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【変神(ヘンシン)】で俺の考えた最強ヒロインをプロデュース!…したはずが、彼女たちの熾烈な争奪戦のターゲットになってました!?  作者: のびろう。
第9章 黒き刃は星影を断つ! 恋する忍者の猪突猛進アプローチ!?

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奥義・黒百合乱舞! 私たちの想い、重ねて、断ち斬る!

僕たちプリズム・ナイツが、『敗北』を喫してから、数時間が過ぎた。

戦場となった村から少し離れた森の中。僕が即席で設営した野営地には、重く、息が詰まるような沈黙が支配していた。焚き火の炎が、ぱちぱちと虚しく爆ぜる音だけが、やけに大きく響いている。


誰も、口を開かない。

リゼットは、膝を抱え、ただじっと、揺れる炎を見つめている。その瞳から、いつもの太陽のような輝きは消え失せ、悔しさと無力感の影が落ちていた。

(私の炎が…通用しなかった…。アルトがくれた、この力で、みんなを守るって決めたのに…私、全然、強くなんかなかった…)


クラウディアは、愛剣の手入れをしながらも、その手は何度も止まっていた。その表情は、氷のように冷たく、固い。だが、それは、砕け散ったプライドを、必死に糊塗するための、虚勢の仮面に過ぎなかった。

(私の剣も、私の騎士としての誇りも…あの絶対的な力の前に、あまりにも無力だった。これでは、彼の隣に立つ資格など…ない)


エミリアは、傷ついた小鳥を手当てするように、そっとリゼットの肩にショールをかけていた。その顔には、聖母のような微笑みが浮かんでいる。だが、その翠の瞳の奥には、自らの力の無力さを嘆く、深い悲しみの色が滲んでいた。

(わたくしの癒やしの力では、魂を喰らうあの怪物を止めることはできませんでした…。また、わたくしは、何も救えなかった…)


そして、菖蒲は、少し離れた木の幹に背を預け、顔を俯かせている。その小さな拳は、血が滲むほど、固く、固く握りしめられていた。

(主殿に…あのような屈辱的な命令を下させてしまった…。全ては、この菖蒲の力が、至らぬばかりに…。忍びとして、主を守れぬなど…万死に値するでござる…)


四者四様の、絶望。

チームとして初めて味わった完膚なきまでの敗北は、若き英雄たちの心に、深く、冷たい楔を打ち込んでいた。このままでは、心が折れる。チームが、空中分解しかねない。


僕は、司令室代わりのテントから出ると、そんな彼女たちの中心に、静かに立った。

そして、携帯型の投影機を起動させ、焚き火の上の空間に、三体のプレデターの解析データを、ホログラムとして映し出す。


「…作戦会議を始める」


僕の、どこまでも冷静な声に、四人が、はっと顔を上げた。


「作戦会議…ですって?アルト、あんた、まだ戦うつもりなの!?あんな奴らに、どうやって…!」

リゼットが、悲痛な声で叫ぶ。

僕は、そんな彼女の心の叫びを、真正面から受け止めて、静かに、しかし、力強く告げた。

「ああ、戦うさ。そして、必ず勝つ」


僕の瞳には、一切の迷いも、諦めもなかった。

あるのは、科学者としての、絶対的な確信の光だけ。


「君たちは、確かに負けた。だが、ヒーローとは、負けない者のことじゃない。負けても、何度でも立ち上がり、最後に勝利を掴む者のことだ。そして、僕の計算によれば、僕たちには、その『最後の勝利』を掴むための、明確な解法が、一つだけ残されている」


僕は、ホログラムの映像を切り替える。そこに映し出されたのは、三体のプレデターの身体の中心で、禍々しく脈動する、三つの『コア』だった。


「奴らの弱点は、間違いなく、この『核』だ。だが、君たちの報告通り、この核は、普段は三体の敵が互いを守り合うように、不可視のエネルギー障壁で覆われている。並大抵の攻撃では、傷一つつけられない」

「では、どうするというのよ、レヴィナス。論理的な打開策があるとは思えないわ」

クラウディアが、冷ややかに、しかし、わずかな希望を求めるように、問いかけてくる。


僕は、ニヤリと、不敵な笑みを浮かべた。

「あるさ。どんな完璧な防御システムにも、必ずバグは存在する。障壁を無力化する唯一の方法…それは、炎、氷、そして魂。三つの異なる属性の超高エネルギーを、寸分の狂いもなく、0.01秒の誤差もなく、同時に、三つの核へ叩き込むことだ」

