5月10日 (木) (2)
今日も四人での登校。
「なぁ、皆今日の放課後は空いてるか?」
登校中の道すがら、友也がそんなことを僕達に聞いてきた。
「僕は特に予定ないけど」
「私もです」
「俺様もだぜ」
「じゃあ、放課後に映画を見に行こうぜ」
そう言って友也はカバンの中にからチケットを数枚取り出す。
「こんなに一杯のチケットどうしたんですか?」
「昨日バイト先の店長に貰ったんだ」
「四枚か、ちょうど人数分だね」
「ああ、これを使えば一回だけ無料で見られるぞ。どうだ?」
「まぁ、帰ってもどうせ暇だしな。行くか」
「よし、決まりだな。じゃあ今日の放課後は皆で映画鑑賞だぜ!」
「私、今からすっごく楽しみです!」
「そうだろう、そうだろう。ハッハッハッ!!」
そして放課後。
今日は何事もなく学校を終え、僕達は青篠駅近くにある映画館へと来ていた。
まずどの映画を見るのか決める。
「3Dで見るホラーとかどうだ? きっと凄く怖いぜ」
友也は大好きなホラー映画を推している。
「すみません……私、ビックリするのとか怖いのはちょっと、というかかなり苦手でして……」
「そうか……それは残念だ。そこが面白いんだけどな」
ということでホラー映画はボツ。
「じゃあド派手なアクション映画っつうのはどうだ!」
竜二は派手なアクション映画が大好きだ。
「うーん。そういう映画は今やってないね」
アクションもボツ。
「なら、涙だなしには見られない感動のヒューマンドラマとかどうでしょう?」
女の子らしい白河さんの意見。
「俺様、そういうの見てると途中で寝ちまうんだよなぁ」
ボツ……
全員の趣味が見事にバラバラだった。
「仕方ない。亮が決めてくれ」
「え、僕!?」
「俺達三人の案がボツで残ってるのはお前だけだからな」
「いいけど後で文句とか言わないでよ。うーんと、僕はあれかなぁ」
映画館に入ったときから妙に気になっていた映画を指差す。
話のあらすじからしてSF作品のようだった。
パッと見た限りでは、アクションシーンもありそうだし、主人公とその恋人の物語ということで感動的なシーンもあるだろう。
ホラー要素はなさそうだけど、ビックリするシーンなら一つくらいあると思う……
「私はいいと思いますよ。怖そうではなさそうですし」
「もう何でもいいからサッサと見ようぜ」
「じゃあこれに決まりか」
鑑賞する作品が決まったところで受付でチケットを購入する。
もちろん友也のおかげでチケット代は無料だった────
そして、約二時間にわたる映画を見終え、僕達は映画館の外へと出た。
「ねぇ、友也?」
「ん、なんだ?」
「自分で選んどいてなんだけど、今の映画、前に見たことなかったっけ?」
僕は上映中ずっと妙な既視感を抱いていた。
映画の内容としては、偶然タイムマシンを手に入れた主人公が事故で亡くなった恋人を過去に遡り、様々な苦難を乗り越え、助けるというものだった。
しかし主人公は恋人を助ける為に自分の命を犠牲にしてしまう。
今度は恋人がタイムマシンを使って過去に遡り主人公を助けるが、その代わりに今度は恋人が命を落としてしまう。
そして、再び男がタイムマシンに乗って過去に遡って行くシーンで映画は終わった。
「いや、今日が初めてのはずだぞ。それにまだ上映したばかりだからDVDのレンタルもしてないだろうしな」
「そうだよね……」
やっぱり僕の勘違いなのだろう。
きっと似たようなストーリーの作品をどこかで見たのか、読んだりしたに違いない。
そう納得することにし、僕はこのことを考えるのを止めた。
だが、最近似たような感覚によく遭遇すると思い出す。
美咲さんと初めて出会ったときも、昨日の野球の時もそうだ……
これが世間一般に言うデジャヴというものなのかとも思ったが、何か大切な事を忘れてしまっているようなそんな気がしてならなかった……
「で、結局最後はどうなったんだ?」
竜二が首を傾げながら悩んでいた。
「どうなったって、竜二もちゃんと見てたでしょ」
アクション以外の二時間映画でも、竜二は珍しく起きていた。
