5月8日 (火)
今日は昨日とは違い、寝坊することなく起きることが出来た。
いつも通りの時間だったが、流石に二日続けて竜二達を待たせるのもなんだったので、少しだけ早めに家を出ることにした。
「おはようございます」
ちょうど家を出たところで挨拶をされる。
「あ、おはよう。早いんだね」
偶然、同じタイミングで家を出ていた白河さんに挨拶を返した。
「朝はだいたいこのくらいの時間ですよ」
二、三ほど言葉を交わし僕達は歩き出す。
当然、目指す場所は同じだったので、そのまま二人で登校することになった。
昨日、白河さんと初めて出会った公園の前に着く。
普段はここで竜二達と待ち合わせをしているが、二人の姿はまだ見えない。
「いつもここで合流して三人で登校してるんだ」
「ふふ、皆さん仲がいいんですね」
「一応、小学校からの付き合いだからね」
そんな事を話していたところで、二人が現れる。
「おはようさん。今日はいつも通りの時間だな」
「おはよう。そう何度も寝坊なんてしないよ」
「おっす……って昨日の転校生じゃねぇか?」
「はい、おはようございます」
ちょうど居合わせた白河さんも二人に挨拶をした。
「何だ亮、もう仲良くなったのか? こういう事には疎いと思ってたが意外にやり手だな」
「亮もあれで男だからな」
「そうだな。亮、立派に成長してくれて俺達は嬉しいぞ!」
「俺達のこと忘れんなよ。ぐすっ……」
「バカッ、泣く奴があるか。笑って亮を見送ってやろうぜ!」
「おうよっ!」
訳の分からない連帯感を見せ、ガシッと二人は肩を抱き合う。
「いやいや何処にも行かないし、勝手に話しを飛躍させないでよ!」
「ふふ、皆さん賑やかですね」
隣にいた白河さんは二人のやり取りが面白かったのか笑っていた。
「ほらぁ、笑われちゃったじゃないか」
「気にするな、賑やかなのは良いことだ」
「まったくもう……」
相変わらず独自のペースを行く二人に僕は呆れ、頭を掻く。
「そういえば自己紹介がまだだったな。俺は風間友也。で、こっちのやたらデカくてバカそうなのが……」
「真田竜二だ。まぁよろしく頼むぜ……って誰がバカ面だ!」
早朝から竜二のノリ突込みが冴える。
「よく聞け竜二。俺は面とまでは言ってない」
「っとすまねぇ、俺様としたことが早とちりしちまったぜ」
「分かってくれればいいんだ」
結局バカって言われてるけどね、と心の中でツッコミを入れる。
「こちらこそよろしくお願いします」
白河さんは、友也達のペースに流されることなく、相変わらずの笑みを携えていた。
「へぇ、白河は亮と同じマンションに住んでるのか」
変な誤解をされる前に二人に昨日の放課後の出来事を道すがら説明する。
「うん、だからまた四人で登校することがあるかもね」
「それもいいだろ。男だけじゃどうも華が無かったからな」
「何ぃ! って事は、亮と白河は毎日一緒に来るってことか!? 何か亮を寝取られた気分だ……」
なぜか、頭を抱え竜二が本気でへこむ。
「ちょっ、気持ち悪いこと言わないでよ……ってどうかした白河さん?」
白河さんは僕達を見て、顔に手を当てながら少し頬を紅潮させていた。
「い、いえ……なんでもありません」
まさかね……と嫌な予感を覚えるも、これ以上朝から気苦労をするのもなんだったので僕は深入りすることを止めた。
世の中には色々な人がいるんだ……うん。
学校ではいつも通り退屈な授業が待っていた。
隣にいる白河さんは真面目に授業を受けており、それとは正反対に竜二と友也は相変わらず自分の世界へ旅立っている。
これも日常の風景、何事もなく時は流れていく、はずだった……
「あっはっは!! さっきの英語、竜二があんな方法でウケを狙いにいくなんて、さすがに俺も予想出来なかったぞ」
「うるせぇな、こっちは真面目に答えたつもりだったんだよ!!」
「でも英語とフランス語くらいは区別出来るようになろうよ」
僕の予想を裏切り、英語の授業では竜二の珍解答が炸裂していた。
