」
アイカ「今度はどうしたの?」
ミシロ「頭撫でてほしい」
アイカ「でも私触れないよ?」
ミシロ「それでもいいの」
アイカ「ミシロは甘えん坊さんだなぁ」
ミシロ「………………うん」
アイカ「じゃあ、ご飯買い行こっか」
ミシロ「もうちょっとだけ、だめ?」
アイカ「だめ。ほら、準備して」
ミシロ「……はぁい」
アイカ「人気のないところなら話してもいいよ」
ミシロ「すぐ準備する!」
アイカ「ミシロはほんとに素直だね」
ミシロ「できた!」
アイカ「お財布持った?」
ミシロ「三千円入ってる」
アイカ「ガスの元栓はしめた?」
ミシロ「しめた」
アイカ「蛇口は?」
ミシロ「だいじょうぶ」
アイカ「それじゃあしゅっぱーつ!」
ミシロ「………しゅっぱーつ」
アイカ「今日は何買うの?」
ミシロ「カップ麺」
アイカ「またカップ麺?」
ミシロ「好きなんだもん」
アイカ「そうだっけ?」
ミシロ「……そうだよ。好きだよ」
アイカ「じゃあ、私とカップ麺なら、どっちのほうが好き?」
ミシロ「両方」
アイカ「即答なんだね」
ミシロ「どっちも好きだもん」
アイカ「じゃあいっぱい買おうね」
ミシロ「うん!」
アイカ「ミシロはやっぱりかわいいなぁ」
ミシロ「あ、ここ…」
アイカ「どしたの?」
ミシロ「ここ久しぶりに来たや」
アイカ「公園?この公園がどうかしたの?」
ミシロ「何言ってんの?このベンチで私が寝てたじゃん」
アイカ「そうだっけ?」
ミシロ「そうだよ!その時にアイカがナンパしてきたじゃん」
アイカ「私が?」
ミシロ「こう、起きてる?子猫ちゃん。ってかっこつけて……」
アイカ「何それイタイやつじゃん」
ミシロ「アイカ?」
アイカ「なに?」
ミシロ「えっと、あのさ…」
アイカ「うん」
ミシロ「今日、何日かわかる?」
アイカ「うーんと、六月の十四日だっけ?」
アイカ「事故の日は覚えてる?」
アイカ「うーん、最後に雨が降ったのが一週間くらい前だからそれくらい?」
ミシロ「………そっか」
アイカ「どしたの?」
ミシロ「ねぇ、アイカ。花火見に行かない?」
アイカ「六月なのにもう花火大会あるの?」
ミシロ「うん。明日やるらしいよ」
アイカ「ミシロは良く知ってるねー」
ミシロ「さっきそこの掲示板にポスターあったからね」
アイカ「いいねー、絶対行こうよ!」
ミシロ「楽しみだね」
アイカ「そだねー。ミシロから誘ってくることってあんまりなかったもんね」
ミシロ「嬉しい?」
アイカ「嬉しいよ。すっごい嬉しい」
ミシロ「………あ、コンビニついちゃった」
アイカ「じゃあ、また帰りにお話ししようね」
ミシロ「すぐ買ってくる」
アイカ「行っちゃった。ここのコンビニ生きてた頃から入れなかったんだよね。変なの」
ミシロ「おまたせ、待った?」
アイカ「早かったね。ちゃんと買った?」
ミシロ「買ったよ」
アイカ「何買ったの?」
ミシロ「えっとね、ラーメンとか、うどんとか買ったよ」
アイカ「カップ麺買ったんだね」
ミシロ「え?」
アイカ「カップ麺もいいけど、ちゃんとしたご飯食べないとだめだよ?」
ミシロ「えっと、うん…」
アイカ「じゃあ、帰ろっか」
ミシロ「アイカ、家そっちじゃないよ」
アイカ「あれ?ごめんごめん。それで、なにしてたんだっけ?」
ミシロ「アイカ?」
アイカ「なに?」
ミシロ「帰らないの?」
アイカ「帰る?どこに?」
ミシロ「どこって、私たちの家だよ」
アイカ「私たちの?誰と誰のこと?」
ミシロ「アイカと私の家だよ」
アイカ「……だれ?」
ミシロ「もしかして、からかってる?」
アイカ「なんで知らない人をからかわなきゃいけないの?」
ミシロ「アイカ?何言ってるの?」
アイカ「あ、ミシロ~」
ミシロ「そっちは誰もいない……誰を見てるの?」
アイカ「ミシロ~、どこ行ってたの?」
ミシロ「アイカ、私はここだよ。ここにいるよ!」
アイカ「じゃあ帰ろっかー。もう夕暮れだよ」
ミシロ「アイカ!アイカ待って、待ってよ!」
アイカ「……触れないミシロは私のミシロじゃないよ」
ミシロ「私は……」
アイカ「さようなら」
ミシロ「……それでも、例えあなたに触れなくても、忘れられても、私はミシロだよ……」
アイカ「……花火、見たかった」
ミシロ「……明日は、八月三日だよ」
アイカ「そっか。もうそんなに経ってたんだね」
ミシロ「あの時は、ごめんね」
アイカ「なんのことかわからないけど、でもきっと許してるよ」
ミシロ「…また、会える?」
アイカ「もう会えないよ」
ミシロ「探しちゃダメ?」
アイカ「だめ」
ミシロ「私が諦めると思う?」
アイカ「思わないかな」
ミシロ「正解」
アイカ「早く忘れて、私より素敵な人を見つけてね」
ミシロ「やだ」
アイカ「ミシロ。お願い」
ミシロ「やだ!」
アイカ「………ごめんね、ミシロ」
ミシロ「またね、アイカ」
アイカ「…またねじゃないよ」
ミシロ「またねだよ。生きてるから、会いに来てよ」
アイカ「ダメだよ。私のミシロはここに居るから」
――――――――
ミシロ「そう私に告げて彼女は溶け消えた。私は今、独りで花火大会を眺めている。この大橋の欄干からは花火がよく見えるんだ」
アイカM「仮に私がいなくても、彼女は生きていける」
ミシロ「なんてこと思ってるんだろうけど、私一人じゃ生きていけないよ」
アイカM「花火、一緒に見たかったなぁ…」
ミシロM「一際大きく、儚い最後の花火は寂しく空に泳いでいった。さようなら、ごめんなさい、やっぱり私はーーー」
――――――――
アイカ「起きてる?子猫ちゃん」
ミシロ「イタイやつ来ちゃった」
アイカ「えー、でもこういうの好きでしょ?」
ミシロ「まぁね」
アイカ「それはそうと、ミシロはこんなところで何やってるの?」
ミシロ「んー、考え事かな」
アイカ「じめじめして暑いのによく公園なんかでできるね」
ミシロ「ほら、ここちょうど木陰だから涼しいんだー」
アイカ「そうかな?そうでもない気がするけど」
ミシロ「わからないなんて、アイカはおこちゃまだなー」
アイカ「おこちゃま…なのかな?」
ミシロ「ねぇ、アイカ」
アイカ「なに?」
ミシロ「好きだよ」
アイカ「私も好きだよ」
――――――――
ミシロM「きっとこれは幸せな夢。だけどそれでいい。私がいて、アイカがいるなら、ここは幸せな時間なんだから」
ここまで読んでいただきありがとうございました。
はっきりといいますと、いろいろ分岐を考えてはいたのですが、どれも蛇足気味だったので削ったらこのありさまとなりました。あれ?おかしいな……。
それはさておき、ほかの作品も公開しておりますので、もし気に入ったら読んでいただけると幸いです。
また、ご意見・ご感想等お待ちしております。