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【変神(ヘンシン)】で俺の考えた最強ヒロインをプロデュース!…したはずが、彼女たちの熾烈な争奪戦のターゲットになってました!?  作者: のびろう。
第13章 偽りの聖女と、王都に響く希望の歌

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民衆の熱狂と、広がる不協和音

聖女セレーネの人気は、日に日に高まっていった。

彼女は、スラム街だけでなく、王都の各地に姿を現し、無償で人々を癒やし、導いていく。


その姿は、まさに理想の聖職者。

王立病院では、高名な医師たちですら匙を投げた難病の患者を、その純白の光で快方へと導き。


市場では、些細なことで始まった商人たちの醜い争いを、その慈愛に満ちた言葉だけで、穏やかな和解へと変えてみせた。


彼女の行くところ、争いは消え、病は癒え、人々の心には、温かい感謝と、絶対的な信仰の灯がともる。


民衆の熱狂は、ついに教会をも動かし、彼女を正式な「聖女」として認定するための、盛大な式典が、王都大聖堂で執り行われることが決定した。


僕たちプリズム・ナイツは、その、あまりにも出来すぎた英雄譚の調査に、本格的に乗り出すことになった。


「うわあ…すごい人でござるな…」


菖蒲が、感嘆の声を漏らす。

僕たちが訪れたのは、王都の中央広場。

そこでは、セレーネによる、公開での「癒やしの儀」が執り行われていた。

広場は、彼女を一目見ようと、溢れんばかりの民衆で埋め尽くされている。

その熱気は、もはや、一つの巨大な信仰の渦となっていた。


祭壇のように設けられた壇上に、セレーネが姿を現すと、地鳴りのような歓声が巻き起こる。

彼女は、その神々しい微笑みを民衆に向け、ゆっくりと、その白魚のような手を、天に掲げた。

すると、どこからともなく、純白の光の粒子が舞い降り、広場に集う人々の身体を、優しく包み込んでいく。


「おお…!身体が、軽い…!」

「長年悩まされていた、肩の痛みが…消えたぞ!」

「聖女様!ありがとうございます!」


民衆は、涙を流してひれ伏し、その奇跡を、ただただ、称賛していた。

実際に彼女の「奇跡」を目の当たりにしたリゼットや菖蒲は、その圧倒的なカリスマ性に感心するしかなかった。


「すごいわね、あの人…。本当に、たくさんの人を、笑顔にしてる…」


リゼットが、素直な感嘆の声を漏らす。


だが、僕のプリズム・チャームによるエネルギー分析は、僕の胸の中の違和感を、確信へと変える、不可解なデータを弾き出していた。

僕は、隣に立つクラウディアに、小声で話しかける。


「…どう思う、クラウディア君。君の、騎士としての目から見て、あの光景は、どう映る?」


「…フン。確かに、現象としては、驚異的ね。あれほどの広範囲に、同時に治癒効果を及ぼすなど、宮廷魔術師長ですら不可能でしょう。ですが…」


彼女は、その碧眼を、鋭く細めた。


「…ですが、あの光景は、あまりにも、完璧すぎるわ。まるで、寸分の狂いもなく計算され尽くした、演劇の舞台を見ているかのようよ」


さすがは、クラウディアだ。

彼女もまた、僕と同じ、一種の『違和感』を、その鋭敏な感性で感じ取っていた。


僕の脳内では、スキャナーが弾き出したデータが、無機質な文字列となって、結論を告げていた。

彼女の放つ癒やしの光は、確かに強力だ。


だが、エミリアの光が持つ、生命そのものを祝福するような温かさが、決定的に欠如している。

エミリアの力が、一人一人の魂の形に合わせて、その輝きを内側から引き出す、オーダーメイドの温かいスープだとすれば。


セレーネの力は、全ての傷や病というデータを、正常値へと強制的に上書きするだけの、栄養バランスは完璧だが、味も香りも存在しない、無機質なレーションのようなものだ。

魂がない。

まるで、精巧に作られた、魂のない光。


