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呉綾人編①

俺こと葉山旬はやましゅんは、転校初日の日から、handyclubリーダーの紅月火くれないつきひの目に止まったということを除けば平穏な日々を送っていた。


基本的にhandyclubの活動は、リーダーの紅に依頼が来ない限り、することはなく、

俺はしばらくの間存在を忘れていたほどだった。


俺の日常生活は大体こうである。

授業を受け、放課後に親友の柿谷満かきやみちると話し、彼に生徒会があれば、そこで別れ、なければ一緒に帰宅するという生活を送っていた。



ある日の帰り道のことである。


「そういえば、葉山。お前きになる女子でもできたか?」

「はぁ?どういう意味だ?」


俺は一瞬柿谷が何を聞きたいのか釈然としなかった。


「ああ、悪い。ただ純粋にかわいい子はいたかっていう意味だ。他の学校からきた奴から見た時の、うちの学校のレベルを知りたくなっただけだよ。」

「なるほど、そういうことか。まあ、かわいい子はいるんじゃないか?まだあんまり話したことないからどんな奴らかはわからんけど。」

「へぇー、葉山は顔にそんなこだわり持たないやつか。」

「まあ、内面もちゃんと見たいってことだよ。」


俺は引きつった笑みを浮かべるしかなかった。なぜなら、嫌な思い出があるからだ。

もちろん紅のことだが…。


あいつは顔だけなら、わりと整った部類に入るのだが、内面は最悪、どころか狂ってるんじゃないかと思うほどだった。


「そーいう、柿谷はどうなんだよ。3年間もいる高校だろ、好きなやつぐらいいないのかよ。」


反論とばかりに、柿谷にそう言ってみるが、それこそ柿谷は困った顔をしていた。


「一応、彼女がいるにはいるんだが…。」

「まじかよ、柿谷おまえリア充だったのかよ。へぇー、どんな子?かわいい?」


と、当たり前のような流れになったのだが、柿谷ははぐらかすばかりで何も教えてはくれなかった。


「いずれわかるよ…。目立つ奴だから…、悪い意味で。」


柿谷の言葉は気になったが、本人があまり深く話してほしくなさそうだったので、その話題はそこで打ち切りとなった。


そういえば、柿谷から紅のことを聞き出せるかもしれない、と俺は思った。だけど、露骨に紅の名前を出すわけにはいけなかった。


どうしたものかと、考えていたがそうこうしているうちに柿谷と別れるところまで来てしまっていた。


「じゃあ、悪いな。また明日。」

「おう、じゃあな。」


柿谷と別れを告げて俺は帰宅することにした。



ちょうど部屋についてカバンを置こうとしたタイミングでスマホに着信があった。親からだった。


「…そう。じゃあ、うまくやってるのね。1人暮らしで何か心配なことはない?」

「大丈夫だよ、母さん。ごめん、そろそろ買い物に行かなきゃ。もう切るね。」


そう言って俺は通信を切った。

世の中の親というものがどういうものかは知らないが、うちの親は結構心配症だったりする。

よくなんでもないことで、病院で診察を受けさせられたり、学校を休ませられたりしたほどだった。


すべて俺のためにやってくれているのだけれど、こちらからしたらありがた迷惑でしかなかった。


そういえばと俺はふと我に返った。

この近場で病院はどこに行けばいいのだろうか。明日、柿谷か保健室の先生に聞いてみよう(その道のことはその道のプロに聞けっていうな)。

と思いながら、俺は買い物に出かけたのだった。



買い物先ではまさかの奴に出くわした。

そう紅だ。幸運なことに、紅は母親ときているらしく、俺を視界にとらえてもバッチリとスルーだった。


まあ、正直関わらないことには越したことがないので、そのまま買い物を終え、俺は帰宅することにした。

途中うちの制服の男子とすれ違ったことから、このスーパーは割とこの辺りの家庭になじみを持たれているのかもしれない。

夕飯は誰でも簡単に作れて日持ちするカレーにした。




翌日は日直だったため、俺は早めに登校しなければならなかった。

しかしながら、俺の努力とは虚しく日直と言っても大してすることはなく、俺は暇を持て余していた。


そんな風に俺が退屈してると、不意に扉が開く音がした。

やっと誰か来たか、この際誰でもいいから話しかけようと振り返ると、そこには紅がいた…。なぜいる。


「なーに、君の考えていることを当ててやろう。どうせなんでぼくがねらったかのように、君が1人の時にこの教室にやってきたのか疑問に思っていたのだろう。答えは簡単。昨日、君のクラスに立ちより、君が日直だと知ったからだ。」

「まあ、何が言いたいのかはわかる。それだけで俺は1人になる状況は作れない、なぜなら日直は2人いるから。

とでも言いたそうな顔をしているね。

だけどどっこい、紅月火をなめてもらっちゃあ困る。」

「そう君は転校してきたばかりだ。そう当たり前のように、ミスをしないよう早めに来ることは目に見えている。だけど、1度でも日直を経験したものは大体わかるはずだ。この仕事くらいなら、すぐに終わる、遅刻ギリギリにでも来ない限り。そうなると、自然と君は1人になる、そうだろ?」


相変わらずのマシンガントークを披露された俺は、朝から紅に逆らう気もなく、気だるげに相手した。


「そりゃ、どうも。全部あってるよ。で、何か用か?」

「なーに、君の退屈な日常に一石投じにきたんだよ。」

「正直、俺にとっちゃお前と話すだけで十分日常が壊れているよ。」

「ふふふ、そうかい。ぼくは君の日常を壊し得る存在なんだね。まあ、聞いてくれ。

葉山、依頼だ。」


そう言って、紅は俺に手紙を渡してきたのだった。


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