「同時に…ですって!?そんなこと、どうやって…!」


三人が息を呑む。

僕は、ゆっくりと、木の幹に寄りかかる、黒装束の少女へと、視線を向けた。


「それを可能にする鍵は、君だ、菖蒲君」

「…拙者…で、ござるか?」

驚きに目を見開く菖蒲に、僕は、プロデューサーとしての、絶対的な信頼を込めて、頷いた。


「君の、あの忍術…幻術を使って、敵を撹乱する『奥義・黒百合乱舞』。あれを、僕のプリズム・チャームの力で、最大限に増幅させる」

僕の作戦は、奇策。いや、僕の科学と、彼女たちの勇気が融合して初めて成立する、奇跡の戦術だった。

「増幅させた幻術で、プレデターたちに、『四人のプリズム・ナイツが、同時に、バラバラの場所から必殺技を放つ』という幻を、見せる。奴らが、その幻に惑わされた、ほんの一瞬の隙。その隙に、君が生み出した、本物の『分身』が動く!」

「分身…?」

「ああ。炎の力を宿した分身、氷の力を宿した分身、そして、癒やしの光を宿した分身だ。その三体の分身が、三方向から、同時に、奴らの核を撃ち抜く!」


僕の作戦を聞き終えた野営地は、再び、沈黙に包まれた。

だが、先程までの、絶望の沈黙ではない。

驚愕と、そして、にわかには信じがたい、という困惑の沈黙だった。


最初に、異を唱えたのは、クラウディアだった。

「…待ちなさい、レヴィナス。その作戦は、あまりにも非論理的だ。第一に、他者の魔力を分身に宿らせるなど、前代未聞よ。第二に、それほどの精密な連携、今の私たちに、本当に可能だとでも?」

「そうよ、アルト!それに、なんであやめさんが中心なのよ!私だって、まだ戦えるんだから!」

リゼットも、嫉妬と対抗心を隠そうともせずに、食って掛かる。


そうだ。それでいい。

その、バラバラの想い。それこそが、彼女たちの、今の心の状態だ。

僕は、静かに、彼女たちに告げた。

「その通りだ。今の君たちでは、この作戦の成功確率は、0.1%にも満たないだろう」

「「なっ…!」」

「この作戦の成功に不可欠なのは、ただ一つ。君たち四人の、心を、完全に、一つにシンクロさせることだ。互いを信じ、互いの力を認め合い、一つの目的のために、魂を重ね合わせる。それができなければ、僕の理論も、ただの机上の空論で終わる」


僕は、四人の顔を、一人一人、見渡した。

「だが、僕は信じている。君たちなら、できると。君たちの心には、僕などには到底計り知れない、奇跡を起こす力が眠っている。そうだろ?プリズム・ナイツ」


僕の言葉に、四人は、ぐっと、押し黙る。

悔しさ、嫉妬、プライド、そして、それでもなお、諦めきれない、ヒーローとしての、想い。

様々な感情が、彼女たちの胸の中で、渦を巻いていた。


その、硬直した空気を、破ったのは、エミリアの、か細く、しかし、凛とした声だった。

「…わたくしは、やりたいです」

彼女は、ゆっくりと立ち上がり、リゼットとクラウディアの、それぞれの手に、そっと、自らの手を重ねた。

「わたくしは、もう、誰も悲しむ姿を見たくありません。アルトさんが、信じてくださるなら…わたくしは、どんな奇跡でも、信じたいです」


エミリアの、純粋な想いが、伝染する。

リゼットが、クラウディアが、顔を見合わせる。

そうだ。私たちは、何のために戦っている?

自分のためか?プライドのためか?

