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第三日曜日  作者: 月桂樹
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諦観者は

最終話、娘視点です

起き上がって、すぐに着替え始めた。

お母さんと違って、私は目覚めがいいから。


今日は、第三日曜日。


たくさんの嘘で塗り固められた、第三日曜日。


車に乗り込み、父さんの下へと行く。


母さんは鼻歌なんか歌ってる。

知らない人が見たら、上機嫌だと思うだろう。


でも、私にはわかってるんだ。


母さんは上機嫌ぶってるだけ。

ホントは、愛しの彼に会いたいってこと。


うまく隠してるつもりだろうけど、バレバレなんだよ、母さん。


私は小さく溜息ついた。


なんで私は気付いてしまうんだろ。


気付かなければ、無邪気に二人の間で笑えていたのに。


出迎えた父さんに笑いかける母さん。

事情を知らなければ、わからない完璧な笑顔だ。


父さんも、いつも通りの笑顔。


家族団らんの絵になっているのに。

私はうまく笑えない。


母さんは、まだ父さんに気持ちはあるのだろうか。

父さんは、まだ母さんに気持ちはあるのだろうか。


二人とも浮気をしてるのに、なんでお互い気付かないんだろう。


いつもいつもこの二人を見るたびに不思議に思う。


二人とも、嘘つきだ。


嘘つきに挟まれる私は、いつ嘘がばれるかハラハラしながら見ている。

ばれたら…この形だけの平穏が壊れてしまったら…。

私は一人になってしまうだろう。


心配して。

心配して。


もう、心が壊れてしまいそう。


誰かに言ったら楽になれるかな。

でも、誰に言えばいいんだろう。


誰にも言えるはずがないのに、考える。


言えるような友達はいない。

言えるような親戚はいない。

言えるような、人はいない。


私は一人ぼっちだ。


誰もわかりはしない。

私の心を。孤独を。

両親でさえも。

わかりはしないだろう。


もう少しバカでいられたら。


無邪気でいられたろうに。

変に聡かったから。

目ざとかったから。

好奇心が強かったから。


知ってしまった。

わかってしまった。


ほら、父さんが電話してる。

多分それは、彼女へ向けての電話。


ほら、母さんが何かを買ってる。

多分それは、彼への贈り物。


そうしてから、二人は何事もなかったかのようにいつも通りに過ごす。


この茶番が鬱陶しくてたまらない。


気持ち悪くてたまらない。


逃げ出したいけど、どこへ逃げればいいんだろう。


結局私はここにいるしかないのだ。

二人の間にいるしかないのだ。


何も知らない風を装って。


この穏やかな世界が終わるまで。


早く【世界】が終わればいいのに。

きっと、私は孤独になるけど。

少なくとも、いつ終わるかという恐怖はなくなる。


きっと、今よりはずっと楽だ。



ああ、早く終わって欲しい。



そう思いながら、私は二人の後をついて行った。




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