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【変神(ヘンシン)】で俺の考えた最強ヒロインをプロデュース!…したはずが、彼女たちの熾烈な争奪戦のターゲットになってました!?  作者: のびろう。
第12章 神を名乗る遊戯者と、盤上の駒たち

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世界のルールを、ハックせよ

僕の、魂の叫び。

その言葉に、ルージュは、覚悟を決めたように、不敵に笑った。


「…面白いじゃない!あんたが、そこまで言うなら、乗ってあげるわ!アタシの、このどきどきする想い、全部、あの空にぶつけて、世界征服の、花火にしてやるんだから!」


彼女は、エレク・ハートへと変神し、そのしなやかな腕を、天に掲げた。

その瞳には、僕への、絶対的な信頼の光が宿っていた。


彼女は、残された最後の魔力を、その一点に、収束させていく。

夜空を覆っていた雲が、渦を巻き、その中心に、凄まじいまでの紫電が集束していく。

それは、もはや魔法というよりも、天変地異。

神の怒りそのものだった。


「喰らいなさい!アタシの、愛と、嫉妬と、欲望の、全部を込めた…最大の一撃を!」


「必殺!――ラヴァーズ・ボルトッ!!」


天から、巨大な、紫色の雷の槍が、召喚された。

だが、その切っ先が向けられたのは、狂戦士レックスではない。


僕が指示した、何もない、虚空の一点。

レックスが、まさに、その巨大な戦斧を振り上げ、最大奥義『ギガント・クラッシュ』を放たんとする、その頭上の、座標X34、Y72。


「はっ!ヤケクソになったか!そんなところに、何もないぜ!」


レックスが、勝利を確信して、嗤った、その瞬間。


ルージュの放った『ラヴァーズ・ボルト』が、何もない空間に炸裂した。

そして、世界が、一瞬だけフリーズしたかのように、動きを止めた。


ブツン、という、テレビの電源が落ちるような音。

色という色が、一瞬だけ、世界から消え失せる。

音という音も、完全に、沈黙する。


僕が狙ったのは、このゲームフィールドの、処理限界だったのだ。

レックスの巨大なポリゴンモデルと、地面が砕け散る派手なエフェクト。

その二つが重なった一点に、許容量を超える、ルージュの膨大なエフェクトという名のデータを叩き込むことで、強制的にシステムのバグを引き起こす。

それが、僕の、この世界の神を相手取った、唯一にして最大の、ハッキングだった。


数秒の、永遠にも思える静寂の後。

世界が、再び、色と音を取り戻す。

だが、その動きは、明らかに、異常だった。


レックスの動きが、カクカクとした、異常な挙動に変わる。

振り下ろされるはずだった戦斧が、コマ送りの映像のように、ゆっくりと、不自然な角度で、地面にめり込んでいく。


「な…なんだ…?ラグか…?クソっ、回線が、重てえ…!」


彼の攻撃モーションが、僅かに、しかし、致命的に遅延する。

彼の巨体を構成していた滑らかなポリゴンは、所々が、粗いブロックノイズのように乱れ、テクスチャが、正常に表示されていない箇所すらあった。

システムが、悲鳴を上げているのだ。


「今だ!全員、そこを叩け!」


僕の号令一下、プリズム・ナイツの、怒涛の反撃が始まった。

もはや、躊躇も、迷いもない。

僕の指示が、絶対の攻略法であると、彼女たちは、本能で理解していた。


「リゼット!奴の右膝!装甲のテクスチャが剥がれてる!そこが、今のあいつの、唯一の弱点だ!」


「わかったわ、アルト!」


セーラー・フレアが、炎の矢となって迸る。


「私の炎で、あんたのふざけたゲームごと、燃やし尽くしてあげる!フレイム・カリバー!」


炎の大剣が、ラグによって無防備になった、レックスの右膝の関節を、的確に、そして、容赦なく捉えた。


「ぐおっ!?な、なんだ、今のダメージは!?クリティカルヒットだと!?」


「クラウディアさん!奴の左足の下の地面を凍らせろ!移動ルーチンがバグってる今なら、体勢を崩せる!」


「ええ、承知したわ、プロデューサー!あなたのそのふざけた足場ごと、永遠の氷像にしてあげる!アイシクル・ブレイク!」


ナイト・ブリザードの氷の刃が、レックスの足元の地面を瞬時に凍てつかせる。

バランスを崩した巨体が、スローモーションのように、ぐらりと傾いだ。


「菖蒲君!奴の攻撃モーションを、ワイヤーで強制的にキャンセルさせろ!」


「御意!主殿の策、見事なり!忍法・影縛りの術!」


シャドウ・ストライダーが放った、鋼のワイヤーが、レックスの戦斧に絡みつき、その動きを、完全に封じ込める。


「エミリアさん!僕たちへの回復は不要だ!奴の身体そのものを、聖なる光で包み込め!奴のステータス表示に、バグを誘発させるんだ!」


「はいです、アルトさん!あなたの、その荒んだ心に、神の慈悲を!

