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【変神(ヘンシン)】で俺の考えた最強ヒロインをプロデュース!…したはずが、彼女たちの熾烈な争奪戦のターゲットになってました!?  作者: のびろう。
第13章 偽りの聖女と、王都に響く希望の歌

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断罪の聖歌と、双つの絶望

広場を埋め尽くす、人々の悲鳴と、苦悶の声。

その、地獄絵図の中心で、聖女セレーネは、天を仰ぎ、悲痛な声で叫んだ。


「これは、天が与えたもうた試練!

この聖なる都に、不信心者がいる証です!」。


その声は、拡声の魔法によって、王都中に響き渡る。

恐怖に震える民衆は、その言葉に、救いを求めるように、聞き入った。

そうだ、これは、神の怒りなのだ、と。


そして、その怒りの原因が、どこにあるのかを、必死に探し始めた。

セレーネは、そんな彼らの、迷える心を導くかのように、その白魚のような指を、真っ直ぐに、僕たちプリズム・ナイツへと向けた。


「そこにいる、古き英雄たちこそが、神の怒りを買った、不浄の源なのです!」


その一言が、引き金だった。

民衆の、恐怖と、混乱と、そして、行き場のない怒りが、一つの、明確なターゲットを見つけた。

狂信的な信仰心に支配された民衆の、憎悪の視線が、一斉に僕たちに突き刺さる。


「あいつらのせいだ!」

「聖女様に仇なす、悪魔め!」

「あいつらが、この街に災いを持ち込んだんだ!」


誰かが、足元の石畳を拾い上げ、僕たちに向かって、投げつけた。

その、一つの悪意は、瞬く間に、伝染した。


一人、また一人と、昨日まで、僕たちに「ありがとう」と言ってくれていたはずの人々が、今、僕たちに、殺意のこもった石を、投げつけてくる。


「な…なんで…」


リゼットが、呆然と呟く。

彼女の頬を、小さな石が掠め、赤い一筋の血が流れた。

だが、その痛みよりも、心の痛みのほうが、遥かに、大きかった。


僕たちが、完全に孤立した、その時。

戦場に、新たな絶望が舞い降りる。


大聖堂の前の空間が、バグったように、激しく明滅した。

そして、データの裂け目から、二つの、禍々しい影が、その姿を現した。


一人は、人の背丈ほどもある戦斧を担いだ、筋肉の塊。狂戦士レックス。

もう一人は、影そのものが人の形をとったかのような、痩身の暗殺者。ノクス。

カイザーの懐刀である、二人の最強幹部が、同時に出現したのだ。


「カイザー様より、最終クエストの通達だ。ヒーローの公開処刑を行う」


ノクスが、感情のない、冷たい声で、そう告げる。

その言葉は、死の宣告そのものだった。


「ひゃっはー!待たせたな、ヒーローごっこども!民衆に石を投げつけられる気分はどうだ?最高のショーじゃねえか!」


レックスが、巨大な戦斧を、楽しそうに振りかぶる。


聖女に扇動された民衆、そして、世界攻略ギルドの最強幹部。

二つの脅威に挟まれ、プリ-ズム・ナイツは、絶体絶命の窮地に立たされた。


「くっ…!」


僕は、即座に、ヒロインたちに指示を出す。


「全員、変神しろ!だが、民衆には、絶対に手を出すな!防御に徹するんだ!」


「「「「「応っ!!」」」」」


「「「「「変神!!プリズム・チェンジッ!!!!!」」」」」


五色の光が、憎悪の渦巻く広場に、迸る。

だが、その光は、もはや、希望の輝きではなかった。

ただ、生き延びるためだけの、悲痛な光だった。


「こんな…こんなのって、ないわよ…!」


セーラー・フレアへと変神したリゼットが、涙声で叫ぶ。

彼女は、炎の壁を作り出し、飛んでくる石つぶてから、仲間たちを守っていた。

その炎は、決して、民衆を傷つけないように、細心の注意が払われている。


「黙りなさい、リゼットさん!今は、感傷に浸っている場合ではありません!」


ナイト・ブリザードが、巨大な氷の壁を生成し、レックスの、大地を揺るがす一撃を、かろうじて防ぐ。

だが、その衝撃で、氷壁には、大きな亀裂が走った。


「小賢しい真似をしやがって!」


レックスが、再び、戦斧を振りかぶる。

その、あまりにも強大な、物理的な暴力。

だが、それ以上に厄介だったのは、もう一人の、影の存在だった。


「エミリア殿!背後!」


シャドウ・ストライダーへと変神した菖蒲が、鋭い警告を発する。

ヒーリング・エンジェルが、はっと振り返った、その瞬間。

彼女の、足元の影から、音もなく、ノクスの、黒い刃が突き出された。


キィン!

