自傷行為
どうも、緋絽と申します。
短編です。最近よく書きます。どうぞ!
自分で、自分を傷つけた。
我ながらとても不思議だ。自分で自分を傷つけるって、なかなかできることじゃない。別に手首を切るとかしたわけじゃなくて、ただ単に、自分の言葉で傷ついたんだ。
でもだって、そう言うしかなかった。そう言えば、誰も傷つかない。僕以外。
僕は、一人が嫌だった。仲間に鬱陶しがられるほど人にくっついて回って、とにかく一人を嫌った。
それで迷惑をかけたこともある。
どうやら昔からずっと一人だったからというのが関係しているみたいなんだけれども、とにかく一人だけ除け者だと感じるのが嫌だった。いい大人が何をと思うかもしれない。実際当人である僕ですら思う。でも、一人が嫌なのだ。怖いと言っていい。
いつか僕の命が終わる時。その瞬間に一人きりだなんてことがあったら、きっと僕は耐えられない。この世の孤独をすべて背負った気になって、とても死ぬことを恐れている暇なんてないに違いない。そう思っていた。
それは、一瞬の、そして些細なものだった。
彼らに向かって放たれた、些細な、そして確実に命を奪う魔法に、僕だけが気づいた。確実に死ぬというのに、あんなにもひっそりとしていていいのかと、僕は理不尽に思った。
もう少し時間があったなら、僕だってもっとうまくやった。彼らだけじゃなくて僕もそれを受けないように知恵を絞って考えた。だけど、ただの剣士である僕には魔法をぶつけて相殺させるなんてことはできなかったし、特殊能力を持たない僕にはやっぱり全員を連れて転移して避けるなんて芸当も不可能だった。
だから、この身に受けることにしたのだ。このまま全員で滅びるよりは、自分だけの方がずっといい。だって、その方が皆生き残るし。多のための少の犠牲ってやつである。
僕は皆が大事だった。隅に転がされて生きていた僕を拾って、仲間にしてくれた。言われるままに人を殺し続けていた僕に、正しい道を教えてくれた。見返りがなくても人は居場所をくれると証明してくれた。
優しい皆。そんな人達が死ぬのを、認められると思うかい?
僕がその魔法を受けたことを、誰も気づかなかった。僕はうまくやったのだ。実は自分達が死ぬところでしたなんて言われたら、僕なら怖くなってしまう。
これまでもそんな時はあったけど、それでもやっぱり死ぬのは怖い。
なんてことを、冷静に考えようとした。
敵を倒して、みんな先に進もうとしている。だけど僕は、歩けない。魔法のせいで、体が石になろうとしているのだ。
動かない僕を訝しんで、皆が僕を振り返る。
あぁ駄目だよ。せっかくうまくやったんだから、皆無事でよかったねって喜んでるんだから。水を差したくない。
だから僕は嘘を吐いた。さりげなさを装って、最後の嘘を零した。
「ごめん。すぐに追い付くから、先に行ってて」
あぁ嫌だ。言いたくないよ。僕は一人が嫌いなのに。お願いだ、一人にしないで。僕を置いていかないで。
でも僕は知っていた。先に進まないと、敵が増えること。早く行かないと、出口に辿り着けないこと。
だから、笑うんだ。自分を傷つける嘘をついて。
皆の背が遠ざかっていく。
うん。そのまま、どうか振り返らないで。――でないと、呼び止めてしまう。
体が固まっていくのを感じながら、僕は、目を閉じた。
こんなことしか言えないなんて。
目を閉じきる一瞬前、誰かが振り向いたような気がしたけど、僕は―――。
御読了ありがとうございました!!




