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約束

 8月の夏休み。

 僕達は皆で約束をした通り、海に来ていた。

 砂浜に一人腰かけ、遠くの海を眺める。

 海から吹く潮風がとても心地よかった。


「隣、いいですか?」

 ふと、横から話し掛けられる。

 見るとそこには美咲が立っていた。

「もちろん」

「失礼します」

 そう言って美咲が僕の隣に座る。


「何を見ていたんですか?」

「うん、海がとっても綺麗だなぁと思って」

「不思議ですね。普段から見慣れているはずなのにこんなに綺麗に見えるなんて……」

「いつも見ているからこそ、気付かないことがあるのかもしれないね」

 視線を海から美咲の横顔に移す。

 風になびく髪を抑えるどこか大人っぽい仕草と、綺麗で可愛らしい横顔に見惚れてしまう。

 美咲と僕が付き合ってから数か月。

 別にそれで大きく変わったことなんてない。

 今まで通り、一緒に話して、一緒に登校して、一緒に遊ぶ。

 それに……

「私の顔に何かついてますか?」

「あ……う、ううん。別にそういうわけじゃないよ」

 今だに近くで美咲と向き合うと、どうしても照れてしまう。

「ふふ、おかしな亮君ですね」


 そんな話をしていると、

「おーい! 亮ー、美咲ーッ! こっちの準備、出来たぞー!!」

 少し離れた場所から僕達を呼ぶ声がした。


「あっ、友也君が呼んでますよ」

「早く来ないと竜二の奴が一人で全部食べちまうぞっ!」

「それは大変です」

「そうだね。わかった! 今、行くよーっ!!」

 僕も友也に向かって叫ぶ。

「竜二の我慢の限界がくる前に僕達も行こうか」

「はい」

 僕達は立ち上がり、友也達が待つ場所へと歩いて行った────




5月13日 日曜日。スカイタワー某倉庫内にて──


「……私の……負けだ…………」

 この瞬間、男は全てをあきらめた。

「少しのあいだ眠っていてもらうぞ」

 そう言って、友也が男を気絶させる。

「ったく、無駄な手間掛けさせやがって、おかげで御馳走が全部パーじゃねぇかよ」

「後のことは本業のプロに任せておけば大丈夫だろ」

「うん。これで……終わったんだね、全部」

「はい」


 こうして一部の心無い人間達によって企てられたスカイタワーの爆破テロは誰一人の怪我人も出すことなく未遂のまま終わりを迎えた。

 亮は仲間達に支えられながらも、運命に打ち勝ち、永遠に続くと思われた長い、長い、戦いに終止符を打った。

 そうして亮は再び望んでいた日常を取り戻すことが出来のだ──────




「でも、何で海に来てまでバーベキュー? 普通、川原とか山でやらない?」

「それはな、俺がやりたかったからだ!」

 友也が声高々に言う。

「何その理由……」

 その理由を聞いて僕はまた呆れてしまった。

「たまにはいいじゃねぇか、海でやるバーベキューってのもオツなもんだろ」

「フフ、私も竜二君の言うことに同感です」

「お、美咲は分かってるじゃねぇか」

「竜二は食えれば何でもいいんだろ」

「何だと、友也!」

「じゃあ俺が店長から貰ったこの松阪牛の肉はいらないな?」

「ぐっ、それを盾にするなんて汚ねぇぞ……」

「友也はあまり竜二をいじめないでね」

「ハハッ、冗談だよ」

「ふぅ~、そいつ聞いて安心したぜ」

 竜二が安堵の息を漏らす。


「やっぱり肉目当てだったんだ」

「ぬぐっ、そうだよ文句あっか!?」

「別に、その方が竜二らしいよ」

「確かにそうですね」

「な、何だよ、美咲まで……そんなに褒められると照れるぜ……」

「「褒めてない」」

 僕と友也のツッコミが被る。


「夜は花火もやるんでしょ?」

「ああ、先月のバイト代で、しこたま買い込んだから思う存分、夏の風物詩を堪能してくれ」

「本当にいっぱい買ってきてますね」

 後ろのシートには山のように積まれた花火があった。

「逆に今日中に使いきれるかが心配だよ」

「安心しろ亮。この『千本花火の竜二様』に掛かればあっという間に使いきってみせるぜ」

「なにそれ?」

「いま思いついたんだ。どうだカッコいいだろ!!」

「びみょ……」

「はい、とってもカッコいいです!」

「えっ!?」

 美咲が食い付いた。

「へへっ、そうだろそうだろ!」

「うーんと、じゃあ私は『網仕掛(ナイアガラ)の美咲』なんていうのはどうですかね、亮君?」

「う、うん……いいと思うよ……」

「本当ですか!? じゃあ亮君は『烈火の亮』とかがカッコいいと思うんですけど」

 美咲と竜二は変なところで似通ってる気がする……


「まぁあれだ、とりあえず竜二の異名は置いといて」

「なんで俺様だけなんだよ!!」

「このままじゃ、いつまでたっても肉が焼けなさそうだったからな」

「おっと俺様としたことが忘れるところだったぜ」

「どんな味がするか楽しみですね!」

「うん、そうだね」

 友也が肉を箸で掴む。

「じゃあ始めるぜっ!!」

「「おーっ!!」」


 この先も僕達の前には様々な壁が立ちふさがることだろう。

 しかし、もう僕が歩みを止めることはない。

 誰かに決められた運命ではなく自分達の意志で進んで行く。

 そう……


『────運命とは自らの意志で切り開くものなのだから────』


            

             【「運命の一週間」 完】

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