甲高い金属音と共に、菖蒲の小太刀が、その刃を弾き返す。


「…やるな、忍びの娘。だが、お前の動きは、全て、カイザー様のシステムが、予測済みだ」


ノクスは、そう言うと、再び、影の中へと、溶けるように消えていった。

いつ、どこから、次の攻撃が来るか、わからない。

その、心理的なプレッシャーが、僕たちを、じわじわと追い詰めていく。


「ふんっ、ちょこまかと、鬱陶しいわね!」


エレク・ハートへと変神したルージュが、紫電を迸らせる。


「まとめて、吹き飛ばしてや…!」

「待て、ルージュ君!」


僕が、彼女を制止する。

彼女の雷は、あまりにも強力すぎる。

一歩間違えれば、民衆を巻き込み、それこそ、カイザーの思う壺だ。


「くっ…!じゃあ、どうしろって言うのよ!」


ルージュが、悔しそうに、歯噛みする。


そうだ。

僕たちは、あまりにも、無力だった。

民衆を守ろうとすれば、幹部たちの攻撃に晒される。

幹部たちと戦おうとすれば、民衆を危険に晒してしまう。


完全に、詰んでいた。

カイザーの創り出した、この、悪辣な盤面の上で、僕たちは、ただ、翻弄されるだけの、駒に過ぎなかった。


「ひゃっはー!どうした、どうした!手も足も出ねえようだな!」


レックスの、巨大な戦斧が、横薙ぎに振るわれる。

僕たちは、散り散りになって、それを回避する。

だが、その一撃は、僕たちではなく、大聖堂の、巨大な円柱を、狙っていた。


ゴゴゴゴゴッ!

轟音と共に、円柱が砕け散り、大聖堂の天井が、大きく傾ぐ。

悲鳴を上げて、逃げ惑う民衆。

その、瓦礫の雨から、民衆を守るために、エミリアが、必死に、癒やしの光の結界を展開する。


「皆さん!早く、ここから逃げてくださいです!」


彼女の、悲痛な叫び。

だが、その、献身的な行動こそが、ノクスの、最大の狙いだった。


「…隙、あり」


結界の維持に、全神経を集中させていた、エミリア。

その、完全に無防備になった背後の影から、ノクスが、再び、その姿を現した。

その黒い刃には、対象の魔力を、完全に封じ込めるという、呪いの毒が、塗られている。


「しまった…!」


僕が、気づいた時には、もう、遅かった。

ノクスの刃が、ヒーリング・エンジェルの、その、光り輝く翼の、付け根へと、深々と、突き立てられた。


「…あ…」


エミリアの、小さな、か細い声。

彼女の身体から、優しい翠色の光が、急速に、失われていく。

変神が、強制的に解除され、その場に、崩れ落ちる、シスター服の少女。

その背中には、禍々しい、紫色の紋様が、呪いの刻印のように、浮かび上がっていた。


「エミリアさん!」

「エミリア殿!」


リゼットと菖蒲が、悲鳴を上げる。

チームの、心臓が、光が、今、僕たちの目の前で、奪われた。

その、一瞬の動揺。

それこそが、勝敗を分ける、決定的な隙だった。


「もらったぜぇぇぇっ!」


レックスの、渾身の一撃が、氷の壁を、粉々に砕き割り、その奥にいた、クラウディアの身体を、無慈悲に、吹き飛ばした。


「ぐっ…あ…!」


ナイト・ブリザードの変神が解け、壁に叩きつけられたクラウディアは、そのまま、意識を失った。


「クラウディアさん!」

「おのれ…!」


リゼットとルージュが、怒りに我を忘れ、レックスへと、突進しようとする。

だが、それは、あまりにも、無謀な突撃だった。


「――終わりだ」


ノクスの、冷たい声と共に、無数の、影の刃が、二人の足元から、突き出した。

二人は、なすすべもなく、その刃に捕らえられ、身動きを封じられてしまう。


残るは、菖蒲と、僕だけ。

だが、その菖蒲も、ノクスとの、高速の攻防の中で、その身体に、無数の傷を負っていた。


絶望。

圧倒的な、絶望。

僕たち、プリズム・ナイツは、今、完全に、敗北しようとしていた。

民衆の、憎悪の視線の中で。

神を名乗る、プレイヤーの、嘲笑の中で。

僕たちの、英雄譚が、今、ここで、無残に、終わるのか。

僕の、プロデューサーとしての、物語が。

僕の、愛する、少女たちの、未来が。

僕は、歯を食いしばり、自らの、無力さに、ただ、打ち震えることしか、できなかった。

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