「俺様は、ああいう中途半端な終わり方が一番嫌いなんだよ。結末が気になるじゃねぇか!!」
「そんなの僕に、言われても……」
竜二の性格上、あのように「結末は視聴者のご想像にお任せします!」という感じに終わられるとモヤモヤしてしまうようだ。
まあ、僕も結末が気にならないと言えば嘘になる。
「なら、亮はどう思う?」
「え、僕? うーん……最終的には二人とも助かったっていうのが、ハッピーエンドって感じでいいんじゃないかな」
竜二のモヤモヤを解消するべく友也の問いに、僕は一番ベターであろう返答をした。
「って亮は言ってるが、竜二はどうだ?」
「あぁ? まあ亮がそう言ってんならそんなんだろ」
と、面倒くさそうに竜二は答える。
まあ、自分で考えるのが面倒だから竜二は結末を最後まで見たかったのだろう。
「じゃあ白河は?」
「私は……よくわかりません」
美咲さんの意外な返答。
穏やかな美咲さんの性格なら、てっきり僕と同じように二人とも助かる方が良いと答えると思っていたが違ったようだ。
「皆さんは『タイムパラドックス』という言葉をご存知ですか?」
「タイムパラドックスなんだそりゃ?」
竜二が再び首を傾げる。
「えーと、例えば僕が過去に行って僕の祖先を殺しちゃったら、僕が生まれなく て、僕が僕の祖先を殺すことができないっていう話だっけ」
どこかで聞いたような例えを元に美咲さんと竜二の質問に答えた。
「どういうことだ。俺様まだ意味がわかんねぇぞ」
「簡単に言えば過去は変えられないって説のことだ」
「なるほど。そりゃわかりやすい」
友也が捕捉を加えてくれたおかげで、ようやく竜二も理解できたようだ。
「そうです。一度定まってしまった運命はもう変えることが出来ません。何度繰り返しても過程はどうあれ結果はすべて、その運命に収束してしまいます…………」
やけに神妙な面持ちで話す美咲さんを見て、僕は一昨日の下校時の様子を思い出した。
あの時も、美咲さんはいつもと様子が違っていた。
「話が逸れてしまいましたね。もちろん亮君の言う結末はとても素敵だと思います。でも私は……あの主人公が恋人を助けることは、不可能だと思います」
絶対と断言するかのように、言葉に強い意志が込められていた発言。
そして、そのどこか思いつめたような表情に僕は言い知れぬ不安を覚えた。
なぜそんな寂しいことを言うのだろうか?
たかが映画の内容……ハッピーエンドで終わった方が良いに決まっているじゃないか……
「なんか理屈っぽくなっちゃいましたね。すみません、うまく言葉が出てこなくて」
「なるほどな」
自分の答えに苦笑している美咲さんの横で友也は一人納得していた。
「友也はどう思う?」
美咲さんの答えを聞いても、疑問を持たずに納得している友也はどう考えているのか僕は興味があった。
「俺も、白河と似たような考えだ。タイムパラドックスという概念がある以上、主人公が恋人を助けられる可能性は限りなく低いと思う。あくまで理屈で言えばだけどな」
友也が美咲さんの答えに疑問を持っていなかったのは自分も同じ考えだったからのようだ。
「じゃあ、あの主人公がしていることって無意味なことなのかな?」
自分の命を懸けてまで大切な人を救おうとしている。
しかし、その行為がすべて無意味ではあまりにも主人公が報われない気がした。
「そうかもしれない。だが、その行為自体が無意味かどうか決めるのは結局は本人次第だ。それに本当に命を懸けてまで叶えたい願いがあったとしたら、そうそうあきらめ切れるもんじゃないだろうさ」
僕達は皆、友也の弁舌に聞き入っていた。
しかし……
「どうせ一度しかない人生なら、自分が後悔しないような選択をするだろう? まぁ、俺が偉そうに言える立場じゃないけどな。だが、だからこそ俺は後悔しないように今を楽しく生きると決めた。そのために俺は俺の好きなことをするのだ!」
「おい、なんか話が変な方向に行ってねぇか?」
先ほどのクールな友也は跡形もなくなり、いつのまにか遊び好きの友也に戻っていた。
「将来のことを考えるのも必要だろう。過去を振り返ってみるのも大切だ。だがそれは今があるからだ。過去も未来も今の積み重ねだからな。うんうん……」
