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逃避行

作者: ルエル

おおよその時系列にはなっているはず。

基本的に吐露してるだけなので、読ませる文にはなってないです。

読みにくいと思います。

それでも、読んで貰えるならば、よろしくお願いします。

先を走る貴方の自転車からバレないように、少しだけスピードを落として、後ろを走る。

角を曲がる前に貴女と貴方が、ちらりと後ろを確認したのは、私が黙りをしていたからかしら。

それとも、距離が空いていたから?

はたまた、何となく雰囲気が違うのを察してくれていたからかしら。


きっかけは、貴方が私を先に送って行こうとしたから。

きっと何処かで貴女よりも長く居たいと思ってしまっていたような気もしてる。

だけど、それを抜きにしたって、翌日が休みの私より、翌日がお仕事の貴女の方が歩きだったし眠そうで、それに時間の余裕も無い筈なのに。

結果的に、その時間の余裕を奪ってしまった理由ではあるけれど。


自転車を漕ぎながら、途中からずっと機会を伺ってた。だから、スピードを落として、少し距離を開けていた。

貴女が、後ろを見ていたとしたら、速攻バレて追われるだろうな。って。

そしたら、そこまでで、でもそれはそれで成功だったのかな。とも思う。

後ろを見ていなかったら、少しだけ逃避行して、見つかったら終わり。

どれだけ逃げられるか。それは未知数だったけど、やっぱりそれもそれで成功。

結局、言えなかったけど、たぶんもう少しで良いから構って欲しかったの。

だから、どっちの結果になっていてもこちらに気が向いた時点で成功だったの。

だから、貴方が角を曲がった時、反対に曲がって、そのまますぐにスピードを上げた。

直ぐに気付かれて追っかけられても少しは遠くへ逃げられる様に。


何処か近くに居ようと思っていたのだけど、追い掛けられているなんて事は無くて、だからそのまま少し遠くへ足を伸ばした。

初めに止まったのはマンションの横にあった小さなスペース。

裏道ではあったから、車通りは無かったけれど、灯りはあったし、仕事帰りの人達の往来はあったから。

走ってる間に、スマホは1度も反応しなくて、ちょっと寂しい気持ちになった。気付いていないのか、それとも、そのままにされているのかなって。

そんな考えをしていたら、止まってから少しして、スマホが呼び出しを告げた。卑屈になったまま、電話もLINEも敢えて無視をした。

そしたら、どちらも反応を示さなくなった。

位置と距離的に、探されていたら見つかるであろう距離だったけど、何処からも幾何の声は聞こえない。

もう1度、貴方から連絡が来たら終わりにしようかなって思っていたけど、スマホは1度も貴方の画を示さない。

あぁ、そんなものか。そしたら、一層遠くへ行ってみようかと、止まったその場を後にした。


まず家は候補にすら挙げなかった。帰ったら安心させるだけだから。そしたら、逃げた意味がない。

よくカラオケに行く隣町や、都営線沿いの大きな公園は、一瞬候補に考えて、方向的に鉢合わせしそうだったから止めた。

元バイト先や母校の方向は、お母さんがバイト中の筈だったし、結構人気が無いから止めた。

そしたら、残るはさっき降りた駅の方向。

ショッピングモールの裏辺りの公園にでも行こうかと、自転車を走らせていたら、もう1つ駅の近くに小さな公園を見つけた。

“こんな所”に公園が有ったのか。そう思って、そこに居ることに決めた。


公園に入って、自転車を止める。やっぱり何も無いことに、いっそ悲しくなってくる。

スマホが示すは貴女のみ。貴方からは初めの1度きり。だから、私は逃げたくなったのに。

目の前の道路を車が通り、バスが入っては、次々出ていく。高架には2両編成の電車がやって来ては、元来た道を戻っていく。