その頃から、王都に、奇妙な不協和音が広がり始める。

原因不明の、微弱な疫病が流行り始めたのだ。

それは、高熱が出るわけでも、身体に異常が現れるわけでもない。


ただ、人々の心から、活力が、希望が、ゆっくりと失われていく、奇妙な病だった。

街角では、些細なことで言い争う人々が増え、商店街の活気は、日に日に失われていく。

まるで、街全体が、灰色の、薄い靄に覆われてしまったかのようだった。


そして、奇妙なことに、セレーネの奇跡は、「彼女を心から信じる者」にしか、効果を発揮しなくなっていた。

疑いの心を持つ者や、僕たちプリズム・ナイツを信奉する者たちは、その奇跡から弾かれていく。

それどころか、そういう者たちほど、謎の疫病の症状が、重くなる傾向にあった。


人々の間には、徐々に、プリズム・ナイツへの不信感が芽生え始めていた。


「聖女様の奇跡を、プリズム・ナイツが邪魔しているのではないか?」

「あいつらが、この街に災いを持ち込んだんじゃないのか?」

「そうだ、あの転生者…アルト・フォン・レヴィナスこそが、諸悪の根源だ!」


カイザーの脚本は、静かに、しかし、確実に進行していた。

僕たちが、かつて命を懸けて守ったはずの民衆が、今、僕たちに、敵意の目を向け始めている。



僕たちは、その、あまりにも悪辣な風評を覆すべく、疫病に苦しむ人々の救護活動に、全力を挙げていた。

だが、僕たちの前に立ちはだかったのは、病そのものではなく、人々の、固く閉ざされた心だった。


「さあ、これを飲んでください。僕が調合した、特効薬です。すぐに、楽になりますから」


僕が、広場の隅で、虚ろな目で座り込んでいる老婆に、薬の入った小瓶を差し出す。

だが、老婆は、その手を、荒々しく振り払った。


「…いらん!お前たちのような、悪魔の薬など、飲めるものか!」


「悪魔…ですって?」


リゼットが、傷ついたような声を上げる。


「そうだ!お前たちが、この街に来てから、全てがおかしくなったんだ!

セレーネ様だけが、我々の救い主だ!お前たちさえいなければ、聖女様の奇跡は、我々全てを救ってくださるはずなんだ!」


その、あまりにも理不尽な、憎悪の言葉。

僕たちの善意は、彼らの、狂信的な信仰心の前では、全く届かない。


「そんな…!私たちは、みんなを助けたいだけなのに…!」


リゼットの瞳から、悔し涙がこぼれ落ちる。


その時、エミリアが、一歩前に出た。


「…わたくしに、やらせてください」


彼女は、覚悟を決めた瞳で、老婆の前に、そっと膝をついた。

そして、その、荒れた手を、優しく握りしめる。


「大丈夫です。あなたの苦しみ、わたくしが、癒やしてみせますから」


彼女の手のひらから、温かい、翠色の光が溢れ出す。

だが、その光が、老婆の身体に触れた、瞬間だった。


バチッ!


まるで、静電気が弾けるような、鋭い音と共に、エミリアの手が、弾き返された。

老婆の身体が、聖なる光を、明確に、拒絶したのだ。


「…っ!」


エミリアが、痛みに顔を歪める。

彼女の、慈愛の光が、届かない。

それどころか、老婆の瞳には、さらに深い憎悪の色が浮かんでいた。


「…見たか!やはり、お前たちは、聖女様に敵対する、不浄な存在なのだ!

出ていけ!この街から、今すぐ、消え失せろ!」


その声に呼応するように、周囲にいた人々が、僕たちを、遠巻きに取り囲み始めた。

その目には、もう、かつての、英雄を見るような、尊敬の色はない。

ただ、得体の知れない、災厄を見るかのような、恐怖と、敵意だけがあった。


僕たちは、なすすべもなく、その場を、後にするしかなかった。

背中に突き刺さる、無数の、冷たい視線。

それは、どんな強力な魔獣の爪よりも、僕たちの心を、深く、深く、傷つけた。

カイザーの、歪んだ笑い声が、僕の頭の中に、響き渡るような気がした。

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