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脱出

 しかしどうやってここからでようか。

 僕は飛び出したものの、どうやって外に出れば良いのか知らなかった。いや、知ってはいるが


「車なんか運転できないしな……」

 車を使う通り道しか知らない。もしかしたらそこしか無いのかもしれない。どうしよう。


 そんなこんなで僕があっちこっちうろうろしていると、

「あれ黒馬君!?体もう大丈夫なの?」

あ、鉄折さんだ。僕はすぐに笑顔をむけて答える。


「こんにちは鉄折さん、もう大丈夫だよ」

「そっか、ならお見舞いはいらなかったわね、ところで、どこ行くの?」

「ちょっと外にね……ところでどこか外に出れる場所ってある?」


鉄折さんは数秒黙ったのち、

「ふーん。それならエレベーターがあるわ。ついてきて」

良かった。やっぱりあるんだ。そりゃあるよね。


しばらく歩くと確かにエレベーターホールにでることができた。

「ありがとう、じゃあ僕はここで」

「待ちなさいよ。なに一人で行こうとしてるの?」

え?

「いやいやちょっと外の空気を吸いに行くだけだから。一人でも……」

言葉を続けようとしたが鉄折さんの声に遮られた。


「嘘つかないで!……アルに会いに行くんでしょ」

ばれてたか。さてどうしようか。


「そんな怖い顔しないでよ。ちょうど黒馬君と会う前に正式な命令がおりたわ。内容は、『アルタ=アリアッティアの抹殺』よ」

 そこでなぜか心臓にチクリと痛みが来る。抹殺か、まぁお金も貰ったのに裏切るんだもんね、当然か。


「そっか、それなら僕もついてくよ。少しはやくにたつかもだし」

僕は笑顔で言った。それを聞いた鉄折さんはこっちを振り向き鉄折さんも笑顔で言った。

「そう?じゃあ、さっそくお願いしようかしら」

「なにかな?」

いったいどんなお願いだろうか。パシリ……とかかな、それだと楽なんだけど……


「寝てもらえる?」


 後から殺気がした。僕はとっさに横へ跳び後ろから来た何かをよける。

 そこには黒装束の人がひとり立っていた。


「殺気をだしちゃう暗殺者は三流もいいとこだよ?」


僕が話しかけると


「悪いね小僧。俺マスター大好き暗殺者(アサシン)でね。となり歩くとか許せないんだよ。だからついな?」

「ちょっとゲイル?今のタイミングで気絶させられないってどういうこと!」


鉄折さんは目元だけが見えている黒装束の男を小突く。目はいっさい笑っていない。


「いや、あんなわずかな殺気を感知してかわすって人間技じゃないからな!?」

そこでひとつ黒装束は咳払いをいれて


「じゃあ、どうする?殺す?」

鉄折さんに指示を仰ぐ黒装束。鉄折さんは

「ダメ。気絶よ。ここで止めてちょうだい。あんな状態の人なんか連れていけないわ」


あれ?やっぱり体調悪いのばれてるの?


