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【変神(ヘンシン)】で俺の考えた最強ヒロインをプロデュース!…したはずが、彼女たちの熾烈な争奪戦のターゲットになってました!?  作者: のびろう。
第11章 五色の恋模様! デート大作戦と新たなる胎動

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リゼット編 幼馴染の特権と、心繋がる炎の味

記念すべきデート大作戦のトップバッターは、やはりこの人、リゼット・ブラウンだった。

籤を引き当てた瞬間、「やったー!」と、工房中に響き渡る声で叫んだ彼女は、昨夜からずっと、遠足前の子供のようだったらしい。

他の四人の、羨望と嫉妬と、ほんの少しの激励が入り混じった視線を一身に浴びながら、彼女は僕の前に立つ。


「じゃあ、アルト!行こっか!」。


いつもと変わらない、太陽のような笑顔。

だが、その頬はほんのり赤く染まり、僕の腕に、当然のように絡まる指先は、少しだけ熱を帯びていた。

その小さな変化に、僕の心臓が、計測不能な微弱な電流を発生させたことに、僕自身はまだ気づいていない。


僕たちは、まるで昔、レヴィナス領の村祭りを二人で歩いた時のように、気兼ねなく王都の商店街を食べ歩きしていた。

活気に満ちた大通りは、復興の槌音と、人々の笑い声で満ちている。

その喧騒の中、リゼットは、水を得た魚のように、僕の手を引いて駆け出した。


「アルト、見て見て!あそこのお店、すっごくいい匂いがする!絶対美味しいわよ!」。


彼女が指差したのは、香ばしいスパイスの香りを漂わせる、ケバブの屋台だった。

僕が、「ふむ、回転する肉塊を垂直に焼き上げることで、余分な脂を落としつつ、旨味を内部に閉じ込める。実に合理的な調理法だ」と分析する前に、彼女はもう二つ、それを手にしていた。


「はい、アルト、あーん!この串焼き、すっごく美味しいわよ!」。


大きな口を開けた僕の中に、ジューシーな肉と、シャキシャキの野菜、そして、少しだけ甘いソースが、完璧なハーモニーを奏でながら飛び込んでくる。


「ふむ、この肉汁の滴り具合、完璧な火加減だ。

ソースの隠し味に使われているのは、リンゴと蜂蜜か。


僕の好みを完璧に理解しているな。

リゼット、君は本当に美味しいものを見つける天才だな」。


僕の、科学者としての分析を交えた最大級の賛辞に、彼女は、えへへ、と得意げに胸を張った。

その無防備な仕草に、周囲の男たちの視線が、一瞬だけ突き刺さったのを、僕は見逃さなかったが、今は言うまい。


「えへへ、そうでしょ!アルトの好きなもの、私、全部知ってるんだから!」。


その言葉は、決して大げさではなかった。

次に彼女が買ってきた、りんご飴の、飴の薄さとパリパリ感。

その次に食べた、クレープの、クリームの甘さ控えめ加減と、フルーツの絶妙な酸味のバランス。

次から次へと、僕の口に幸せが運ばれてくる。

その全てが、驚くほど僕の味覚のストライクゾーンに、寸分の狂いもなく投げ込まれてきた。


僕が何気なく視線を向けた屋台のメニューを、彼女は寸分の狂いもなく言い当てる。

僕が次に何を欲するかを、完璧に予測しているかのようだ。

それは、もはやエスパーの領域だった。


「すごいな、リゼット。僕の思考パターンが、君には読めているのか?

あるいは、君は、僕の脳内に、微弱な精神感応型のインターフェイスを、無意識のうちに構築しているとでもいうのか?」。


僕の、あまりにも真剣な問いかけに、リゼットは、きょとんとした顔で数回まばたきをした後、ぷっと吹き出した。


「もう、アルトったら。そんな難しいこと、わかんないわよ。

そんなの、当たり前じゃない。だって、私たちは、ずーっと、ずーっと一緒だったんだから」。


その言葉は、あまりにもシンプルで、あまりにも温かい、真実の響きを持っていた。

そうだ。

僕が、この世界に転生し、「アルト・フォン・レヴィナス」として産声を上げた、その日から。

物心ついた時から、いつも隣には、彼女がいた。

僕が、前世の科学知識とこの世界の魔法を融合させるという、突拍子もない実験に没頭し、部屋に引きこもっていた時も。

失敗作のポップコーン製造機を見て、一緒に笑ってくれたのも。

スタンピードの絶望の中で、僕の無茶な理論を信じ、勇気を示してくれたのも。

いつだって、彼女だった。


僕の、複雑怪奇な思考回路も、難解な数式も、彼女にとっては関係ない。

ただ、「アルトが、今、何を考えていて、何を欲しているか」を、隣で感じ取り続けてきた、その時間の積み重ねが、彼女に、僕だけの最高のナビゲーターとしての能力を与えたのだ。


