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【変神(ヘンシン)】で俺の考えた最強ヒロインをプロデュース!…したはずが、彼女たちの熾烈な争奪戦のターゲットになってました!?  作者: のびろう。
第10章 湯けむりは恋の香り!電撃お姉さんは征服がお好き!?

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出会いは湯けむりの中!電撃ラブ・ハプニング!

王都随一と名高い最新スパリゾート『王都 湯楽城』。

その門をくぐった先は、まさに地上の楽園だった。

計算され尽くした庭園には四季折々の花が咲き乱れ、せせらぎの音が心地よいBGMとなって耳をくすぐる。建物は、伝統的な和の様式美と、近代的な機能性が見事に融合した、僕の科学者魂を激しく揺さぶる設計思想で貫かれていた。


そして、僕たちプリズム・ナイツ一行に用意された大部屋は、その豪華絢爛な施設の最上階に位置していた。

襖を開け放てば、王都の街並みを一望できる絶景のバルコニー。部屋の中央には、巨大な檜のテーブルが鎮座し、壁際には、人数分のふかふかの布団が、まるで「さあ、今夜はここで仁義なき戦いを繰り広げるがよい」とでも言いたげに、ずらりと並べられている。


長旅の疲れを癒やすべく、まずは温泉へ。

それが、新たな戦いの火蓋を切る合図になるとも知らずに。



「ふぅ〜〜…極楽、極楽ぅ〜…」


檜の香りが立ち込める、広々とした大浴場。

乳白色の滑らかな湯に身を沈めたリゼットは、年寄り臭いため息と共に、至福の表情を浮かべていた。その肌は、湯気と温泉成分の効果で、早くも薔薇色に染まっている。


「ふふん、見てなさいアルト!この温泉効果で、私のお肌、もっとぷるぷるになっちゃうんだから!今夜、お布団が隣になった時には、そのすべすべお肌で、アルトをメロメロにしてあげるんだから…!」

誰に言うでもなく、しかし、明確なライバルたちへの宣戦布告を、リゼットは高らかに口にする。


その隣で、岩に背を預けて瞑想していたクラウディアが、ぴくりと眉を動かした。

「フン、量より質よ、ブラウンさん。私は、この静寂の中で精神を研ぎ澄まし、心身ともに最高のコンディションを整えるわ。プロデューサーの隣に侍る者として、常に万全の状態であることこそが、最も重要なこと。お肌の水分量などという、表層的なパラメータで一喜一憂するのは、非論理的だわ」

「なっ…!お肌は乙女の命なのよ!この氷頭!」

「何ですって、この脳筋パン娘!」


バチバチと火花を散らす二人を、おっとりとした声が宥める。

「あらあら、うふふ。皆さん、とってもお綺麗ですよ。それより、せっかくですから、皆さんで背中の流しっこをしませんか?」

エミリアさんが、たわわな胸を湯に揺らしながら、聖母のような微笑みを浮かべる。その、あまりにも平和的で、あまりにも魅力的な提案に、リゼットとクラウディアは、ぐっと言葉を詰まらせた。


「これが『裸の付き合い』でござるな!指南書通りでござる!」

一人、目を輝かせているのは菖蒲君だ。彼女は、慣れない温泉に少しのぼせ気味なのか、頬を上気させながら、興味津々といった様子で三人の肢体を観察している。

「リゼット殿の身体は、しなやかで無駄がない。瞬発力に優れた筋肉でござるな。クラウディア殿は、鍛え上げられた体幹と、美しい筋肉の筋が、まさに騎士。エミリア殿は…その…すごい、でござるな…」

「あ、あらあら…」

「な、何よ、ジロジロ見ないでくれる!?」

「えへへ、菖蒲さんも、ちっちゃいけど、きゅっと引き締まっててすごいわよ!」


きゃっきゃうふふ、と。

戦場での勇ましい姿など微塵も感じさせない、年頃の少女たちの、どこにでもある光景。

それは、僕が何よりも守りたかった、平和そのものだった。


湯上がり後、四人は浴衣に着替えると、予約していた併設のスパトリートメントへと向かった。

「極上のオイルで、全身をとろとろにマッサージですって!?」

「アロマの香りで、心も身体もリラックス…論理的にも、効果が期待できるわね」

「わぁ…!なんだか、お姫様みたいです…!」

「これが『すぱとりーとめんと』…!主殿を癒やすための、新たな術を会得するでござる!」


四者四様の期待に胸を膨らませ、個室の扉を開けた彼女たちは――その歩みを、ぴたりと、止めた。

部屋の中央。そこに設えられた施術ベッドに、うつ伏せで横たわる、一人の先客がいたからだ。


(な…)

(これは…)

(まあ…)

(なんと…!)