「だそうだ。悪いけど、ここでくたばれや」

その瞬間黒装束が消えた。

「こっちだ」

次にはもう横っ腹に蹴りが入り僕は逆の壁に強く体を叩きつけた。

「ぐぅっ!?」


 体全体に鈍い痛みが走る。

 いまなにがあったんだ?見失った?違う。そんなわけない。正面の敵を見失うんだなんて


「うんうん。意味わからんって顔だな。みんな同じ顔するもん」

するとまた消えて、今度は目の前に現れる、

「!?」

「悪いな、謎解きの時間なんかあたえねぇよ」


 次には見事なアッパーが顎にきまる。

 そこで僕の意識は見事に落ちていった。


☆★☆★☆


「なんだぁ、もうおしまいか。もう少し根性あると思ったんだけどな」

「そりゃそうよ。顎に入ったんだから。なんの能力も持たない人間が起きている方が異常よ」


私はそう言いながらさらに三歩後ろへ下がる。……そう。ここまでは計算どおり。本番はここから。


「でてくるわよ。もう一人」


 その瞬間、黒馬の体を真っ黒な黒いオーラが体を包み込んだ。そして、徐々に体つきが代わりはじめ数秒のうちに別人へと変貌した。


「よう女。今日の調子はどうだ?」


 不気味な笑みを浮かべながら男は問いかけてくる。その目は赤く染まっている。

 前に見た時と同じ身の毛のよだつ笑顔だと私は思った。

 しかし前回は自分に向けられてない。

けれど実際に自分に向けられると寒気をより強く感じた。


「絶好調よ。私もあなたに会いたかったわ」

「ヒヒッ!よくいうよ。今度はまた違う男を(はべ)らしてよぉ。なんだ?ビッチなのか?」


 下品な。


「なわけないでしょ。私の大事な仲間よ。悪く言わないでくれる?……ゲイル!方針は変わらないわ気絶させなさい!」


私はそう指示を出し、ゲイルはそれに従いとびだした。


「マスターへの侮辱確かに聞いたぞクソ野郎。今すぐあの世に送ってやる!」

「ハッ!やれるならやってみやがれ!」


 時守君だった男は前回の時と同じように影を体に纏い、迎えうとうとする。

 そう、あの青年は強い。スペックだけみたらSランクくらいあるかもしれない。それなら召喚魔術の中でも最高ランクである人型の連中とも渡り合えるのもわかる。


けれど、勝てないわけじゃない!


「な?!」


 次にはゲイルの拳が青年の頬に見事直撃。そのまま壁に激突して壁を破壊した。壁の大穴から察するにどうやら隣の部屋まで飛ばしたらしい。


「見えなきゃ当てられないでしょ!……追撃よ!」


 しかしゲイルはそこから動かなかった。そっちをみると腹から血がでてるようで黒装束の一部を濡らしていた。


「悪いマスター。止まるまで少し待ってくれ、めっちゃ痛い」


 なんてやつだ。今の一瞬で反撃してたなんて。

 少し立ち止まってると壁が崩れてできた穴から壁の一部であっただろう大きな塊を投げてきた。


「セイヤ!」


 ゲイルはそれを手で払い落とす。その穴からは男が歩きながら現れた。口からは血が垂れている。男は呟く。


「なるほどな。まさか肉弾戦とは、てっきり刃物使うのかと思ってたんだけどな」

「ばかめ。いつ俺が刃物を使うなんて言った?」


 再び突撃。そして消失。


「クソがぁ!」

「はっ!!」


 今度も直撃。背面からのドロップキックだ。流石に今度は吹っ飛ぶことはなく、前につんのめる程度だった。

 青年は振り向きざまに拳を入れようとするだろう。青年の目がそうかたっている。


「いけ!」


 魔力弾。指先から圧縮した魔力を発射して、あたかも銃のように撃つ技術。しかもこれは爆発を付与している。狙うは……目!


「ガァ!」


 撃った三発はすべて顔面にあたり小さな爆発を起こした。確実にその動きを封じることができた。


「ナイスだマスター!」


 その隙にゲイルは足に魔力をためて放出。


「セイヤァァァァァア!」


 横に周りこんでいたゲイルが青年の腹に強烈な前蹴りを放った。その一撃は天井に直撃。またしても大穴を開けた。どうやらその上の階にまで行ったらしい。

「追うわよ!」


しかし、追った先は

「ちょっと、ここ地上よ!どんだけ強く蹴ったのよ!」

地上まででてきた。さっきは地下四階だったのに!


 このバカはどんだけ強く蹴り上げたのよ!!