「ようは、友也はいつまでも遊んでいたいってことでしょ」
呆れる様に僕は友也の話を要約した。
「そういや、なんでこんな話になったんだっけか?」
「何だよお前達。せっかく人が良いこと言ってんのに少しくらい感動したらどうだ!?」
「ふふ……」
「って白河、お前まで笑うな!!」
「すみません。でも、やっぱり風間さんの意見はとても素晴らしいと思いまして……」
友也のいつものノリに美咲さんも再び笑顔を取り戻す。
友也の言うとおり、未来が今の積み重ねだとしたら、僕達の未来もきっと楽しいものに決まっている。
だって、僕達の今はこんなに楽しいものなのだから。
胸の中の不安を拭い去る様に僕も今を存分に楽しむことにした────
その後、僕達は同じモール内にあるゲームセンターで遊んだ。
そこでは美咲さんに頼まれ、クレーンゲームをやったのだが、自分でも驚くほどのテクニックで景品であるクマのぬいぐるみを取ることができた。
僕から景品を受け取った美咲さんは、ずっと大切にすると言ってくれたので、僕の喜びも一入だった。
ちなみに竜二と友也は二人でずっと格闘ゲームの大戦をしていたが、
────ヘブンオアヘェール デュエルワン レッツロック…… スラァーッシュ!! ────
「なぜだあああぁぁっ!?」
といった具合に友也の圧勝だったとさ────
満足いくまでの遊び終え、僕達は店の外に出る。
空に浮かぶ夕日は、もう沈みかけていた。
「さてと、腹も減ってきたしそろそろ帰るか」
竜二の何気ない一言に僕はあることを思い出す。
「あっ、忘れるとこだった」
「どうした亮、忘れものでもしたか?」
友也が不思議そうな顔で聞いてくる。
「いや大したことじゃないんだけど、食材の買い足しをしようと思ってたんだよ」
「あっ! 私も買い物のことをスッカリ忘れていました」
美咲さんも思い出したように言った。
「いつもどこで買い物してるんだ?」
「駅前のスーパーだけど」
「それなら、ついでに寄って帰るか」
「いいぜ、俺様も荷物持ちぐらい手伝ってやるよ」
「ありがとう。じゃあお願いするよ」
「おうよ、任せとけ!」
ドンッと竜二が自分の胸を叩く。
リンゴを片手で握り潰す竜二の力は、こういうときにも頼りになるのだ。
「一人暮らしってのも気楽そうで面倒だな。家事とか全部自分ですんだろ」
「竜二が将来一人暮らしとかしたら苦労しそうだよね」
竜二は家庭科の授業で鍋を爆発させた伝説を持っている。
「そんときは亮んちに泊まり込むらいいよ」
「なんでそうなるのさ……」
「残念だがな竜二、もう亮には先約がいる……」
友也がまた妙なことを言いながらチラリと美咲さんのほうを見る。
「しまった……そのことを失念していたぜ。ぐ、悔しいが俺様じゃ白河には勝てねぇのか……」
「はい……?」
友也の視線に気付いた美咲さんは何のことやらと頭に『?』を浮かべていた。
「ああ、来世にでも期待しろ」
「くそっ、女に生まれ変われば俺様だって……」
「いやっ、ナイからね!!」
そうこうしているうちに駅前のスーパーに着いたので店内に入って買い物を開始する。
まずは野菜から買うことにした。
「知ってる? キャベツって大きいものよりも重くて身が引き締まっていて、葉が黒くなっていない方が鮮度が高くて美味しいらしいよ」
僕は、ちょっと自慢げに知っている知識をひけらかした。
「へぇ、亮は食材の良し悪しがわかるのか」
「まぁ、誰かから聞いた事なんだけどね」
誰から聞いたのかは、もう忘れてしまった。
「同じ店の商品なのにそんなに違げぇもんか?」
「僕もよくわからないけど食材選びは料理の基本らしいよ」
「さすが亮君! よくわかってます。選び方も間違っていないですし、すごいです」
料理上手の美咲さんからも、お墨付きをもらう。
実は僕の知識が間違っていて、面目丸つぶれ、何て心配はなさそうだった。
その後も僕は記憶にある食材選びのコツを元に買い物を続ける。
料理の事を話しながら、美咲さんと一緒に買い物をするのはとても新鮮で面白かった。
