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呉綾人編end

俺こと葉山旬はやましゅんは、紅月火くれないつきひの教室を訪ねていた。


てか、転校してから他クラスに来るの初めてだな。

そんなことより、紅ってクラスにどんな風に振舞っているんだ。あんなマシンガントークでうまく人とやっているんだろうか。


俺は適当な女子生徒に紅月火を呼び出してほしいとお願いした。


しばらくすると、紅がやってきた。


「なんだい、とうとうぼくが恋しくなってクラスに会いに来たのかい。まあ、冗談だ。昨日のことを話したいところだが、ここではちょっとね、放課後また会おう。

てか、君スマホぐらい持ってるだろう?いい加減、電話番号とアドレスくらい教えたまえ。そうすれば、連絡がとりやすいし、そっちの方が効率的だろう?」


そう言うが早いが、紅は俺のスマホをひったくり、操作していた。その間、俺はあっけにとられていた。

実際にいるんだな、こんな奴…。


「全くパスワードもかけてないとか、葉山、君は一体何を考えているんだ?しかも、アドレスも簡易的なものだし、ふざけてるのかい、君は?」


などと、散々ばかにされたが、俺は反論する気もなかった。実際そうなのだから…。


「ほら、ぼくのアドレスと電話番号、ソーシャルアプリの連絡先すべて登録したよ。これでいつでも連絡してきたまえ。もっとも家にいるとき、ぼくは確実に出ないだろうけどね。」


「いや、それ意味なくね⁉︎なんで、登録したんだよ!」


「なーに、君の電話帳を見たかったというのも少しだけあるがね。というよりも、君は柿谷満かきやみつると知り合いだったんだね。まあ君の態度からおおよその想像はついていたがね。それじゃあ、放課後また会おう。」


そう言って紅はクラスに戻っていった。

てか、あいつ何気にアドレスチェックしてやがった。なんて奴だ。


「そこの君、念のため気をつけたまえ。転校して間もないから知らないだろうが、一応スマホの使用は黙認されてるが、教師の中にはこころよく思ってない方もいるからね。」

「あ、すいません。気をつけます。て、もしかして、生徒会長さん?」


紅と別れた後、俺はメガネをかけた男子生徒に話しかけられた。よく見ると、それは生徒会長の神谷忠耀かみやただてるだった。


柿谷かきやくんから、話はよく聞いてるよ。君だろ?転校生の葉山君というのは。ちゃんとした挨拶がまだだったね。僕が生徒会長の神谷忠耀だ。短い間だが、よろしく頼むよ。」

「あ、すいません。こちらこそよろしくお願いします。」


なんともまともな人だった。なんていうか、学校の代表者として、世間に出しても申し分ない人って、こういう人のことなんだろうなと俺は1人で納得していた。


「かしこまらなくていい。同い年なんだから対等に話そうじゃないか。」


俺はいくつか気になることがあった。


「あの。会長さんは紅と幼馴染って聞いたんですけど、あいつは昔からあんな感じだったんですか?」


俺にそう言われた会長さんはなんとも複雑な顔をしていた。


「彼女か…。あいつは変わったよ…。俺もなんとかしてやりたいが、事情が事情だからね。」

「事情ってなんですか?何かあったんですか?」


俺の言葉に会長は驚いていた。


「なんだ聞いていなかったのか…。まあ、あまり人に吹聴するようなものではないからね。彼女自身もしくは保健医の東城夏美とうじょうなつみ先生に聞いてみるといい。君がhandyclubのメンバーだと言ったら、教えてくれるかもしれない。」


会長はそう言うと、教室に戻っていった。てか、会長と紅は一緒のクラスだったのか…。

東城先生か…。たしか、handyclubの仮顧問だって紅が言ってたよな…。今度訪ねてみるか。


それから、俺は教室に戻っていった。




放課後になった。

俺は情報屋である矢吹纏やぶきまといからの報告を伝えに来た柿谷と別れ、handyclubの教室を訪れていた。


教室に入ると、いかにもチャラそうな男子生徒がいた。


「初めまして〜、葉山先輩。五十嵐隼人いがらしはやとで〜す。よろしくー。」


俺にピースをしながら、その男子生徒は挨拶をしてきた。


彼が最後のhandyclubのメンバーか。見た感じただのチャラ男にしか見えないのだが。


「ああ、葉山だ。よろしく。」


俺は次に矢吹からの報告をみんなに伝えた。


「今回の依頼の対象者 唐松由利からまつゆりだが、彼女は高校入学早々事故にあったらしく病院に入院している。その事故の影響のせいか幼児退行に近い症状が出てるらしい。」