(…僕の、一番の、理解者か)。


その、当たり前だったはずの事実が、今日のこの、特別な時間の中で、今までとは違う、少しだけくすぐったい意味を持って、僕の胸に響いた。


日が傾き、喧騒に満ちていた商店街が、オレンジ色の夕日に染まり始める頃。

僕たちは、両手いっぱいに戦利品(食べ物)を抱え、王都を一望できる、小高い丘の公園へとやってきていた。


眼下には、家路につく人々の姿と、少しずつ灯り始める街の明かり。

その、どこまでも平和な光景を、僕たちは、ただ黙って、隣に並んで見つめていた。


ベンチに座り、二人で一つのアイスクリームを分け合う。

僕が一口、彼女が一口。

その、あまりにも自然で、あまりにも親密な距離感に、僕の心臓が、またしても、不規則なリズムを刻み始める。


その時、リゼットは、少し寂しそうに笑った。


「最近、みんながいて、賑やかで、すっごく楽しい。クラウディアさんや、エミリアさんや、菖蒲さんも、ルージュさんも、みんないい人たちで、最高の仲間だって、本当に思うの」。


彼女は、僕たちの工房での、あわただしくも温かい日々を、愛おしそうに語る。

その瞳に、嘘はなかった。


「でも、時々、ほんの少しだけ、昔みたいに、アルトを独り占めしたくなっちゃうの。

…なんてね、わがままかな?」。


その、いじらしい呟きに、僕は、どうしようもなく胸が締め付けられた。

わがままなど、とんでもない。

むしろ、これだけのライバルに囲まれながら、今まで、よくぞ、その一言を飲み込んできたものだ。

彼女の、その健気さが、僕の心を、強く、強く揺さぶった。


「そんなことはないさ」。


僕は、気づけば、彼女の口元についたアイスクリームのクリームを、自分の指でそっと拭っていた。

びくり、と彼女の肩が震える。

その、あまりにも自然な、そして、あまりにも意識していない僕の行動に、彼女の顔が、夕日よりも赤く染まっていく。


「僕にとっても、君とのこの時間は、特別だ。君の炎は、いつだって、僕の心の、一番近くで燃えている」。


それは、気障な口説き文句なんかじゃない。

僕という、科学と理論の信奉者が、ようやく見つけ出した、僕の心の中にある、偽らざる真実。

僕が、この世界で初めて繋がりを持った、温かい光。

それが、リゼット、君なんだ。


僕の、精一杯の言葉。

それを聞いたリゼットの、栗色の大きな瞳から、ぽろり、と、一粒の、ダイヤモンドのような涙がこぼれ落ちた。


「…アルトの、ばか」。


彼女は、そう呟くと、僕の指についたクリームを、小さな舌で、ぺろりと舐めとった。

その、あまりにも大胆で、あまりにも破壊力のある行動に、今度は、僕の思考回路が、完全にフリーズする番だった。


「…え?あ、いや、今のは…!ち、違うの!もったいないなって、思っただけで…!他意は、他意は、全くないんだからね!」。


自分でしておきながら、その意味するところに気づき、顔を真っ赤にして、ぶんぶんと首を横に振るリゼット。

その姿が、どうしようもなく、愛おしかった。


僕たちの間に、甘く、そして、少しだけ気まずい沈黙が流れる。

その、恋の神様がくれたかもしれない、絶好のチャンスを、打ち破ったのは、僕たちのすぐ近くで遊んでいた、一人の小さな男の子の、悲鳴だった。


「うわぁぁぁん!風船が…!」。


見ると、男の子の手から離れてしまった赤い風船が、風に煽られ、公園の高い木の枝に、引っかかっていた。

もう、子供の手には、到底届かない。


「ああ、可哀想に…」とリゼットが腰を浮かせた、その時。

僕の、ヒーロープロデューサーとしての、そして、科学者としての本能が、同時に作動した。


「待ってろ、坊や。今、お兄さんが取ってあげるからな」。


僕は、ニヤリと笑うと、近くに落ちていた、手頃な長さの木の棒を拾い上げた。

