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【変神(ヘンシン)】で俺の考えた最強ヒロインをプロデュース!…したはずが、彼女たちの熾烈な争奪戦のターゲットになってました!?  作者: のびろう。
第12章 神を名乗る遊戯者と、盤上の駒たち

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絶対的ゲームマスターの嘲笑

鉱山の最深部。

玉座のような岩にふんぞり返っていたゴブリンの親分は、僕たちの連携攻撃の前に、あまりにもあっけなく散った。

その断末魔は、苦痛の叫びというよりも、プログラムが終了する電子音のようだった。


そして、その巨体が光の粒子となって消えた跡には、『ゴブリンの王冠コモンアイテム』と、数枚の金貨が、虚しく転がっているだけ。

僕の視界の隅には、半透明のウィンドウがポップアップした。


<BOSS BATTLE CLEAR!>

<獲得経験値:100 EXP>

<獲得ゴールド:500 G>


「…茶番も、ここまで来ると芸術的ですらあるわね」


クラウディアが、剣についた、存在しないはずの血を払う仕草をしながら、心底うんざりしたように呟いた。


僕たちは、もはや何の感慨もなく、村長(の姿をしたNPC)に「クエスト完了」を報告するため、来た道を引き返し始めた。

村人たちは、相変わらず生気のない瞳で、同じセリフを繰り返している。

この、歪んだ世界から、一刻も早く、本当の世界を取り戻さなければ。

その、冷たい使命感だけが、僕たちを突き動かしていた。


僕たちが、この村が何者かによって「ゲーム化」させられているという結論に達した、その時。

村長に、ドロップアイテムである『ゴブリンの親分の首』を渡した、まさにその瞬間だった。


村の中央広場の空が、突如として、バグったモニターのように、激しく明滅した。

風景が、一瞬だけ、粗いポリゴンの集合体へと変わり、すぐに元に戻る。


強烈な既視感デジャヴュ。

いや、これは、僕が前世で、出来の悪いオンラインゲームをプレイしていた時に、サーバーが落ちる寸前によく見ていた光景だ。


「な、何…!?空間が、また…!」


リゼットが、警戒しながら僕の前に立つ。


次の瞬間。

広場の中心の空間が、ビリビリと音を立てて、黒い亀裂のように裂けた。

それは、ゲートでも、魔法陣でもない。

まるで、世界のテクスチャが、無理やり引き裂かれたかのような、冒涜的な穴。

その、データの裂け目から、一体の巨漢が、ゆっくりと、その姿を現した。


その身に纏うのは、禍々しいオーラを放つ巨大な鎧。

肩には、人の背丈ほどもある、巨大な戦斧を担いでいる。


その顔は、獰猛な笑みを浮かべ、その瞳は、獲物を見つけた肉食獣のように、爛々と輝いていた。

悪の組織『世界攻略ギルド』の幹部、狂戦士レックスだ。


「ようこそ、ヒーローごっこ御一行様!ここからは、お待ちかねのボス戦だぜ!さっきのゴブリンは、ただの前座。

俺様が、このエリアの、本当のレイドボスだ!直々に、遊んでやるよ!」


レックスは、僕たちをプレイヤー、自分をボスキャラとでも言うように、高らかに嗤う。

その頭上には、ゴブリンの親分とは比較にならぬほど、禍々しく、巨大な、竜の形をしたボスアイコンが、浮かび上がっていた。


「「「「「変神っ!――プリズム・チェンジッ!!」」」」」


戦いが始まった。

いや、それは、戦いと呼ぶには、あまりにも一方的な、蹂躙だった。


「舐めるな!」


リゼットが、誰よりも早く、セーラー・フレアへと変神する。


「あんたみたいな、ふざけた奴に、この村をめちゃくちゃにされてたまるもんですか!フレア・ナックル!」


渾身の炎の拳が、レックスの巨体に叩き込まれる。

だが、その拳は、まるで分厚い壁に阻まれたかのように、彼の鎧に届く寸前で、虚しく霧散した。

僕の視界にだけ、無機質なシステムメッセージが表示される。


<セーラー・フレアの攻撃>→<Berserker Rex>

<ダメージ:0>

<SYSTEM: 対象は【火属性耐性:MAX】を保有しています>


「なっ…!?私の炎が…効かない!?」


愕然とするリゼット。


「無駄だ無駄だ!俺様の鎧は、火属性完全無効!そんなこたぁ、攻略サイトの1ページ目に書いてあんだろうがよぉ!」


レックスが、腹を抱えて大笑する。


「小賢しい!」


続けて、ナイト・ブリザードへと変神したクラウディアが、氷の刃となって舞う。


「あなたのその巨体、絶対零度の氷で、永遠に動きを止めてあげますわ!ブリザード・ブレード!」


だが、彼女の放った冷気もまた、レックスの身体に触れることなく、虚空へと消えていく。


<ナイト・ブリザードの攻撃>→<Berserker Rex>

<効果:なし>

<SYSTEM: 対象は【状態異常無効】のパッシブスキルを保有しています>


「だから、無駄だって言ってんだろ!状態異常系のデバフは、ボスには効かねえのが、この世の常識なんだよなぁ!」


僕たちの新必使技すら、彼の圧倒的なHPゲージの前では、微々たるダメージしか与えられなかった。

リゼットとクラウディアの『フレイザード・ストリーム』が直撃しても、レックスの頭上に表示された、幾重にも重なる長大なHPバーは、ほんの数ピクセル、削れただけだった。