「ふむ、確かに氷上ひょうじょうと訪ねた時、面会を断られたね。そのような状態であったとは。さて、どうするかだね。」


「あのー。一つ聞いていいですかー。幼児退行ってー。治らないんですかー。」


氷上ひょうじょうが、疑問に思った様子で聞いてきた。


「幼児退行か。精神的なショックからくるものであるから、なんとも言えないけど、治らないとは限らない。というより、今回僕たちの依頼は呉綾人の告白の場を用意することであるからね。治療が目的じゃない。」


「そうでしたねー。」


俺はふと疑問に思ったことを口に出していた。


「てか、唐松が入院しているとこって結構厳重な警備じゃないのか?」


「えー、でもー。わりと簡単に入れましたよー。紅さんなんてー、看護師さんと仲よさそうに話してましたもんねー。」

「まあ、ぼくはわりと誰とでも仲良くできるからね。なんだ、葉山。行ったことがあるのかい?」


紅からの疑問に俺は落ち着いて答えた。


「いや、なんとなくの想像だよ。精神病院ってわりと入りにくいイメージがあったから。」

「ああ、なるほどね。まあ、問題は病室への侵入なんだよな…。葉山、矢吹からの資料を見せてもらえるかい?」


「ああ、悪い…。ほらよ。」


俺は疑問を抱えつつも、紅に矢吹からの資料を渡した。


「唐松由利には2歳違いの妹がいるのか。この手でいくしかないか…。」


紅は渋々といった様子で考えをまとめていた。


「五十嵐、協力してもらえるかい?」

「うん?紅さん、今度は何するの?変装でもするの?」

「いいや、ぼくはしないさ。変装するのは呉綾人本人にだよ。」



後から聞いた話だが、五十嵐はコスプレの達人つまり、レイヤーと呼ばれる人物らしかった。


結果から言うと、五十嵐が唐松の妹に変装させた呉綾人(わりといい出来らしかった)と、紅が病院に行ったらしい。


身分証を忘れたということにして、なんとか妹に変装した呉綾人を唐松の病室に送り届けることに成功したらしいが、そこには紅の大きな尽力があったとは言わざるをえないだろう。


告白が成功したがどうかは知らないが、唐松の病室に呉綾人が堂々と入れているという話を聞くところ、わりとうまくいったんじゃないかと思っている。





後日俺は駅近くの唐松が入院している病院を訪れていた。

病院に入ると、すぐに看護師さんに声をかけられた。


「こんにちは。今日はどのようなご用件ですか?お見舞いですか?」

「はい、唐松由利さんのお見舞いなんですが。」


看護師さんはしばらく調べてからまた戻ってきた。


「すいません。彼女は重症であるため、ご家族以外の方の面会はお断りさせていただいております。」

「そうですか…。では、お見舞いの花だけでも。」

「では、こちらにお名前をお願いします。」


俺は戸惑いながらも、葉山旬と名前を書いた。

俺は名前を書きながら、何気ない様子で看護師さんに尋ねた。


「そういえば、紅さんは最近いらっしゃいましたか?最近お会いしていませんから。」

「月火ちゃんですか?最近、いらっしゃいましたよ。この前初めて、お母さん以外の方といらっしゃるのをみかけましたけど。お友達ですか?」

「まあ、そんなとこです。すいません、ではお願いします。」


俺は看護師さんに花を渡してすぐに病院を出た。



やはり、紅は病院に通っているらしかった。しかも、看護師さんに名前を言っただけで、すぐに返事を返されたところを見ると、長い間通っているらしかった。



それから、俺は唐松がいるであろう病室に目を向けた。


唐松、ごめんな。俺のせいで…。


そうして俺は病院を立ち去ったのであった。


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