幻の薔薇 女優Aサイド
この作品は、全て妄想であり、創作です。
私とタカはいわゆる幼馴染に近い。
私達は5歳の頃にはすでに2人とも、二世タレント、名子役と言う名目で何かとやらされて来たし、二世は何やっても下手だよね?そもそも親の七光りだしね?と言うような酷評も、同じように受けて来た。
ま、そんなこんなを乗り越えて、タカは今や女子憧れナンバーワンの若手タレントに成長し、私もありがたい事に容姿は勿論、歌も演技も踊りもそこそここなせて、映画監督あたりからは外さない女優という事で、重宝がられるまでになった。
実家も同じ都内だし、芸能人の親同士の付き合いも昔からあり、高校の芸能部も両家の親達が相談して放り込まれて一緒だったので、自然にいつも一緒にいた。
タカも私も何をやってもそこそこ出来たので、周りも忙しい私達を何かと大目に見てくれていた。
私の実家の柴犬が子犬を4匹産み、タカが欲しいとら言うから1匹あげ、その後互いの2匹の成長ぶりをメールで送ったりしたが、私がうっかりテレビのゲストで呼ばれた時にその話をしてしまい、それから私達は、世の中から恋人扱いされるようになってしまった。
私はその頃、いわゆる不倫をしていた。20も年上の大物スポンサーにしょっちゅう抱かれていた。そいつが好きだった訳ではなく、大きな役を推薦してもらいたかったのと、自分の女優母親に対しての当て付けだった。
私の母親は男グセが悪くてしたたかで、役を貰うためにはどんな男とも寝た。監督、プロデューサー、ベテラン俳優、大物アナウンサー、脚本家まで母に誘惑されなかった男は居ないんじゃないか?しかも自分にとって利用価値のある男とだけ寝た。
そこが、タカの母親と違うところだった。タカの母親もこれまた淫乱を絵に描いたようなような好き者で、こちらは選ぶ基準は顔だった。俳優だろうが、モデルだろうが、美容師だろうが、タカの家庭教師だろうが歯医者だろうが、美形だったら何でもありだった。
私達の母親は友達と言えど陰でお互いの恋人を選ぶ基準の事を罵っていたが、私とタカに言わせると、2人の母親たちは同じ人種だった。
そんな話は誰にも相談出来ず、私とタカは互いの母親に新しい相手が出来ると良く慰めあったりしたし、タカは私が変な男に引っかかると、隠れ蓑役をやってくれたものだ。
私が別れたくともなかなか手放したがらない男に、今度タカと正式に付き合う事にしたと言うと、大抵の男は逃げ出した。
今注目のタカの女に手を出したなんて噂が流れたり、タカの事務所の耳に入って怖いお兄さんにでも脅かされるのも面倒くさかったろう。
タカの今の恋人は、多分あのシュンって奴だ。タカは口を割らないが、長い付き合いの私には分かる。
シュンは女顔の美形だ。身体の線の美しさと言い、タカのもろに好みの筈だ。
それにシュンは自分で気付いてないようだが、シュンが私を見る目!世間でタカの恋人扱いされてるからっていい気になるなと語っている。
それはまあいいとして、あの不細工のマリがタカの周りにいるのにはイラついた。
タカがどんなつもりで、そばに置いとくのかも知りたかった。
マリに刺激された訳では無いだろうが、タカが母親のせいで女を愛せない事は、タカ本人から昔に聞いて知ってはいたが、それでも一度寝てみようとした事がある。
ある日、何時もより短めのスカートにパンプスを履いた足を組み、タカにしな垂れかかり、今日は帰りたく無いと、男を誘う時のお約束言葉を耳元で言って見た。
じゃ、帰ろうかと言って、タカがタクシーで私を連れて来たのは私達の母校だった。校庭に忍びこむ。
『ここで良く、俺たちの母親の話したの覚えてるだろ?お前は母親達みたいになるなよ。今噂が立つのも困るだろ?』
私はカッとなって言い返した。
『分かってるわよ。じゃ、あの、マリってコならいい訳?みんな貴方がどんなつもりで、あの子置いてるのか噂してるの知ってるでしょ?』
タカは笑った。
『ヤキモチ焼くなんて馬鹿だなぁ。マリは僕の身の回りをお世話してくれるスタッフじゃないか。』
と言って、優しくオデコにキスした。
家族にするようなキス。
私はタカに優しく抱きしめられながら、妙に気持ちが落ち着くのを感じた。
コバンザメのようなマリも、あの気取った容姿のシュンも、私とタカの今までの歴史には入って来れないのだ。
タカと私は親友同士の何者でも無い。
悔しいがこれからも恋愛感情は生まれない。
例えお互い隠れ蓑に使う事はあっても。
女優Aとタカの立場はやっぱり今のところ親友みたいですね!
次回、幻の薔薇 タカの元カレサイドです。