そして、リゼットに向き直る。


「リゼット君!君の力を、少しだけ貸してくれ!」。

「え?う、うん、いいけど…どうするの?」。


僕の、突拍子もない提案に、彼女は、きょとんとしている。

僕は、そんな彼女に、悪戯っぽくウィンクしてみせた。


「見ててくれ。僕たちの、初めての共同作業だ」。


僕は、木の棒の先端を、風船が引っかかっている枝の、少しだけ下に向ける。

そして、リゼットに指示を出した。


「いいかい、リゼット。

僕が合図をしたら、この棒の先端に、君の炎の力で、ほんの少しだけ、上昇気流を発生させてくれ。

強すぎちゃダメだ。風船を燃やしてしまわないように、そよ風のような、優しい風を」。


「優しい、そよ風…?わ、わかったわ!やってみる!」。


彼女は、僕の意図を完全に理解したわけではないだろう。

だが、僕の言葉を、絶対的に信頼してくれていた。

彼女は、真剣な顔で、僕が構える木の棒の先端に、意識を集中させる。


「…よし、今だ!」。


僕の合図と共に、リゼ-ットの指先から、小さな、しかし、確かに熱を帯びた、炎の渦が放たれた。

それは、セーラー・フレアの時のように、敵を焼き尽くす破壊の炎ではない。

パンを焼く時の、窯の中の、優しく、温かい炎だった。

炎は、木の棒の先端に触れると、ふわりとした、温かい上昇気流へと姿を変えた。


その、僕の計算通りに制御された風が、木の枝に引っかかっていた風船を、下から、そっと、持ち上げる。

風船は、するりと枝から抜け出すと、ふわり、ふわりと、僕たちの手元へと、舞い降りてきた。


「…やった!アルト、すごい!」。

「いや、君の、繊細なコントロールのおかげだよ」。


僕たちは、顔を見合わせ、笑い合った。

その手には、子供の笑顔の源である、赤い風船が、確かに握られている。


僕が、泣きじゃくる男の子に、「ほら、もう大丈夫だ」と風船を手渡すと、彼は、満面の笑みで、「お兄ちゃん、お姉ちゃん、ありがとう!」と、元気よくお礼を言って、母親の元へと駆けていった。

その、ささやかな、しかし、何物にも代えがたい光景。


それを見送りながら、リゼットは、ぽつりと、呟いた。


「…なんだか、私たち、本当のヒーローみたいだったね」。

「ああ、そうだな」。


僕の頭の中では、今、この瞬間に生まれた、新たな必殺技の、完璧な設計図が、描き出されていた。

リゼットの、ただ燃やすだけではない、対象を『生かす』ための、温かい炎。

そして、僕の、ただ破壊するだけではない、目的を達成するための、的確な科学的アプローチ。

この二つが合わされば。

例えば、燃え盛る建物の中から、人を傷つけることなく、その炎だけを制御し、救助の道を切り開く、なんてことも可能になるかもしれない。


技の名は、『プロミネンス・プロテクション』。

守るための、炎の盾。

リゼットの、優しさそのものを、形にしたような、最高の技だ。


僕は、興奮に目を輝かせながら、隣の少女の、温かい手を、ぎゅっと握りしめた。


「ありがとう、リゼット。君のおかげで、また一つ、僕たちの力が、進化したよ」。


僕の、心の底からの感謝の言葉。

それを聞いたリゼットは、一瞬、きょとんとした後、今日一番の、太陽のような笑顔で、僕の手を、強く、強く、握り返した。


「うん!私とアルトが一緒なら、なんだってできるんだから!」。


夕日が、僕たち二人を、優しく包み込んでいく。

彼女の炎は、いつだって、僕の心の、一番近くで、温かく、そして、力強く、燃えている。

僕の、最高のヒロイン。

僕だけの、炎の魔法戦士。

その、当たり前だったはずの事実が、今日のこの、特別な一日を経て、僕の心に、深く、そして、永遠に、刻み込まれたのだった。

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