そんな景色を眺めながら、私はツイートを更新していく。貴方に電車の中で役得?と聞いた、あのままで帰りたかったなぁ。

徐々に電車の来る間隔が長くなって、車通りも減って来て、出ていくバスには回送と表示されるようになった。

それでも更新されるLINEは貴女のみ。

逃げているのに見つけて欲しいと相反する事を思って、更新されるそれを眺めていたけれど。

押しかけない。と書かれたそれを見て、希望は叶わぬものと悟ったから場所を特定される事を拒んだ。

やっぱり貴方からは連絡がこないのね。


個別のLINEはしたくなかったから、Twitterに投げてたの。八つ当たりのように、ぽんぽんと。

そしたら、まあ、そうだよね。高校のお友達に心配されてしまったよ。

わざわざLINEをくれた子もいたんだ。今までだったら、やらないような事をしていたから、ちょっとだけ感じていた心細さが紛れた。

貴女には明日がお仕事なのに、悪いことをしてしまったなって。初めに思ってた事とやってる事とが矛盾してしまっていて。勘違いをさせてしまっていたから、少しだけLINEをした。


ずっとお外にいたら、やっぱり蚊に刺されまくって、そんな事をTwitterにぽんぽんと投げていたら、貴方のツイートを見つけた。文面から、少しは怒っているよなぁ。だけど、どちらかと云うとやっぱり不機嫌が近いのかなぁ。なんて思いながら、でもほんの少しだけ気が紛れたからLINEを送った。

貴女に送ったものよりも長めに、もう少しだけ場所が特定されそうにして。簡易な暗号文だったから、その分、難易度も上がっていたけれど。


自転車の音が聞こえる度に、少しだけ期待してスマホから顔を上げてたの。だけど、そこに期待した姿は、当たり前だけど、無くて。

更に時間が過ぎて遂にバスは来なくなったわ。

相変わらず、LINEは来なかったけど、解こうとしてくれてるのは分かって。もう1度だけ、浅はかな期待を掛けてみようと、幾つかヒントを流したの。見える景色を最大化して写真を撮って、それをぽいと投げてみたの。ある程度解けていれば、見つけられる、あるいは近くを通らないかなと。結果としては駄目だったけど。


お友達とLINEをして、心細さを紛らわしていたら、やっと貴方からLINEが来たの。ただ、少しだけ希望と違っていただけで。欲しかったのは謝罪じゃないの。あの子と同じ様に、どこにいるのか?と、いい加減にしろと怒って欲しかったの。

だから、それは望んでいないと伝えた。でも次に返ってきた文面から、本気で向き合ってもらえてるって思ったから、不安定な考えを零してぶつけた。

溢れるもので、途中で画面が上手く見えなくなって、押されたのは通話のボタン。思わず、キャンセルしてしまったけれど、直ぐに折り返しが掛かってきたから、やっぱり通話をする事にした。


もしもし。と言った声は思っていたよりずっと小さかった。

自分はバカだから、望んだ答えには辿り着けない。と貴方は言った。

何をどう吐露したのか正直覚えてはいない。ただ、落ち着きたくて落ち着けなくて、心配を掛けさせたくて、見つけて欲しくて、でもあの子の言った“押しかけない”という言葉に見つけては貰えないのだと思ってしまって、居場所を教える気が無くなってしまって。そんな事を言った。言ってる内に涙はまた溢れてきた。あぁ、貴方の前で、こんな姿を晒すのはきっと2度目ね。

普段、ダイレクトに吐露する事は無いに等しいから、ちゃんとした文にするのは難しくて、思った事をちぎっては投げた。

貴方は彼女の事をフォローしたけど、それでもちゃんと聞いてくれた。きつい言い方をして悪かったと。解こうとはしていたし、心配もしていた、私の行きそうな所を幾つも見て回っていたのだと。そう告げられた。

ふと、見た腕時計。既に2時間が経とうとしていた。思っていたより、ずっと遅くなっていた時間。その間、探して貰えていたのだと、その事実が胸に響いた。“もう少しだけで良いから、構って欲しかった”その希望(ねがい)は言葉にする無く霧散させた。