レジで会計をするとお釣りと一緒に何かの券を貰った。
「今、青篠駅前で行われている福引の券です。今日もまだ行われていますので宜しかったらどうぞ」
受け取ったお釣りと福引券をサイフにしまう。
「ありがとうございました。またお越しください」
店員さんに見送られながら、先に外で待っていた友也達に合流した。
「荷物持ってやるぜ」
竜二の保有スキル、優しさが発動。
「僕は大丈夫だから、美咲さんのを持ってあげてよ」
「あいよ。ほら貸しな」
「ありがとうございます。じゃあこれをお願いします」
「これだけでいいのか?」
「はい、こっちは軽いですから私でも平気です」
何とも微笑ましい光景だった。
「そういえば会計をしたときに福引券貰ったよ」
「あ、私も貰いました」
そう言って美咲さんは福引券をポケットから取り出し二人に見せる。
「ほー福引か、せっかくだしやっていこうぜ。案外良い物当たるかもしれないぞ」
友也が見ていた福引券をヒラつかせながら言った。
「そうだね、やってみようか。何だか僕も今日は当たりそうな気がするよ」
福引と宝くじは期待するだけ無駄と昔から思っているが、今日は珍しく何かが当たる予感がした。
「おっ、頼もしいな。善は急げだ、さっさと行こうぜ」
悠々と歩き出す友也の後を僕達三人もついていく。
「おっ、あれじゃねえか?」
福引き所は駅のすぐ手前にあった。
「福引券は僕と白河さんで一枚ずつあるけど誰が回す?」
正直僕よりも友也がやった方が当たりそうな気がする。
「そりゃ、福引券を貰った本人が回さないで誰が回すんだ」
当然と言わんばかりに友也は答える。
「出来れば松阪牛一年分とか頼むぜ」
「そんなもの無いって……」
「松阪牛はともかく、何かしらは期待してるぞ」
「はい、頑張ります!」
美咲さんはヤル気満々だ。
こういう小さなことでもテンションが上がるタイプらしい。
「亮君、行きますよ」
「うん」
根拠のない期待に胸を膨らませ、僕達は福引をすることにする。
「美咲さんから先にやっていいよ」
まずはレディファーストで美咲さんに順番を譲った。
「ありがとうございます」
美咲さんは福引券を係りのおじさんに手渡し、抽選機を回す。
ガラガラと音を立てて回る抽選機から赤色の玉が一つ出てきた、その時……
「カランッカランッ!!」という突然のベルの音に何事かと僕達は顔を上げた。
「おめでとう! 二等、大当たりだよっ!」
「本当ですか!? やったぁ!!」
なんと美咲さんはたった一回のチャンスで二等を引き当ててしまった。
まさかの期待通りの展開に僕も胸を躍らせる。
「はい、賞品だよ」
「ありがとうございます。皆さん、私やりましたよ!!」
興奮冷めやらぬ様子で美咲さんが嬉しそうにはしゃいでいた。
「凄いよ、美咲さん!」
「まさか、二等とはいえ本当に当てるとはな。正直、俺もビックリだ」
「私だってやる時はやりますよ」
えっへんと美咲さんが胸を張る。
「で、何が入ってんだ?」
「えーと、ちょっと待って下さいね」
景品として渡された封筒を開けて中身を取り出す。
出てきたのは一枚の紙切れ。
「何かの券、ですかね?」
「どれどれちょっと見せてみな…………こ、これはぁぁっ!?」
券を手渡された友也が驚愕の声を上げる。
「何だよ、気になるじゃねえか早く言えよ」
友也のあまりのリアクションに皆の期待が高まっていた。
「……ああ、レストランの食べ放題券だ」
「それ、二等にしてはショボくねぇか……?」
確かにそれだけでは二等というほどの価値が薄れてしまう。
「フ、フフフフフフ……」
しかし友也は一人で不敵な笑い声を上げていた。
「な、何だよ? 気味が悪ぃな」
「聞いて驚け!! レストランといってもそこらのファミレスじゃねぇ! 青篠スカイタワーにある超高級レストラン『トラサルディー』だっ!!」
「えええええぇぇっ!!」
それを聞いた竜二も驚きの声を上げる。
超高級レストラン『トラサルディー』での食べ放題。
普通なら竜二達のように舞い上がってしまうところだが、
なんだろう……この胸の奥に感じる不安は……?