周りを見るとベンチや舗装された道に街灯があることからどうやら公園らしい。


「うむ。爽快だった」

そしてこいつは反省の色すら見えない。死んでなきゃいいけど……


「あいつは?」

「そこだ」


 指を指した先にはあの青年の姿ではなく、黒馬君の姿があった。もちろん動く気配すらない。


「まぁのびてるわな」

「でしょうね」


 さてと、後は黒馬君を医務室につれて帰るだけ。


「まてマスター。ありゃなんだ?」

 ゲイルが近づこうとする私を止めた。


「え?」

 よく見ると苦しんでいる黒馬君の姿があった。


「ウァァァアがああああ!!」

 何度もその体は白馬君のとさっきの青年の体つきに入れ替わりを繰り返しており地面をのたうちまわっている。まるで一つの体を二人で取り合っているかのようにも見えた。


「ねぇ、毒とか使ったの?」

「まさか。俺使う毒なんか人殺しの毒しかないよ。殺すな言われてるのに使うわけないじゃん」


 それから少しすると落ち着いたようで荒い息をしながら立ち上がった。

「あんにゃろ、まさか。一瞬気を失ったタイミング狙って支配権取り返しにくるたぁ、予想外だ」


 その姿は青年のものだ。まだまだ戦う気らしい。


「まだやるのか?」


 ゲイルが青年に問いかける。青年は口から血を垂らしながら笑顔を作る。


「当然だろ!じゃなきゃ気がおさまんねぇ。良くも散々コケにしてくれたなぁ!!」


 そう言ってゲイルめがけて飛びかかってきた。


「無駄だ!」


ゲイルが再び消えて青年の攻撃は空振りする。

そして次には横から再びドロップキックが直撃。数メートル吹っ飛んだ。

意識はあるようだが、もう立ち上がる様子はない。


「まだだ……俺は生きてるぞ?早く殺せよ。じゃねぇと……俺が殺すぞ?今すぐその喉を……俺の影で……」


 どうやら彼はまだ切り札があるようね。けれど……


「影かどうか知らないけど黒いのはもう消えてるわよ」


 そう言うと青年は心底驚いたような目をして、自分の手を見る。そこには確かに黒いオーラはなく、肌が、ただの手がそこにはある。

「やればできるんじゃねぇか。じゃあこれが最後か……」


 最後?いったいどういうこと?


「あなたは何者なの?」


 その問いに青年は疲れきった顔で私の方に顔を向けて言った。


「俺はこいつの『影』で同時に『闇』だ。そのうちわかるだろうがこいつは真っ当な生き方をしてなかったもんでね。そして気づいたら影が意志をもって俺が生まれてた」


黒馬時守の影。それが二つめの人格の正体だった。

それなら彼は?


「今時守君はどうなってるの?」

「ん?そんなもん知るか。こっちに出てきてたら内側であいつが何をしているかなんてわからねぇよ……まぁ一つ言えるとしたら俺から影の支配権を奪ったってことか」

「……影の支配権?」

「そう。影を自由に操る能力だ。たぶんだが、もともと潜在的に持ってたんだろうさ。じゃなきゃ俺なんか生まれてこないさ」


 考えるように唸ってから影はしゃべりだす。


「俺はなたぶん門番なんだよ」

「門番?」

「そう。門番。あいつがこの能力を使いこなすに値するかを見極めるためのな」


 そこで影は私の方を見る。


「あーなんか景色が霞んできた。もう終わりだな。長いようで割と短かったな」


 最後に一つ言わしてくれ。そう言って影は一言言った。 


「仲良くしろよ」


 そして彼は目を閉じた。体はどんどん見慣れた体つきへと変化し、いつもの少し細くて、けれど女子よりは筋肉のありそうな、いかにも少年らしい体へと変わった。


そして少年は目を開けた。


☆★☆★☆


「ここどこ?」

「外よ」

「そっか。それで僕をつれて帰るの?それなら抵抗するけど」

「なんでそんなにアルと会いたいの?」

「刺された理由聞きたいじゃ、だめ?」


 凪はあきれたようにため息をついた。


「聞いてどうするのよ」

「…………仲直りする。怒らしたならごめんなさいって言うだけだよ」

「子供の発想ね。そんなの出来るわけないわよ」

「…………子供か。その通りだ。けどすぐ殺してしまうより絶対いい」


 時守はその場で立ち上がり、ゲイルの方を向く。


「君はその……どうするの?」

「俺か?俺はマスターの命令に従うだけだよ」


 ゲイルはそっけなく答える。凪は暫く唸ったのち


「わかったわよ!この、頑固者め!」


 こうして二人はちゃんと手を組んだのだった。


続く


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