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【変神(ヘンシン)】で俺の考えた最強ヒロインをプロデュース!…したはずが、彼女たちの熾烈な争奪戦のターゲットになってました!?  作者: のびろう。
第10章 湯けむりは恋の香り!電撃お姉さんは征服がお好き!?

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どきどき☆同棲生活、始まります!?

あの、恋と湯けむりと勘違いが渦巻いた波乱の温泉旅行から、数日が過ぎた。

王都騎士団養成学院にある僕の工房は、表向きは、いつもの日常を取り戻していた。

床には、僕の殴り書きした数式が散らばり、机の上には、半田ごてと用途不明の機械部品が、美しいカオスを形成している。

そう、表向きは。


その日、僕が新しい変身シークエンスにおける、マナ粒子の相転移に関する論文をまとめていると、工房の扉が、何の予告もなく、爆発するような勢いで開かれた。


「おっはよー、アルト!朝食、持ってきたわよ!」


そこに立っていたのは、いつもの太陽。リゼット・ブラウンだ。だが、今日の彼女は、いつも以上に戦闘的だった。その手にしたバスケットからは、焼きたてのクロワッサンの香ばしい匂いが、まるで宣戦布告の狼煙のように立ち上っている。


「主殿!朝餉の支度は、妻たる拙者の務め!昨夜のうちに仕込んでおいた、特製の『愛情おにぎり』を、ささ、あーん…」

僕の背後の天井から、音もなく逆さまにぶら下がってきたのは、もちろん犬神菖蒲君だ。その手には、なぜかハートの形をした、いびつなおにぎりが握られている。


「二人とも、朝から騒がしいわね。プロデューサーの集中力を削ぐ行為は、非論理的だと何度言えば…」

窓辺で腕を組み、やれやれと溜め息をつくのは、氷の令嬢、クラウディア。


「あらあら、うふふ。皆さん、朝からとってもお元気ですね」

そんなカオスな空間に、淹れたてのハーブティーを運んでくるエミリアさんの姿は、もはや戦場に舞い降りた天使だった。


そう。これが、僕の日常。

…だったはずなのだ。今日、この瞬間までは。


工房の、吹き飛んだ扉の残骸の向こう。

そこに、一人の、見慣れない、しかし、見覚えのある美女が立っていた。

流行りのフリルが付いたブラウスに、身体のラインを強調するタイトスカート。その手には、明らかに数泊分の荷物が詰め込まれた、巨大な旅行鞄。

頬を染め、もじもじとしながらも、その瞳には、確かな決意の光を宿している。


悪の組織「どきどき☆世界征服同盟」の女幹部、ルージュ・ブリッツ、その人であった。


僕と目が合った瞬間、彼女は、びくりと肩を震わせた後、意を決したように、ずかずかと工房の中へと入ってきた。そして、僕の目の前で、ピタリと足を止めると、顔を真っ赤にしながら、ほとんど叫ぶように、こう言ったのだ。


「ま、魔王様の命令で、あんたを監視(という名のお近づき)することになったわ! きょ、今日から、ここに住むんだから、感謝しなさいよね!」


………しーん。

時が、止まった。

リゼットが手にしていたバスケットが、ことり、と床に落ちる。

天井からぶら下がっていた菖蒲君が、ぽかんと口を開けたまま、固まった。

クラウディアの、氷のポーカーフェイスに、初めて、明確な亀裂が走った。


そして、次の瞬間。


「「「「なんですってーーーっ!?」」」」


リゼット、クラウディア、菖蒲の、三人の絶叫が、僕の工房を、いや、学院の南棟全体を、激しく揺るがした。

その地鳴りのような叫び声の中、ただ一人、エミリアさんだけが、「まあ、お友達が増えるのですね。うふふ」と、のんきに微笑んでいた。


そして、僕はといえば。

この、あまりにも突拍子もない申し出に対し、僕の天才的頭脳は、極めて冷静に、そして、どこまでも合理的な結論を弾き出していた。


(なるほど。新たな研究サンプルが、向こうから、しかも住み込みという最高の観測環境で、提供される、と。これは、僕の『変神』理論の発展にとって、またとない機会だ。実に、合理的だ)


