表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

事の始まり ~2~

 お互いに見据えてから、数秒しか経っていない。

だがその数秒は、少女にとって数倍にも感じられる長さに思えた。

「・・・貴方は何者ですか?なぜ私を襲うのですが?」

「・・・グゥゥゥゥゥ・・・」

声にもならない呻きで返答してくる。


彼女が見据えるその先には、同じく彼女を見据える「怪物」の姿があった。

身長は彼女より少しだけ低いだろうか、2本足で立ちこちらをまっすぐ見据えるその

しわくちゃの老人をさらにクシュッと丸めたような顔をした怪物の姿は松明の薄明かりに照らされ

(・・・怖っ!!)

と正面に向き合った少女に印象づけるほど、「敵意」をむき出しにしていた。

(さっきは焦っていて見えなかったけれど、少なくとも動物ではなさそう、だけど・・・)

最早一触即発である、ろくな武器すら持っていない彼女にとっては、小さな針を飛ばす

先程の攻撃でさえ脅威である。


「グゥゥゥウウウウウ」


怪物の唸り声が増してくる、まるで猫のように威嚇しているかのようだ。

だが全力で逃げていた先ほどとは違い、少しの間ではあるが今は考えをまとめる余裕がある。

彼女は次の手を探り出さなければならなかった。

(一か八かの賭けだけど、どう殺されるぐらいなら・・・)

壁を挟むように睨み合う両者は対峙する、その時間は5秒ほどだった。


すぅ・・・っ!!

「誰かぁぁぁぁぁぁああああ!!!助けてぇぇぇぇぇぇええええ!!!」


その通路中に響き渡るかのような大声で、今まで出したことがないほどの大声で彼女は叫んだ!


ッタッタッタッタッ!!

叫びながら再び彼女は全力で走り出す。

「グヴァァアッ!!」

怪物はいきなりの大声に怯むことなく彼女に向かって突っ込んでくる。

それを合図にしたかのように再び命をかけた追いかけっこが始まったのであった。

だが、彼女に残された体力はもう殆ど無い。先程、死んだふりをしていた時も、息を殺すために

全力疾走した苦痛を必死に耐えた。対峙していた時間も短く、息を整える暇もなかった。

それでも彼女は再び走り出した。ここで殺されるぐらいならと、僅かな望みを探るため逃げ出したのだ。


ヒュンッ! ヒュンッ! ヒュンッ!


小さな針が何本も体の脇をすり抜けてゆく、何本かは彼女の体に刺さり、傷を作っているであろう。

痛みに顔をしかめるが、彼女は走るのをやめる訳にはいかない、再び全力で叫ぶのであった。


「誰かぁぁぁああああ!!!」


そして、少女の必死の、心の底からの叫びが通じたのだろうか・・・

(人影っ・・・!!?やった!!人がいる!!)

通路の先に複数の人影が見えてきた。


「た、助けてくださいっ!!化け物に襲われ・・・て・・・て?」

が、ここで安心するのはまだ早いのであった。

彼女の瞳の先には、彼女を追いかけてくる怪物よりも、大きい、「複数の」怪物の姿があるのだった。


(・・・終わり・・・ね。殺される・・・)


再び燃え始めた希望の炎は、一瞬のうちにかき消されることとなったのである。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