まだ受験勉強をしていた時の方が勉強できたんじゃないかとまたも呆れてしまう。
今日は朝から呆れてばかりだ。
「そういえば、白河さんは英語どのくらい話せるの?」
「日常会話程度なら話せますよ」
「さすが、帰国子女は違うな」
竜二とは逆に白河さんは流暢な英語でクラスの皆から尊敬の眼差しで見られていた。
「けっ、言葉なんて伝わりゃ何でもいいじゃねぇかよ」
竜二なら一人で外国に行っても生きていけそうだと、なんとなくその言葉に説得力を感じる僕だった。
今日の昼食は屋上で食べることにした。
屋上の扉を開けるとまだ心地よい春の風が吹き抜ける。
「うーん、風が気持ちいいですね」
「まだ春って感じだよね」
ポカポカと暖かい陽だまりの下で僕達はそれぞれ昼食をとる。
ちなみに白河さんだけは、自作のお弁当を作って来ていた。
こういうところは僕も見習わなければならないなと思う。
「今はまだいいけど、これからどんどん、クソ暑くなっていくんだろうよ」
「ああ、真夏日の屋上は地獄だからな……」
「思い出すな去年のあれを……さすがの俺様もあれは蒸し焼きになるかと思ったぜ」
去年のあれとは、誰が一番暑さに強いのかを競い合った、昼飯を賭けての我慢比べ。
誰が提案したのか、真夏の炎天下の中、昼休みの間に行われた。
結局は僕が一番先にリタイアしたのだけれど……
当時は何故そんな無謀なことをしたのか少し後悔していたが、今思えば、あんなバカなことでもいい思い出だった。
「夏なんですから涼しくなるようなことをすればいいじゃないですか?」
「涼しいことねぇ」
「そういえば去年って海水浴とか行ってないよね?」
「去年の夏といやぁ、祭りとか花火の記憶しかねぇな」
「なら、今年は四人で海にでも行くか!?」
いつもながらの友也の突飛な提案。
「四人てことは、私もいいんですか?」
「ああ、もちろんだ」
「いいね。僕も海に行くのは賛成だよ」
「俺も異論はねぇぜ」
「じゃあ決まりだ。今年の夏はみんなで海に行く!」
「今から楽しみですね」
また一つ新たな楽しみが増える。
僕にとっては友也達と過ごす日々がいつの間にか生きる糧となっていた。
放課後は引っ越してきたばっかりの白河さんのために、この街を案内することになった。
街の中心にある青篠駅を拠点にして案内していく。
「あ、ここはこの街に初めて来たときに使いましたね」
「まぁ、そうだろうな。青篠駅はこの辺りに住んでいれば誰でも使う駅だ」
駅の周辺はどんどん開発が進んでるため僕達が住んでいる住宅街に比べ、ビル群が多い。
「俺様は人ごみって奴が嫌いだから、あっちの方は今のままで十分だけどな」
「駅の方に来れば大体のものは揃ってるもんね」
「この辺には映画館やショッピングモール、ゲーセンなんかが揃ってるから暇潰しにはもってこいだ」
「はわぁー、スゴいですね。あそこに見える高い建物は何ですか?」
白河さんは建造物の中でも群を抜いて高くそびえ立っている建物を指差して質問した。
「あれは青篠スカイタワーって言って、一昨年に出来たばかりの建物なんだよ」
70階建てで全長約300メートルという高さを誇る。
それはまさに青篠のシンボルといっても過言ではない。
「中はどうなっているんですか?」
「ホテルやらショッピングセンターだったはずだ。上階の方には高級レストランや展望室もあったけな」
「そういや、この中に入ったことねぇな」
「学生にはほとんどは縁のない場所だからな。レストランなんかも予約制だし何より値段が高すぎる」
一品でも何千円も掛かるらしいので、僕達のような学生が気軽に行けるようなところではなかった。
移動中、人通りの激しい道すがらで「ドンッ」と誰かと肩がぶつかってしまう。
ぶつかった男の人はサングラスをしており、肩よりも長い髪で口周りに髭を蓄えていた。
そんな身なりだからだろうか少し老けて見える印象だった。
「す、すいません」