四人の思考が、完全にシンクロする。

そこにいたのは、神が己の才能の全てを注ぎ込んで創造したとしか思えない、完璧すぎるプロポーションを誇る、一人の妖艶な美女だった。

くびれた腰から、丸みを帯びた豊かな臀部へと続く、黄金比率の曲線美。しなやかに伸びる長い脚。そして、施術のために背中が大きく開いたバスローブから覗く、滑らかな肌は、真珠の光沢を放っている。


やがて、施術師に促され、その美女が、気だるげな仕草でこちらへと身体を向けた。

その瞬間、四人は、第二の衝撃波に襲われる。

大きく開かれた胸元から、こぼれ落ちんばかりの、ダイナマイトボディ。

その、あまりにも圧倒的な質量と、芸術的なまでの造形美に、四人は、声もなく打ちのめされた。


リゼットは、無意識に自分の胸元と、相手のそれとを見比べ、がっくりと膝から崩れ落ちそうになる。

(うぐぐ…!あ、あれは…反則よ…!物理法則を、無視しているわ…!)


クラウディアは、冷静を装いながらも、その碧眼は、嫉妬と驚愕の色で揺れていた。

(…非論理的な質量ね。だが、認めざるを得ない。美しい…!くっ、私としたことが、見惚れてしまうとは…!)


エミリアさんは、ただただ、純粋に感嘆していた。

(まあ…!まるで、豊穣の女神様が、人の姿をとって現れたかのようです…!神様がお創りになった、最高の芸術品ですね…!)


菖蒲君だけが、全く違う角度から、その存在を分析していた。

(あれぞ、指南書にあった『傾国の美女』…!男を惑わし、国をも滅ぼすという、伝説のくノ一かもしれぬ…!主殿には、絶対に近づけてはならぬ相手でござる!)


その美女こそ、悪の組織「どきどき☆世界征服同盟」の女幹部、ルージュ・ブリッツその人であった。

彼女は、後から入ってきた小娘たちを、値踏みするように一瞥すると、心底退屈そうに、ふん、と鼻を鳴らした。


(…なによ、ガキばっかりじゃないの。こんなところに、あの新聞の朴念仁プロデューサーがいるとは思えないわね。まあ、いいわ。まずは、この施設をアタシのモノにして、それから、ゆっくりと料理してあげるんだから)


ルージュと四人の少女たち。

互いの素性も知らぬまま、女としてのプライドと美意識が、静かなスパの個室で、バチバチと激しい火花を散らした。

これから始まる、恋と戦いの嵐の、ほんの序曲だった。



一方、その頃。

僕、アルト・フォン・レヴィナスは、湯着に着替えると、混浴エリアの露天岩風呂へと、足を運んでいた。

もちろん、やましい気持ちなど微塵もない。僕の目的はただ一つ。この施設のメインである、巨大な岩風呂の泉質と、その地熱エネルギーを利用した循環システムの構造を、科学的に解明することにあった。


「ふむ、なるほど。泉質は、ナトリウム-塩化物泉か。含有されるメタケイ酸の量が、規定値の1.5倍を超えている。これが、俗に言う『美肌の湯』の根拠だな。そして、この湯量の豊富さ。源泉から直接引き込んでいるだけでなく、一部を魔力フィルターで浄化し、地熱を利用したヒートポンプで再加熱して循環させている。実に、合理的で、美しいシステムだ…」


僕は、岩風呂の縁に腰掛け、携帯型の防水データ端末に、分析結果を打ち込んでいく。

湯けむりの向こうには、雄大な山々の景色が広がり、滝が岩肌を滑り落ちる音が、心地よく響いている。まさに、最高の研究環境だった。


その、僕の知的探求心を、打ち破る者が現れた。


「きゃっ…!」


可愛らしい、しかし、切羽詰まったような悲鳴。

声のした方を見ると、湯けむりの中から、一人の女性が、ふらりとした足取りで現れた。

燃えるような深紅の湯着を、そのダイナマイトボディにまとわせた、先程、スパでプリズム・ナイツを圧倒した、あの妖艶な美女だった。


どうやら、併設されたミストサウナで、少し長居をしすぎたらしい。その白い肌は上気し、瞳は潤んで、どこか焦点が合っていない。

彼女は、ふらふらと、覚束ない足取りで、僕の方へと近づいてくる。


「だ、大丈夫かい?少し、のぼせてしまったようだね。そこの岩に座って、少し休んだ方が…」

僕が、純粋な善意から声をかけた、まさに、その時だった。

彼女は、僕の目の前で、苔むした岩に足を滑らせ、バランスを崩した。


「きゃあああっ!」

悲鳴と共に、彼女の、豊満な身体が、スローモーションのように、僕の方へと倒れ込んでくる。


僕の、科学者としての思考回路が、超高速で回転を始める。

(対象の質量、倒れ込んでくる角度と速度から、衝突時の衝撃エネルギーを算出…!僕の体幹ならば、受け止めることは可能!だが、問題は、衝突ポイントだ!)