何処に居るのかと幾何する声に、辛うじて出した声で場所を告げた。まだそこに居るのかと、今から向かうから帰ろうと。再度問われたそれに対し、返すのは肯定。

一瞬、場所を移動してしまおうかと、考えがよぎったけど、それだけ。恐らくこれ以上は望んではいけないし、移動した所で、きっと貴方は怒ってくれはしないから。

それに電話から聞こえた声音は、いつもの何処か飄々とした声でも不機嫌さが滲んだ声でも無かったから。


電話を切り、貴方がやって来るのを待つ。

知らぬ内に緊張していたのかもしれない。何となく、落ち着いた様な、ほっとした様な気がして、しゃがみ込んで息を吐く。自転車の音で分かるだろうと、そのまま膝を抱えて目を閉じた。


少しして、カラカラと聞こえた自転車の音に、そっと聞き耳を立ててみる。音が離れなかったから、貴方だと確信を持って顔を上げた。さあ、もう終わり。帰らなきゃ。

貴方は、私の横に自転車を着けると、改めて私に頭を下げた。自分でやった事なのに、貴方にそこまでさせた事に罪悪感が募る。しっかり向き合って貰ったのだから、向き合わなきゃなのに、そう思っても目を合わせられなかった。私だって悪いのだから、そんなに謝らないで欲しい。口を吐いたのはそんな言の葉。

悪いと思っているのなら、じゃあ帰ろうか。貴方はそう言った。うん。そうするよ。

迷惑を掛けてのごめんなさいと、探してくれてのありがとう。2つの言葉が発される。

うーん、貴女の癖も移ったかな。なんて事無い事なんて無いのに、妙に明るく振舞ってしまっていたように思う。2人で自転車を走らせながら、どのタイミングで逃げ出して、何処に居たのかを告げた。

そういえば、貴方から解き方を問われたね。そこで打ち間違えてたのが分かったっけ。うん。そりゃあ、解けないね。ごめんなさい。でも一文字だけだもの。何となく、おおよその場所は分かりそうなのに。


帰りながら、貴方は言った。もう二度とこんな事をするな。と。時間と人数、場所、性別。何より私は身長が無いのだから。5つも揃っているのだから、止めてくれ。と。

ちょっと思っていたよりも心配をしてくれていたのだろうか。そんな事を思いつつ、もうしないと口にした。

道のりも半ばを過ぎて、家の前にまで行ってしまうと、またお母さんに見つかるのは面倒だから。と、手前の公園まで送ってもらう。ここまで来たのだもの。流石にここから何処かに行ったりはしないよ。と。そう言うと、貴方は分かったと了承してくれた。公園の端でブレーキを掛けて、お別れをする。

最後に、ついでとお願いした我儘に、貴方は無言で応じてくれた。こんな形でないと、素直になれないのです。ごめんなさい。色々荒んでいたものを癒せたかな。久々にそういう行為以外で触れてくれた手に充足を覚えた。

お礼の言葉と、改めてのごめんなさい。色々と掛けた迷惑に、そう区切りを付けて、別れを告げる。おやすみなさい。そう言って、後数メートルの帰路についた。

自転車を停めて振り返った先に既に姿は無いけれど、それはいつも通りの風景。でもいつもは無い熱の感覚に破顔してしまうのは許してください。うん。また私は頑張れるよ。


家に入って鍵を閉める。あぁ、そうだ。彼女にも連絡をしなければ。LINEを開いて、キーボードを操作する。もう寝ているであろう貴女だから、既読は付かないけれど。送るのは、やっぱり謝罪の言葉と、帰ってきたという報告。

送信ボタンを2回押したら、さあ、おしまい。お風呂に入る気力は無くて、お部屋でそのまま横になる。

私の初めての逃走劇。赴くままに、行動をした、きっと最初で最後の日。目を閉じたら、1日は終わり。また明日。



自分で行動した癖に、ダメージ大きくて、数日経った今だって、書き記しながら、時折涙が出そうになる。

もう少しだけ、素直になれたらいいのかな。ベクトルは今のままが幸せ。だけど、少しだけ甘える事位は許してもらえると良いな。


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