↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
34/58

第2部 第3幕 【星々の彼方に結ぶ永遠の楽園】 第1話 【異界の彼方に待つ新緑の庭園】

アーロン帝国の全艦隊が、

眩い黄金色の光の奔流に包まれながら、

未踏の

次元の深淵へと一斉に飛び込んでいく。

すべての世界、すべての理、すべての

並行次元が

アーロンの足元にひれ伏すその日まで、

追放された元無能――

いまや

全マルチバースの真の覇王となった

アーロンの侵略の進撃が止まることは、

永遠にない。

我がアルカディア帝国の艦隊が

次元の境界を抜け、

次に降り立ったのは、

かつて誰も観測したことのない

深緑の超次元だった。

そこでは、物理法則すらも

植物の成長速度に支配され、

巨大な生命の樹が

幾重にも宇宙を貫いていた。

「父上、

あの星々の生態系を我が帝国の

色彩へと書き換えますか?」

皇子レグナが頼もしい眼差しで尋ねる。

私は静かに頷き、掌に光を灯した。

すべての異界は我が庭園に過ぎない。


かつての

追放から幾星霜、私たちは星々を巡り、

数多の次元を我が手中に収めてきた。

しかし、今日のこの深緑の超次元には、

かつて

私たちが通り過ぎてきたどの世界とも違う、

底知れぬ異質な気配が満ち満ちていた。

それは、かつて私が大陸の北端――

通称『死の静寂しじま』と呼ばれた

不毛の荒野に立たされていた

あの日の記憶を、

奇妙なまでの鮮やかさで脳裏に蘇らせる。


「……レグナよ。覚えているか?

かつて私たちが初めて足を踏み入れ、

何もない『無』からすべてを創り出した

あの荒涼とした大地の感触を」

私の問いかけに、

レグナはふっと小さく笑みを浮かべ、

手にした長剣の柄に手をかけた。

「忘れるわけがありません、父上。

あの頃、

私たちは王国から理不尽な烙印を押され、

すべてを

奪われた状態からい上がりました。

あの『死の静寂』で父上が示してくれた

【全属性変換】の奇跡こそが、

我が帝国のすべての原点です」


そう、あの日はすべてが「無」だった。

魔力濃度が極端に低く、

普通の魔導師が足を踏み入れれば

数時間で魔力枯渇を起こして

倒れると言われていたあの場所。

「ここなら誰にも邪魔されない。……

さて、実験を始めるとするか」

かつて私が呟いた言葉の通り、

私はあの荒野の地べたに右手をかざし、

世界そのものを書き換えたのだ。

かつての王都では、

賢者たちが莫大なコストと時間をかけて

苦労して精製していた『魔石』。

それを私は、ただの

荒野の土くれから無限に生み出した。


【全属性変換】――

『無』を『大地属性(高純度魔石)』へ。


ピキピキピキー。

耳に心地よいその音とともに、

乾ききってヒビ割れていた荒野の土くれが、

瞬く間に黄金色に輝き始めた。

地面から次々と、

最高品質の

魔石の原石である金剛石が隆起していく。

驚くべきことに、

その魔力は枯渇するどころか、

周囲の空気を吸い込んで

際限なく膨れ上がっていた。

「ふむふむ。……なるほど。

これが『変換』の真価か。

消費したはずの魔力さえ、

変換の過程で増幅している」

あの時、私はさらに手を広げ、

荒野を吹き抜ける冷たい木枯らしを

生命を育む『水』と『熱』に変換した。

乾いた地面に清流が生まれ、

冷気は

心地よい暖かな日差しへと姿を変える。

たった数分の作業で、

見渡す限りの荒野が

緑豊かな平原へと塗り替えられたのだ。


そして今、

私たちはその原点から

遥か高次の次元にいる。

しかし、

目の前に広がる深緑の超次元は、

かつての

荒野とは比較にならないほどの規模で、

私たちに新たな試練と、

そして

「懐かしい残滓ざんし」を突きつけていた。


「父上、前方より空間歪曲わいきょく反応。……

あれは、

かつて私たちがこの手でほうむり去ったはずの

『あの日の悪夢』の残骸が、

次元のひずみを通じて

レベルアップして再構築されています」

レグナの鋭い指摘の先を、

私もまた冷徹な眼光で見据えた。

深緑の

生命の樹がうねる空間の裂け目から、

かつて私たちを追放した王国が

使役していたはずの巨大な魔獣、

そして私を「役立たず」と

さげすみ続けた者たちの思念が、

幾重いくえにも強化された

ゆがんだ姿となって現れ出てきたのだ。

それはかつての雑魚ではない。

次元のエネルギーをまとい、

神話級の脅威へと変貌を遂げた

「過去のデジャヴュ」だった。


「来るぞ、レグナ」

「御意のままに、父上。

あの頃の私とは違います。

今の私は、父上の血と覇道を受け継ぐ

アルカディアの皇子。

過去の亡霊など、私の手で

完全に無に還してみせましょう」


レグナが踏み込んだ大地が、

ごう音とともに黄金色の衝撃波を弾き飛ばす。

かつて荒野で私が何もないところから

城の基礎を競り上がらせたように、

レグナの周囲の空間そのものが

彼個人の強大な魔力によって

激しく再構築されていく。

かつて脳内に響いた、

あの傲慢な通信魔法のノイズ。

「アーロン! どこにいる!?

王都の障壁が消失したぞ……!」

あの日の屈辱と理不尽。

それをただの過去の笑い話に変えるため、

レグナは愛刀を抜き放ち、

眼前の強大なデジャヴュへと

真っ直ぐに突進した。


「我が父が創り出し、

 私が守るこの世界に、

 貴様らの居場所など最初からない!」


レグナの怒号が深緑の超次元を揺るがす。

かつて

荒野から始まった小さな反逆の炎は、

今や宇宙の運命を定める

巨大な神話の闘争へと姿を変え、

私の目の前で激しく燃え盛っていた。

私は玉座からその戦いを見守りながら、

静かに次の統治の準備へと

取り掛かるのだった。


©[I・G・ε]All Right Leserved.

我がアルカディア帝国の艦隊が

次元の境界を抜け、

次に降り立ったのは、

かつて誰も

観測したことのない深緑の超次元だった。

そこでは、物理法則すらも

植物の成長速度に支配され、

巨大な

生命の樹が幾重にも宇宙を貫いていた。

「父上、あの星々の生態系を、……?」

皇子レグナが頼もしい眼差しで尋ねる。


明日も 07:20 に、投稿します。

よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。