事の始まり ~1~
人々が寝静まった丑三つ時、少女は永遠とも言える夢の世界へ足を踏み入れる・・・
ー 星星が煌々と輝く真夜中、少女は幻想へと溶け込んでゆく ー
レンガ造りの壁に囲まれた通路を、一人の少女が一生懸命走っている。
通路には数メートルおきに松明が置かれており、それは薄暗く、非常に心ともないものだ。
壁と同様にレンガでできた床もデコボコとした箇所が多く、油断をすればすぐにも転んでしまいそうである。
「はぁ…はぁ…っいったい私が何を…っ、何をしたというのよっ!」
少女は息も切れ切れになっており、だいぶ長いこと全力疾走をしているようだ。
だが、何かから逃げているにしても、何かから逃げているにしても、どちらにせよその顔からは、
とてもじゃないがすぐにでも床に突っ伏してしまいそうなほどに消耗している様子が伺えた。
「っ…!!!」
少女は考える、残り少ない体力を消耗しながら自分の置かれている状況を整理しようと…
(まず、私は何から逃げようとしているんだっけ…)
それは、本当に一瞬の気の緩みだった。
ビュワァンッ!!
「痛っ!!」
少女には考える暇はなかった。考えるスキを作ってしまったが最後、彼女が逃げていた「それ」は的確に
ダメージを与えてくる。
現に彼女の肩には、何かによって放たれた長さ5センチほどの小さな針が刺さっていた。
が、それを抜いている暇もそれを抜くために足を止めている暇もない。走るのをやめたら…
(ここで…殺されるのかな…?)
彼女の脳裏に最悪の結末がよぎった…その時だった。
ガッ!!
「きゃあっ!!」
ズザザザァ・・・
刹那の絶望が無限に膨れ上がっていく、そう。
彼女は、つまづいてしまった…
(ああ…どうして…このタイミングで…)
体制を立て直すより早く「それ」は彼女の命を刈り取ってしまう。
ならば、どうすればいいか…彼女の取った選択は実に安直なものであった。
「・・・・・・」
動かない、彼女は動かない、床に突っ伏したまま微動だにしない。
つまり、そう、死んだふりである。
一か八かの賭けではある、もしも死体に鞭打つように「それ」が追い打ちをしてきたら無防備な現状では
なすがまま、されるがままである。彼女も半ばヤケクソではあった。
(もうこの際どうにでもなれって感じだね…)
「・・・・・・」
10秒、20秒・・・
「・・・・・・」
30秒、40秒・・・
さわっ・・・
(!!…)
「それ」は突然、彼女の髪を撫でるように触ったかと思うと、彼女の背中をすす・・・と撫でるように
触れてきた。
(…何かを調べられてる?)
さす・・・さすり・・・背中のラインを確かめるかのようなその行為は、はっきり言って彼女にとって
不快でしかなかった。彼女は一思いに殺されるものだとばかり思っていたからである。
(…っ!えっ?何をされているの…?)
「それ」は彼女の背中を撫でただけで満足したのか、今度は彼女の足の方に移動したかと思うと
信じられないことにゆっくりとではあるが、彼女の両足を押し広げるかのように体を動かし始めた。
(…何をされるの?待って!?)
彼女も薄々とではあるが、感付き始めていた。
(これは・・・まさか・・・)
このままではまずい。死んだふりを続けているわけにもいかない。彼女は焦る。
幸い事に「それ」は彼女が気絶でもしているのだろう、と勘違いをしている様子であった。
窮地を脱するならばチャンスは、一度きりだ。彼女は全身全霊を込めて、かかとを振り上げた。
「せぃやぁっ!!」
ゴガンッ!!
鈍い音をして「それ」に痛烈な一撃を御見舞すると彼女は急いで立ち上がりそれを見据える。
そして打撃を受けた「それ」は非常に驚いた様子で彼女を見据えると
バシュッ!!バシュッ!!バシュッ!!
「うぁっ!!」
先ほどと同じように、今度は複数の針を針を飛ばして攻撃してきた。
3本放たれたうちの2本の針をとっさに手のひらで防いだ彼女は、
手のひらに刺さった針の激痛に顔を歪めながらもまっすぐに敵を見据える。
「・・・貴方は何者ですか?なぜ私を襲うのですが?」
「・・・」
少女の見据える先にいた「それ」は、紛れもなく異型の「怪物」と呼ぶにふさわしい造形をしていた…
はじめまして、ヘッポコ小説作者のMr.Ryuと申します。
今回、唐突ではありますがシークレットマギカを非常にお恥ずかしながら掲載させて頂く事となりましたです、ハイ。お目汚し大変失礼っ!!
作者が非常に遅筆ですので完結するわけないけど、とりあえず最後まで楽しんでもらいたいとは考えています。
矛盾?不満?んなの気にしてたら連載終了まで300年かかるわ!!なので気を長ーくして更新をお待ちいただければ・・・と思います。では・・・