表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
MAGI-Craft(マギクラフト)  作者: スプライト
第二話「願いの在処」
16/27

7.新型と退避

『応答しろッ! 生きているか!?』


『……な、なんとか。ですが、行動はできそうにないです』


 ギンと、機体の下半身を喰われた隊員との通信に、少しだけ部隊に安堵が起こる。


『あの巨大な口……グラトニー型と仮称するが、アレについて何か気付いた事はあるか?』


『……喰われる直前、地面が急に変色して現れたように見えました』


 ギンは安全を確認すると、すぐさま情報収集へと意識を切り替える。聞いた限り、出てくる時も消える時も、同じように突然現れるようだ。しかし、予兆として赤い煙が現れるようだった。


『全員、赤い煙が見えたらすぐさまその場から退避。そして、その場所へありったけのショットガンをぶち込め』


『『了解ッ!』』


 エルもつられて応を返そうとした。が、


稲木イナキエル。お前は回避に専念していろ』


 ギンにそう命令される。エルは黙って頷いた。と、


『――敵出現ッ! ……でも、遠い?』


 全員がそちらへ視線を向ける。が、ここからではショットガンもトリモチも届かない。移動している間に隠れられてしまうような距離に、敵は現れていた。しかし、それでは敵も攻撃できないはず……と、考えた時。


『グリード型……!?』


 エル達は見た。グラトニー型が開いた大きな口の中から、グリード型が這い出してくるのを。うじゃうじゃと、次々に蜘蛛型のマギアが吐き出されていく。


『――ッ! お前等は陣形を維持ッ! 他のグラトニー型に警戒しつつ、グリード型を迎え撃てッ!』


 ギンは叫び、円陣から飛び出す。蜘蛛型の相手をする時間も惜しい、という風に横すり抜け、上を飛び越え、一直線にグラトニー型へと迫る。機体上腕部の装置が稼働し、せり出す。下腕へと装着されたそれに、弾丸が供給された音が響いた。


 このままではグラトニー型から、永遠に蜘蛛型が排出され続ける、なんて事になるかもしれない。一刻も早く倒す必要があった。


『――――――ォオオッ!』


 ギンが吠え、腕を振りかぶる。だが、流石に距離がありすぎた。グラトニー型は蜘蛛型の排出を止め、地面へ溶けるように消え始めている。


『チッ……!』


 ギンはせめて、と言わんばかりにそのショットガンを放った。あたり一帯の蜘蛛型やグラトニー型を無差別に、弾丸の雨が襲う。グラトニー型が一瞬怯んだのか、消えるタイミングが遅れた。


 傷自体は逆再生のようにすぐさま癒えていく。が、その間にギンは接近を成功する。ショットガンのリロードは……間に合わない。左肩の刀を、抜刀と同時に振り下ろす。グラトニー型が完全に消失する前に、その切っ先がギリギリ届いた。


 鮮血が舞う。

 しかし、返す刀は空を――赤い煙を切るのみだった。わずか一刀を当てるのが限界だった。その上、


『クソッ……』


 左脚に、蜘蛛型が取り付いていた。機体が嫌な音を立てた。ギンは即座に視線でグラスビュアを操作しながら叫んだ。


『パージッ!』


 場所を指定――左脚の装甲をパージし、蜘蛛型を引き剥がしながら、スラスターを吹かせて後方へ高く飛び上がる。そのまま円陣へと戻り、部隊の面々と共に、蜘蛛型の対処に当たる。


『隊長ッ! 大丈夫デすカ!?』


 小柄な黒人女性のパイロット――エイミーがギンへと心配の声を上げる。


『問題ない。それにいくつか情報も得られた』


 ギンは迫ってくる蜘蛛型に対処しながら、皆に改めて行動を指示する。基本的には先ほどと同じ。だが今後は、遠距離に敵が現れた場合も、ショットガンで攻撃を仕掛ける。


 敵はどうやら、再生中は消える事が出来ないらしい――それを利用して、遠距離攻撃で再生を誘発させる。その間にギンが接近。0距離からのショットガンを当て、一撃で仕留める。

 全員が指示に頷く。新型との戦いにも突破口が見えてきていた。


『来たぞッ!』


 作戦を伝え終えた直後、真下に赤い煙。


『散開ッ!』


 全員がその場から八方へと飛び退きのがら、ショットガンを構える。赤い煙から実体化した直後を狙い打たんとする。ギンはさらに、負傷していた機体も引っ掴んで回避させていた。


 が、彼等は地面に足をつけたと同時に、気付く。


『な、んでッ……!?』


 着地した先もまた、赤い煙が漂っていた。そして現れたのは――三十体以上の……視界を埋め尽くさん程の数の、口だった。あちらこちらに、待ち構えていたようにそれが実体化し、その口を閉じていく。


 ――一体じゃなかったのかッ……!


『退避ぃいいいいいいッ!』


 ギンの声が響いた。


 エルは自身の足下から生えてくる歯に、唇に、咥内から、必死に逃れる。スラスターを吹かせ、地面を蹴り、飛び退った。

 他の面々も、もう一度回避せんと必死に地面を蹴る。が、間に合わない。その足の一部を喰い千切られ得。逃れられたのは、ギンと……そして、エルだけだった。


 ギンが逃れられたのは、実力。引っ掴んでいた負傷していた機体も、なんとか放り投げて退避させていた。

 そして、エル。彼が回避できたのも偶然ではなかった。他の面々が回避から攻撃へと行動を移していたのに対し、彼だけは回避のみを考えていたからだった。


『ぐぁあああああァッ!』


『キャァアアアアァッ!』


 絶叫が、通信から聞こえてくる。グラトニー型はその口を完全に閉じ終えると、再びその姿を消した。立っているのは、ギンとエルの機体のみ。


『全員、這ってでもその場から移動しろッ! もう一度、円陣を組めッ!』


 ギンが叫ぶ。足を喰い千切られた機体の周囲に、また赤い煙が起こり始めていた。隊員達は強引に地面を手で押して跳ね、スラスターを吹かし、地面を転がるようにして……あるいは機体を削るようにしてなんとかその場から移動する。


 エルは再び組まれた、円陣……とも言えないようなただの集まりの中、ショットガンの安全装置を外し、構えた。


『何をしてる』


 ギンが、エルへ鋭い視線を向けた。


「俺も、俺に出来る事をする」


『勝手な事をするな』


「今戦わないで、いつ戦うんだッ! もうまともに動けるのは、あんたと……俺だけだろうがッ!」


 エルとギンが、睨み合っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