◆昔の仲間の困惑
今回は視点違い。
アズライト・テイル。
長命種でも滅多に見かけない深い青の髪を持つほどの魔力を持ち、
金と銀の瞳…つまり太陽と月の守護という希少すぎる加護を持った人間。
彼とのかかわりはおよそ350年程にさかのぼる。
かつてこの世界の半分を蹂躙した魔王。
彼のものを倒すべく旅立った数多の勇者達の1人、エストラーゼ。
戦神かと思うほど強かった彼には2人の幼馴染がいて、
そのうちの1人が賢者アズライトであった。
凶悪な攻撃魔法と神官顔負けの回復魔法にすぐれた彼は、
まさしく勇者エストラーゼの右腕であり、
パーティの中で、魔王と対峙できた3人のうちの1人でもあった。
彼の能力も功績も素晴らしく、
王となった勇者エストラーゼの尽力もあり、
彼は伝説の賢者と種族を問わず認知されている。
しかし、
非常に残念な事に…性格はあまり良くない。
特に他者に対する気遣いという概念があるかすら疑わしい。
…それどころか、人が嫌がる事を率先してするタイプだった…特に勇者に。
その彼が今、
…有り得ない色をした子供に謝っている。
あの残虐ひ…少し嗜虐しゅ…多少、容赦のない性格をしたアズライトが!
子供に!本気で!謝っている!
なんだこれは幻覚か!?あの子供は何者なんだ!?
そもそもその子供自体が有り得ない。
魔力を生命力とする魔族にだって黒髪なんて存在しないのに!
おまけに目まで黒!
闇の加護は紫…一体あの黒目は何の加護の証なんだ?
いや、そもそも人間なのか?まさかアズライトが作り出した魔法生物か!?
「…それで、結局それは何?」
ふいに子供がこちらに視線を寄こす。
伏し目がちなためか長い睫毛が目立つ愛らしい少女だ。
「あー…辛うじて知り合い?」
「…貴様の毒舌は相変わらずなのだな。」
聞きなれた毒舌に安心するなど空しい気がするが、やはり慣れないものは落ち着かない。
「知りあい…いたの。」
貴様もか!
…どうやら嫁とやらもアズライト並の性格らしい。
「賢者アズライトの妻よ、私はウォルテ・ワードロードだ。
見ての通り人間でなく、長命種…ハイエルフと魔族のハーフだ。」
「奥さん、これは前に話した魔王退治の時のメンバーの1人なんだよ。」
「ああ、そういう知り合い。」
心底どうでもいい、と言わんばかりの声音に心が折れそうだ。
アズライトの毒舌には慣れているが、新規の毒舌…しかも放置系は辛い!
そして、
その日私は初めてアズライト以上に恐ろしい人間がいる事を知った。
追記:しかし昼食はとてつもなく美味かったのでまた来よう!
ちなみに例の魔王討伐ですが、
賢者が300年くらい前で、ウォルテが350年って言ってるのは感覚の違いです。
賢者的には400近くならないと300年です(笑)