(まずい!このままでは、僕の胸部に、彼女の…彼女の、あの、非論理的な質量を誇る二つの柔らかい半球体が、真正面から激突する軌道だ!)


回避は、不可能。

僕は、覚悟を決めて、歯を食いしばった。


次の瞬間。


むにゅんっ。


という、この世のどんな物理法則でも説明できない、柔らかく、温かく、そして、圧倒的な弾力性を持った感触が、僕の胸板を襲った。

僕の思考が、一瞬、完全に停止する。

鼻腔をくすぐるのは、高級な香油と、女性特有の、甘い香り。

目の前には、上気した白い肌と、深紅の湯着からこぼれ落ちんばかりの、豊かな谷間。


――これが、僕と、ルージュ・ブリッツの、運命の出会いであった。


(な…)

(な、な、な、な…)


ルージュの頭の中は、完全に、真っ白になっていた。

生まれてこの方、十八年間。

悪の組織の幹部として、英才教育を施され、魔術の研鑽と、世界征服の計画立案にのみ、その青春を捧げてきた。

恋愛など、昼ドラの中だけの絵空事。同年代の男と、まともに口を利いたことすらなかった。


そんな彼女が、今。

人生で初めて、見ず知らずの男の、硬い胸板に、その顔と、自慢の胸を、押し付けている。


(こ、これが…『男』…!)


感じたことのない、硬い筋肉の感触。自分とは違う、少しだけ汗の匂いが混じった、不思議な匂い。そして、自分の心臓が、まるで警鐘のように、ドッドッドッと、うるさく鳴り響いている。


(な、ななな、なによ、この胸のどきどきは…!?)

(これが、あの魔王様が言っていた、恋…!?胸がキュンとして、頭が真っ白になるって、これのこと!?)


彼女の、恋に恋する乙女の脳内データベースが、この異常事態を、『恋の始まり』というフォルダに、強制的に分類・保存した。


僕の、どこまでも純粋で、心配そうな声が、彼女の混乱に、さらに拍車をかける。

「だ、大丈夫かい?」


(だ、大丈夫なわけ、ないじゃない…!)

(こ、声まで…なんだか、素敵に聞こえる…!)


ルージュは、羞恥と混乱で、爆発寸前だった。

彼女は、悪の組織の幹部としての、ちっぽけなプライドを奮い立たせ、僕の胸から、弾かれたように身を離した。


「な、なによ! アタシは、この温泉を征服しに来たんだから! あんたなんかに、心配される筋合いは…きゃあ!」


強がって、啖呵を切った、その瞬間。

彼女は再び、苔むした岩に足を滑らせ、今度は、背後にある滝壺へと、美しい放物線を描いて、真っ逆さまに落ちていった。


「しまった!」


僕は、咄嗟に、もちろん腰のポーチに常備している、万能ツールボックスから、小型ワイヤーアンカー射出機を取り出した。

(こういう不測の事態に備え、常に携帯している。ヒーローの、基本だ)


ワイヤーの先端が、ルージュの湯着の帯を、的確に捉える。

僕は、岩に足を固定し、全体重をかけて、彼女の身体が水面に叩きつけられる、その寸前で、見事にキャッチした。


「全く、危ないじゃないか。気をつけるんだ」


ワイヤーに吊られ、宙吊りになったルージュの、すぐ目の前に、僕の顔があった。

逆光と、湯けむりのエフェクト。

そして、心からの心配を込めた、優しい声。

それは、彼女が今まで見てきた、どんな昼ドラのヒーローよりも、格好良く、頼もしく見えた。


(ヒーロー補正、発動。当社比、3割増しである)


僕の、ヒーロー然とした(本人無自覚)行動と、吊り橋効果のダブルコンボが、ルージュの乙女心を、完全に、撃ち抜いた。


(た、助けられた…!)

(こ、この男に…!二度も…!)


彼女は、びしょ濡れのまま、ワイヤーに吊られながら、僕の顔を見上げて、叫んだ。

(礼なんて、言えるもんですか!悪の組織の幹部が、敵かもしれない男に!でも、このままじゃ、アタシのプライドが…!)

(そうだわ!悪の組織として、敵の情報を聞き出すのは、当然の権利よ!)


「あ、あんた! 名前を、教えなさい!」


その声は、震えていた。

それは、怒りでも、恐怖でもない。

生まれて初めての、恋のときめきに、だった。

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