「うおお、今のコンボはちょっと痛かったぜ!だが、俺様のHPは、あと99%も残ってるけどな!」


「どうしたどうした!コンボが繋がってねえぞ!

そんなんじゃ、Sランククリアは夢のまた夢だぜ!」。


レックスの嘲笑が、少女たちの心を、じりじりと折っていく。

希望が、絶望へと塗り替えられていく。

その時、僕の脳内に、この世界の法則を支配する、もう一人の声が、直接響いた。


『…どうだい、アルト・フォン・レヴィナス。俺の創ったゲームは、楽しめているかい?』


その声は、どこまでも傲慢で、どこまでも冷徹だった。

カイザー・フォン・ヴォルフガング。

彼が、遠隔でこの戦いを観戦し、僕たちのステータスや、この場の法則そのものを、リアルタイムで書き換えているのだ。


『お前がどれだけ優れた理論を構築しようと、無駄なことだ。なぜなら、この世界の物理法則も、魔法法則も、その全ては、俺が設定した『パラメータ』に過ぎないからだ。俺が、火を無効だと言えば、火は燃えない。俺が、氷を無意味だと言えば、氷は凍らない。この世界で、俺は神だ』


「くっ…!」


絶体絶命。

僕の科学も、彼女たちの勇気も、絶対的なるゲームマスターの前では、あまりにも無力。

だが、僕は、まだ諦めていなかった。

どんな完璧なゲームにも、必ず「バグ」や「仕様の穴」は存在する!


僕は、レックスの単調な攻撃パターンと、この世界の歪んだ法則の、僅かな矛盾点を、超高速で分析し、逆転のための一手を導き出す。


レックスの攻撃は、確かに強力だ。

だが、その動きは、あまりにも単調で、予測可能。


大振りな斧による、三連撃。

地面を叩きつけ、衝撃波を発生させる、範囲攻撃。


そして、一直線に突進してくる、チャージ攻撃。

その、三つのパターンの、繰り返し。

まるで、AIの思考ルーチンが、それしか組まれていないかのように。


そして、僕は、見つけてしまった。

その、完璧に見えるシステムの、僅かな綻びを。


レックスが、最も強力な範囲攻撃…『ギガント・クラッシュ』を発動させる、その予備動作の瞬間。

ほんの一瞬だけ、このエリア全体の風景が、僅かに、本当に僅かに、カクつくのを。

処理落ち…ラグだ。


彼の、巨大な身体のポリゴンデータと、地面が砕け散る派手なエフェクト。

その、二つの膨大なデータを、この歪んだシステムが、同時に処理しきれず、悲鳴を上げているのだ。


(これだ…!)


僕の脳内に、逆転の数式が、閃光のように迸る。


(この、システムが最も無防備になる、コンマ数秒の瞬間に、さらに、許容量を超える、第三の巨大なデータ…すなわち、最大出力の魔法を、同じ座標に叩き込むことができれば…!システムは、強制的に、処理の優先順位を見失い、致命的なエラー…フリーズを引き起こすはずだ!)


僕は、最後の希望を、一人の、恋する乙女に託した。


「ルージュ君!彼の頭上、座標X34、Y72に、最大出力の雷を!ただし、狙うのは彼自身じゃない、何もない空間だ!」


僕の、あまりにも不可解な指示に、誰もが戸惑う。


「はあ!?アルト、あんた、正気!?あんなところに、何もないじゃない!」


ルージュが、信じられない、という顔で、僕に叫び返した。


「いいから、やるんだ!君の、その恋する乙女の情熱の、全てを、そこにぶつけろ!僕を信じろ!」


僕の、魂の叫び。

その言葉に、ルージュは、一瞬、ためらった。

だが、僕の、真っ直ぐな瞳を見て、彼女は、覚悟を決めたように、不敵に笑った。


「…面白いじゃない!あんたが、そこまで言うなら、乗ってあげるわ!アタシの、このどきどきする想い、全部、あの空にぶつけて、世界征服の、花火にしてやるんだから!」


彼女は、そのしなやかな腕を、天に掲げた。

その瞳には、僕への、絶対的な信頼の光が宿っていた。

彼女は、最後の魔力を振り絞り、僕が指示した、何もない空間に向かって、その雷を、放った。

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