普通の人とはどこか違う異様な雰囲気を感じ、僕は軽くたじろぎながら謝罪した。
「……いや、こちらこそ」
それだけ言って、その男の人は去って行った。
何事もなかったことに安心しつつ、また絡まれたらどうしようかなどと尻ごんでいた自分が情けない……
その後も街中を散策し最後に駅付近にある大型ショッピングモールに僕達は足を運んだ。
「この中には雑貨屋や服屋、飲食店、映画館なんかがまとめてある」
「いろんなお店を寄せ集めた感じですね」
「ここなら俺達も服なんかの買い物によく来るな」
値段も手頃であり、遊び場も多くあるため僕達も週末などによく遊びに来ている場所だ。
「この街には色々楽しそうなものがあるんですねー」
白河さんが感心していると「ぐぅ~」という音が店内にこだました。
「わりぃな、歩き回ってたら腹が減っちまってよ」
竜二の腹の虫が鳴ったようだ。
「確かに、今日はいっぱい歩きましたから、少しお腹も空いてきましたね」
「じゃあファミレスにでも寄っていく?」
「大いに賛成だぜ」
時刻は18時35分。
晩御飯には少し早いが、僕達はモール内にあるファミレスで夕食をとることにした────
「ふー、食った食った。まだ少し足りない気もするけどな」
「腹八分目ですよ。真田さん」
白河さんがクスクスと笑いながら言う。
そして、ちょうど皆がそれぞれの食事を終えた時だった。
「さて諸君、一息ついたところで少しゲームをしないか?」
突然、友也がまた変な提案をした。
「ゲームって?」
「これだ!」
そう言った友也は自分のカバンの中からトランプを取り出す。
「それで何するんだよ? 神経衰弱とかは嫌だぞ」
「竜二って頭を使うゲーム全般がニガテだもんね」
「勝負ってのはシンプルなのが一番なんだよ」
「それで、一体何をするんですか?」
「それは……ババ抜きだ!」
案外普通だったのだが友也のこと、到底それだけとは思えなかった。
「ただし、ただのババ抜きじゃない。負けた奴が全員分をおごるんだ!」
嫌な予感が的中した。
友也が何かしようと提案するとだいたいギャンブル的な感じになる。
「おごりを賭けた勝負ですか!?」
「この方が緊張感があって面白いだろ」
「まっ、ファミレスくれぇの値段ならいいけどよ」
「僕達はいつもの事だけど白河さんは大丈夫? 嫌ならやらなくてもいいんだよ、罰ゲームもあるし」
罰ゲーム付きということで、初参加の白河さんを心配するが、
「いえ、せっかくですので私も参加させてもらいます」
と、あまりにも健気な白河さんの言葉に僕の目頭が少し熱くなったような気がした。
「全員の了承が出たな。じゃあ配っていくぞ」
シャッフルしたカードを友也が皆に配っていく。
そうして、ババ抜きは始まっていった────
ババ抜きと聞いて、すぐにある予感が走った。
このゲームは運否天賦だ。
勝つのは強運を持つ者。
友也がトランプを皆に配り終える。
いかにジョーカーを引かないか、これが重要になってくる。
逆に言えばジョーカーにさえ気をつけていれば勝てる単純なものだ。
だが何という不運。
初っ端から手札にジョーカーが来てしまった。
勝利を得るためには、このジョーカーなんとしても引かせなければならない。
皆がすでにペアが出来ているカードを捨てていく。
だが僕は、あえてペアを一つ捨てなかった。
そうすることで、少しでもゲームを引き伸ばすために。
今は先にアガることよりも、ジョーカーを無くすことに比重を置いた。
「ジャンケンで勝った奴から時計回りな」
席は僕の向かい側に友也、友也の隣に白河さん、そして白河さん向かい側、つまり僕の隣に竜二が座っている。
「「最初はグー……!」」
しかしそこで友也はパーを出した……
「おいおい、最初はグーだろ」
「わるいわるい、軽い冗談だよ。もう一回な」
仕切り直してもう一度。
「「最初はグー! ジャンケンッ……ポンッ!」」
友也以外はチョキ、そして友也は……グー!?