僕が、一人で納得して頷いていると、リゼットが、わなわなと震える指で、僕とルージュを交互に指差した。

「あ、アルト!? なんで、あんたは、そんなに平然としてるのよ!? この、ダイナマイト女を、ここに住まわせるなんて、絶対に、絶対に許さないんだから!」


こうして、プリズム・ナイツの工房は、五人目の、悪の組織の幹部という、とんでもない肩書を持つヒロインを迎え、僕の平穏と、ヒロインたちの仁義なき戦いは、さらにカオスなステージへと、突入していくのであった。



新しく始まった、五人+一人(僕)の同棲生活。

それは、僕の科学的予測を、遥かに超えた、混沌と、そして、糖度過多な日常の幕開けだった。


台風の目となったのは、もちろん、新参者のルージュだ。

彼女は、魔王様の命令という大義名分を盾に、ありとあらゆる手段で、僕へのアプローチを仕掛けてきた。

その戦術は、典型的な『ツンデレデレデレ』。

好き、という言葉こそ口にしないものの、その態度は、誰の目にも明らかだった。


【ケース1:お料理対決と、花嫁修行の成果】


「ふんっ、別に、あんたのために作ったわけじゃないんだからね! 世界征服のための、兵站へいたん管理能力を、試していただけなんだから!」


そう言って、ルージュが僕の前に差し出したのは、完璧な半熟具合のオムライスだった。ケチャップで、不器用なハートマークが描かれている。

そのプロの料理人顔負けの腕前に、一番衝撃を受けていたのは、リゼットだった。


「なっ…!こ、このふわとろ具合…!それに、このデミグラスソースの隠し味…赤ワインと、チョコレート…!?くっ、なんて女子力の高い…!」

「ふふん、当然よ。アタシは、いずれ世界を支配する女。その夫となる男の胃袋を掴むくらい、できて当然なんだから!」

「誰があんたの夫ですってー!アルトの胃袋は、私のパンが、ずーっと昔から掴んでるの!」


リゼットは、対抗するように、僕の口元に、焼きたてのメロンパンをぐいぐいと押し付けてくる。

(意外だった。ルージュ君の家庭科スキルは、極めて高いレベルにある。悪の組織では、幹部に花嫁修行が義務付けられているのだろうか。興味深い組織文化だ)


【ケース2:癒やしのマッサージと、帯電体質】


「あんた、最近、根を詰めすぎよ。その、目の下のクマ…アタシの、美意識に反するわ」


僕が、深夜、研究に没頭していると、いつの間にか背後に立っていたルージュが、僕の肩を、有無を言わさず揉み始めた。


「こ、これは…!」

その指使いは、専門家のように的確で、凝り固まった僕の筋肉を、的確にほぐしていく。

「ふふん、驚いた?これも、捕らえた勇者を尋問するための、高等技術の応用よ。人間の身体のツボなんて、全部お見通しなんだから」

「な、なるほど…」


あまりの心地よさに、僕の意識が、とろりと溶けかけた、その時。

彼女の指先から、パチッ!と、小さな紫電が迸った。


「…む?今、静電気が…」

「きゃっ!ご、ごめんなさい!アタシ、その、感情が高ぶると、魔力が漏れちゃって…」

ルージュの顔が、真っ赤になる。

(なるほど。彼女の雷の魔力は、感情の起伏と密接に連動しているのか。つまり、僕へのマッサージという行為が、彼女の交感神経を刺激し、結果として、微弱な放電現象を引き起こしている、と。これは、新たな変身システムのエネルギー源として、応用できるかもしれない…!)