セラフィック・シャワー!」


ヒーリング・エンジェルの、慈愛の光が、レックスの巨体を包み込む。

それは、彼を癒やす光ではない。

彼のシステムに、回復とダメージという、矛盾した情報を同時に送り込むことで、さらなるエラーを引き起こす、僕の考えた、最も悪辣なデバフだった。


「な、なんだ、これは!?HPが、回復したり、減ったり…ステータス異常が、点滅してやがる…!くそっ、バグか!バグりやがったな、このクソゲーが!」


完全に無力化され、身動きが取れなくなったレックス。

その、がら空きになった胸の中心部…禍々しく明滅する、コアとおぼしき部分が、ノイズ混じりに、露わになる。


「とどめだ!プリズム・ナイツ!君たちの、今の、全ての想いを、そこに叩き込め!」


僕の、最後の号令。

五人の少女たちの心が、完全に、一つになった。


「「「「「プリズム・ギャラクシアン・シンフォニー!!」」」」」


五色の、希望の光が、螺旋を描きながら、一つの巨大な輝きとなり、バグによって無防備になったレックスのコアを、寸分の狂いもなく、撃ち抜いた。


「馬鹿な…!こんな攻略法、ありえねえ…!チーターだ!チーターが出やがった!運営に報告してやる…!絶対に、BANさせてやるからな…!」


断末魔の叫びと共に、レックスの巨体は、けたたましいエラー音を立てながら、無数の、意味をなさない文字列の集合体へと分解され、やがて、光の粒子となって、消滅していった。


静寂が戻った広場に、カイザーの、感心したような、しかし、どこまでも冷たい声だけが、僕の頭の中に、直接響き渡る。


『…へえ。NPCの分際で、このゲームのバグを利用するとはな。面白い。実に、面白いじゃないか、アルト・フォン・レヴィナス』


その声には、敗北に対する悔しさなど、微塵も感じられない。

ただ、予想外の動きをする、出来の良いAIを見つけた、ゲーム開発者のような、無機質な好奇心だけがあった。


『いいだろう。今回のチュートリアルは、お前の勝ちだ。褒美として、この村は元に戻してやる』


その言葉を最後に、僕たちの目の前で、信じられない光景が、繰り広げられた。

レックスとの戦いで、瓦礫の山と化していたはずの村の建物が、まるで、ビデオを逆再生するかのように、するすると、元の姿へと、修復されていく。

地面に穿たれたクレーターも、ひび割れた石畳も、全てが、嘘だったかのように、消えていく。


そして、家々の中に隠れ、恐怖に震えていたはずの村人たちが、何事もなかったかのように、ぞろぞろと外へと出てきた。

そして、昨日までと、全く同じ、日常の営みを、再開し始めたのだ。

生気のない瞳で、同じセリフを、繰り返しながら。

まるで、長い夢から覚めたかのように。

いや、違う。

彼らにとって、僕たちの、この死闘は、最初から、存在しなかったのだ。

僕たちの戦いは、彼らの記憶には、一切残っていない。


リゼットが、フラフラとした足取りで、先ほど、薬草を渡した老婆の元へと、駆け寄った。


「お、おばあちゃん!大丈夫だった!?怖かったでしょ…!」


だが、老婆は、そんなリゼットの必死の問いかけに、虚ろな瞳を向けるだけだった。


「あら、旅の方かい?お困りごとかい?実は、うちの亭主が腰を痛めちまってねぇ…」


リゼットの顔から、さっと、血の気が引いた。

僕たちが、命を懸けて守ったはずの日常。

その、あまりにも空虚な光景に、僕たちは、誰もが、言葉を失っていた。


カイザーの声が、とどめを刺すように、響く。


『だが、覚えておけ。ゲームは、まだ始まったばかりだ。次のステージでは、もっと面白いバグを用意してやるよ。

せいぜい、俺を楽しませてくれ…プレイヤー』


その声と共に、カイザーの気配は、完全に消えた。

後に残されたのは、僕たちの心に深く刻まれた、絶対的なるゲームマスターの、不気味な予告だけだった。

僕たちは、勝った。

だが、その勝利は、あまりにも、虚しかった。

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