「悪いな俺の一人勝ちだ。じゃあ亮、カードを引かせてもらうぜ」
この時、僕は気付いていた。
友也が最初にパーを出したのは、ワザとだ。
あれは友也の罠……!
最初は当然グーを出す場面で、ワザとパーを出すことで皆にパーという印象を植え付ける。
そして有無を言わさずの二回目のジャンケン……
最初にパーの印象を植え付けられた僕達に対して、パーに勝つチョキを出させやすくし、友也は一人グーを出す。
これで絶対に勝つとはいかないまでも負ける確立が格段に減る。
これも立派な催眠の一種だと僕どこかで聞いたことがあった。
僕達は友也の罠にまんまとはまってしまったのだ。
さすがは友也だ、やはり楽に勝てる相手ではない。
だが、先手は打たれてしまったものの、まだ勝負は始まったばかり。
本当の勝負はこれからだと僕も慢心を振り払った。
一巡目。
友也が僕のカードを引く。
だがジョーカーではない。
「よし」
静かに喜びの声を友也が発する。
カードのペアが揃ったようだ。
そして友也は場にカードを捨てた。
「じゃあ次は白河が俺のカードを引くと」
「はい」
同じように白河さん、竜二と続けて場に揃ったカードを捨てていく。
「ほらよ。亮の番だぜ」
僕の番が回ってきた。
ジョーカーを持っている僕は、安心してカードを引くことが出来る。
上がりに近づくために、ここは出来るだけ手札を減らしておきたい。
慎重にカードを選び取り、揃ったカードを場に捨てた。
「どうだ、なかなかの緊張感が出てきただろ?」
「まぁね……」
そう言った友也はいつになく勝負を愉しんでいるようだった。
そして二巡、三巡としていく……
手札の枚数が減ってきたせいかペアが揃わないこともしばしば出てきた。
だがジョーカーはまだ、僕の手の内に眠っている。
あせるな、落ち着けと、自らに言い聞かせる。
必ずチャンスは巡ってくる。
だから自分がジョーカーを持っていると皆にバレてはいけない。
焦りを顔に出すことはせず、僕はポーカーフェイスに徹した。
さらに数巡目。
「アガリですっ!」
白河さんがトップでアガった。
「クッソ~、やるなぁ白河」
友也の表情には悔しみながらも笑みが浮かんでいた。
純粋にこのゲームを楽しんでいるのだろうか?
いまだに余裕の表情だ。
だが、虎視眈々と勝機を待つ、僕の額にはじわりと汗が浮かんで来ていた。
友也のあの余裕はどこから来ているのだろうか?
読み取ることの出来ない友也の思考に僕の中には小さいながら焦りが生まれていた。
そして友也が僕のカードを引く
カードを上に突き出したりするような小細工はしない。
あくまで自然体を装い、ジョーカーへの警戒心を薄れさせるためだ。
それが功をなしたのか、ついに友也が僕のジョーカーを引いた。
しかし友也は眉一つ動かさない。
だが、これでジョーカーが僕から一番遠い位置に移動した。
僕の手札は残り二枚
ここでペアを揃えられれば次の友也のターンでアガることが出来る。
今が絶好の好機とばかりに竜二のカードを引く……
後になって考えてみればこの思考。
ババ抜きではこういう考えが一番危険なのだと思い知る。
ジョーカーを引くことはないという油断はまさに泥沼。
すでに首まで僕は泥中にはまっていた。
なん……だと……
僕の引いたカード、それはまぎれもないジョーカーだった。
そう、すでにジョーカーは友也から竜二に移っていたのだ。
ジョーカーを引いたのにも関わらず竜二のノーリアクション。
これに違和感を覚える。
いや……竜二の性格ならば舌打ちくらいはしていたはず……
おそらくの原因は僕の気の緩みと友也に気をとられすぎていたための、注意不足だろう。
ここにきて必要以上に疑り深い性格が仇となってしまった。
友也のあの余裕……
ジョーカーの移動を悟らせないため……
自分に気を引かせるための策略だったのではないか?