突如、僕の中に芽生えた不安。
「どうした亮、浮かない顔して。トラサルディーで食い放題だぜ! 嬉しくねぇのかよ?」
「何言ってるのさ竜二、嬉しいに決まってるでしょ……」
自分も皆と一緒に喜びを分かち合いたい気持ちは同じだ。
ただ……何か大切なものを失ってしまいそうな……
無くしてしまいそうな、その不安のせいで素直に喜ぶ事が出来なかった。
ここ最近の僕は本当にどうしてしまったんだ……
あまりの情緒不安定な自分の心に腹が立ってしまいそうになる。
「ほー、トラサルディーでの食べ放題か羨ましいね」
突然、僕達の会話に割って入ってきた知らない男の声。
見ると、異様な雰囲気の漂う男の人が一人、いつの間にか僕達の傍に立っていた。
その男の人はサングラスをしており、肩よりも伸びている髪と蓄えられた口髭が特徴的だった。
「何か俺様達に用でもあんのか?」
竜二がぶっきらぼうな口調で尋ねる。
「いや、偶然近くで様子を見ていてね。そこのお嬢さんが当てたのだろう、そのチケットを……おめでとう」
パチパチパチと数度手を叩き美咲さんに賛辞の言葉を贈る。
「あ、ありがとうございます」
「トラサルディーのディナーは私も大好物でね。私も良く行くんだよ。君達もその味を今のうちにしっかりと噛みしめておくといい……では失礼」
唖然とする僕達をよそに、男の人は踵を返して去って行った。
「なんだったんだ一体?」
馴れ馴れしい性格なのかトラサルディーの大ファンなのか分からないが、その男の人が、その場から去ったことに少し安堵している自分がいた。
そして帰り道。
「しかし今日は白河のお手柄だ。ホント人生何があるか分からねぇな」
僕達は今だに、さっきの話で盛り上がっていた。
美咲さんもトラサルディーに僕達三人と行くことに何の疑問も持たずに快諾してくれている。
「亮も定番のポケットティッシュじゃなくてよかったな」
「うん」
あの後、僕も福引を回しデスティニーランドの割引券を当てていた。
五等と言えば地味な気もするが、それでも十分だ。
「そういえば、待ち合わせの時間はどうする?」
予約の日程は5月13日、日曜日の19時~と券に書いてあった。
「そうだな、少し早めに合流して時間まではスカイタワーの中を見て回るってのはどうだ?」
友也が提案する。
「あっ、私も色々見てみたいです」
「うん、僕達もそれで構わないよ」
「じゃあ、16時にいつもの公園の前に集合な」
「あー、今から楽しみだぜ」
「ふふ、そうですね」
「そうだね……」
結局、最後まで拭い去ることの出来なかった一抹の不安を抱えたまま、僕の今日は終わりを迎えていった──────