僕が、真剣な顔で考察していると、工房の扉の隙間から、リゼット、クラウディア、菖蒲の三人が、般若のような形相で、こちらを睨みつけていた。


【ケース3:お風呂と、天然ラッキースケベ】


そして、事件は、起こるべくして起こった。

僕が、一日の疲れを癒やすため、学院の共同浴場へと向かおうとした、その時だった。

廊下の角から、湯上がり姿のルージュが、ひょっこりと顔を出した。その手には、なぜか、僕用の着替えとタオルが、完璧に用意されている。


「あ、アルト!ちょうどよかったわ!さ、一緒に行くわよ!」

「…え?いや、しかし、ここから先は、男湯だが…」


僕の、至極真っ当な指摘に、彼女は、きょとんとした顔で、首を傾げた。

「だから、何よ?あんたを監視するのが、アタシの任務なんだから、お風呂だろうが、トイレだろうが、四六時中、一緒に行動するのは、当然じゃない!」

「いや、論理的に、それはおかしい」

「論理?恋に、論理なんて、関係ないのよ!」


彼女は、僕の腕を掴むと、ぐいぐいと、男湯の暖簾の方へと、引っ張っていく。

その、あまりにも大胆で、あまりにも天然な暴挙に、僕の思考回路も、さすがにショート寸前だった。


「させるかぁぁぁぁっ!」

「破廉恥でござるぞ、この電撃女!」


僕が、なすすべもなく連行されようとした、その瞬間。

リゼットと菖蒲が、左右から飛び出してきて、ルージュに組み付いた。

かくして、男湯の入り口前で、三人の美少女による、壮絶なキャットファイトの火蓋が、切って落とされたのである。



この、ルージュという名の、強力な台風の襲来は、プリズム・ナイツの、既存のパワーバランスにも、大きな影響を及ぼしていた。

特に、その変化が顕著だったのが、クラウディア・フォン・ヴァレンシュタインだった。


彼女は、ルージュの、そのあまりにも直接的で、積極的なアプローチを目の当たりにして、これまでの自分のやり方に、限界を感じ始めていたのだ。


(…まずいわ。あの電撃女、論理も、常識も、一切通用しない。ただ、本能のままに、プロデューサーに迫っている…!)

(それに引き換え、私は…!いつも、憎まれ口ばかり叩いて、素直になれない…!)

(このままでは、私の立てた、『アルト・フォン・レヴィナスを、公私にわたる最高のパートナーとする計画』が、根底から覆されてしまう…!)


危機感を覚えた氷の令嬢は、ついに、自らの殻を破る決意を固めた。


その夜。

僕が一人、工房で星を見ていると、背後から、静かな足音が近づいてきた。

クラウディアだった。


「…レヴィナス。何を、見ているの?」

いつもの、刺々しい口調ではない。どこか、柔らかく、優しい響きがあった。


「ああ、ヴァレンシュタイン君か。少し、宇宙そらの観測をね。星喰らいの一族の残したエネルギーの残滓が、まだ、この宙域に漂っているようだ」

「そう…。大変、なのね」

彼女は、僕の隣に立つと、同じように、星空を見上げた。


しばらくの、心地よい沈黙。

それを破ったのは、彼女の、か細い声だった。


「…ねえ、アルトさん」

「…ん?」

僕は、耳を疑った。

彼女が、僕を、「アルトさん」と呼んだ?しかも、その口調は、まるで…。


僕は、驚いて、彼女の横顔を見た。

月明かりに照らされたその顔は、ほんのりと赤く染まり、碧眼は、不安と、期待の色を浮かべて、潤んでいた。


「あ、あまり、無理しないで…ね。あなたのことが…その…し、心配…だから…」


しどろもどろな、女の子言葉。

それは、彼女が、自分のプライドと、理屈を、全てかなぐり捨てて、絞り出した、勇気の言葉だった。


その、あまりにも不意打ちの、あまりにも可愛らしい一面に、僕の、スーパーコンピューター並みの頭脳が、生まれて初めて、フリーズした。


「…僕の、観測データによれば、君の、言語パターンに、有意な変化が認められる。これは、新たなコミュニケーション戦略の一環と、解釈していいのかな…?」


僕が、なんとか絞り出した、科学者としての100点の回答。

それを聞いた瞬間、クラウディアの顔が、カッと、沸騰した。


「〜〜〜〜〜っ!!な、何でもないわよ!今のは、全部忘れて!この、スーパー朴念仁プロデューサー!!」

彼女は、そう叫ぶと、顔を真っ赤にして、その場から逃げ去ってしまった。


その背中を見送りながら、僕は、初めて、自分の胸に、未知の感情が芽生えていることに、気づいていた。

それは、科学では、決して、解明できない、温かくて、少しだけ、くすぐったい、不思議な感覚だった。


こうして、僕の工房は、五人目のヒロインを迎え、そのカオスと、糖度は、日に日に、限界値を突破していく。

僕の平穏は、完全に、過去のものとなった。

だが、不思議と、嫌ではなかった。

むしろ、この、騒がしくて、温かくて、少しだけ、心臓に悪い日常が、たまらなく、愛おしいとさえ、感じていた。


僕と、僕の愛するヒロインたちが紡いでいく、壮大な勘違いプロデュース・ラブコメディ。

その、次なるステージの幕は、今、確かに、上がったのだ。

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