全ては友也の手のひらの上……
そんな疑心暗鬼に陥る。
けど、まただ……まだ負けたわけじゃない。
再び自分を奮い立たせていく。
更に巡を重ねていく。
「よっしゃ。アガりだぜ」
竜二もアガってしまい、残るは僕と友也の一騎打ち。
残りの手札は僕が二枚、友也は一枚だ。
友也のターン。
ここが正念場だ。
ここをしのぎ切れば、きっと勝てる。
その思いを胸に僕は友也がカードを引くのを静かに待った。
僕の思惑とは裏腹に友也はジョーカーじゃない方のカードを引こうとしている。
マズい……!?
高鳴る心音。
この音が友也に聞こえていないことを祈った。
しかし友也は一度手を止めた。
「やっぱり、こっちにするか」
再び移動する友也の手。
まだ勝利の女神は僕を見放してはいなかったようだ。
友也はそのままジョーカーの方に手を掛け……
「──今、安心したな?」
「え……?」
友也の言葉に素っ頓狂な声が漏れた。
それは、安心という名の油断。
人間とは危険に陥っているときよりも、それを回避した直後が一番気を緩めやすいものなのだと思い知らされる。
そして友也は無情にもジョーカーではなくもう一枚のカードを引いた。
「フッ、俺の勝ちだな」
「ま、負けた……」
テーブルに手をつき己の未熟さを恥じる。
「最後の一瞬で気を抜くなんて、まだまだ亮も甘いな」
最後のわずかな気の緩みが、勝利の可能性を完全につぶしてしまった。
「はぁ……次からは気をつけるよ」
ただのババ抜きなのに異常に精神的疲労感が大きかったのも、友也の思惑通りなのだろうか?
途中、身体に電流が走ったような気がしたのは、気のせいだろう。
こうしておごりを賭けたババ抜きは終わった。
「やっぱりおごってもらうなんて悪いです。私も払いますよ」
白河さんの優しさが目に沁みる。
「これくらい大した額じゃないから平気だよ。それにゲームに負けたのは僕だからね」
「そうそう、こんなのは俺達の間じゃ日常茶飯事だから気にするな」
それでも白河さんは申し訳なさそうな顔をしていたが、
「そうですか、わかりました」
と言って渋々納得してくれた。
外はすっかり夕日も沈み、辺りは街灯の光に照らされていた。
「じゃあ、俺達はここで」
「また明日な」
「うん、またね」
「今日はありがとうございました。おやすみなさい」
途中で友也と竜二と別れ僕達は一緒に同じマンションを目指して歩き出す。
「今日は神谷君達に色々案内してもらって本当に楽しかったです」
「それは良かった。これくらいならいつでもお安い御用だからね」
「風間さんも真田さんもとっても面白い人達でしたし」
「ツッコむ方は疲れるんだけどね」
「ふふ、三人揃ってバランスが取れてるんですね」
「あはは、そうかもしれないね」
そんなたわいもない話をしながらマンションに向かって歩く。
「あ、あの……」
「うん、何?」
「明日からも、みなさんと一緒に登校させていただいてもいいですか?」
恥ずかしそうに手をすり合せながら白河さんが言う。
その言葉を聞いたとたんに僕は嬉しくなった。
「うん、もちろんだよ! じゃあ明日も今日と同じ時間でいいかな?」
「は、はい! ありがとうございます!」
僕の返答に白河さんの表情は向日葵の様にパアッと明るくなった。
僕達といて楽しいと思ってくれるのなら喜ばしい限りだ。
きっと、明日からはもっと楽しい日々が始まると確信した一日だった──────