違う。

アルトを、仲間を、そして、名も知らぬ誰かの、ささやかな日常を守るために、私たちは、この力を手にしたんじゃないか。


「…わかったわ」

リゼットが、固く、拳を握りしめる。

「クラウディアさんの力、借りるわよ!私の炎だけじゃ、勝てないから!」

「…フン。ようやく、自分の非力さを認めたようね、ブラウンさん」

クラウディアが、憎まれ口を叩きながらも、その口元には、かすかな笑みが浮かんでいた。

「ええ、いいわ。私の氷も、あなたの炎の勢いがなければ、ただの氷塊に過ぎない。…あなたの力、認めます」


初めて、二人が、互いの力を認め合い、その手を、固く握り合った。

その光景を、菖蒲が、ただ、じっと見つめている。

「…拙者は…」

彼女の、迷いの声に、リゼットが、クラウディアが、そしてエミリアが、同時に、優しく微笑みかけた。


「菖蒲さんの、その速さがなければ、私たちは、敵に近づくことすらできないわ」

「ええ。あなたの忍術こそが、この作戦の要です」

「わたくしたちの心、菖蒲さんに、預けますです」


三人の、温かい想い。

菖蒲の、黒い瞳から、一筋の、熱い雫がこぼれ落ちた。

「…皆の者…!この犬神菖蒲、この御恩、生涯、忘れませぬ!」

彼女は、涙をぐいっと拭うと、僕に向き直り、力強く、頷いた。

「主殿!お任せくだされ!この菖蒲が、皆の想いを束ね、必ずや、勝利への道を、切り開いてみせまする!」


四つの心が、確かに、一つになった瞬間だった。

僕の脳内に、勝利の方程式が、完璧な形で、描き出されていく。

「よし…!ならば、特訓開始だ!僕のヒーロープロデュース、第二幕の始まりだぞ!」



そして、再び、決戦の地。

僕たちプリズム・ナイツは、三体のプレデターたちの前に、再び、立っていた。

その瞳に、もはや、敗北の影はない。


「来たか、愚カナル者ドモ。再ビ、絶望ヲ味ワイニカ」

プレデターたちが、嘲笑う。

だが、四人の少女たちは、動じない。

その中心に立つ、シャドウ・ストライダー――菖蒲が、静かに、一歩前に出た。


「お見せします、主殿!そして、皆!私たちの、心の術を!」


菖蒲が、印を結ぶ。

彼女の身体から、漆黒の魔力が、溢れ出した。だが、それは、ただの黒ではない。

その中心に、リゼットの赤、クラウディアの青、エミリアの緑。三色の輝きが、確かに、宿っていた。


「プリズム・ニンジャアーツ、解放!――奥義・黒百合乱舞!」


刹那、戦場が、無数の、幻の黒百合の花で、埋め尽くされた。

美しく、そして、どこか物悲しい、幻惑の術。

プレデターたちの感覚が、完全に狂わされる。


『惑ワサレルナ!幻術ダ!』

だが、奴らが、そのことに気づいた時には、もう、遅い。

咲き乱れる黒百合の、影の中から、三つの閃光が、同時に、迸った。


一体は、紅蓮の炎をその身にまとい。

一体は、絶対零度の氷をその刃に宿し。

一体は、慈愛の光をその拳に込めて。

菖蒲の作り出した、三人の『分身』が、寸分の狂いもなく、三体のプレデターの懐へと、潜り込んでいた。


「「「喰らいなさいっ!!」」」

「「「プリズム・ニンジャアーツ! 三位一体・幻夢泡影斬げんむほうようざん!」」」


三つの、異なる属性の力が、三つのコアを、同時に、完璧に、撃ち抜いた。

バリィィィィィィンッ!

ガラスが砕け散るような、甲高い音と共に、プレデターたちを覆っていた、不可視のエネルギー障壁が、木っ端微塵に砕け散った。


『ナ…ニ…!?』


初めて、プレデターたちの声に、焦りの色が浮かぶ。

そして、その、無防備になった三つのコアの前に、本体である、シャドウ・ストライダー――菖蒲が、音もなく、現れていた。


彼女の、漆黒の小太刀。

その刀身に、リゼットの炎が、クラウディアの氷が、エミリアの光が、渦を巻くように収束していく。

黒い刃が、虹色の、希望の輝きを放つ。


「私たちの、想いを重ねて…!」


菖蒲は、天高く、跳躍した。

その姿は、闇夜を切り裂く、一筋の、流星。


「その、歪んだ運命ごと…断ち斬る!」


振り下ろされた、虹色の刃。

それは、一つの、完璧な軌跡を描き、三つのコアを、一閃のもとに、斬り裂いた。


「―――これで、終わりでござる!」


『ギ…ギ…ギャアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!』


プレデターたちは、断末魔の絶叫と共に、その身体を内側から崩壊させ、光の粒子となって、消滅していった。

後に残されたのは、死の静寂を取り戻した村と、朝日を浴びて、力強く立つ、四人の英雄たちの姿だけだった。


僕たちの、プリズム・ナイツの、完全なる勝利の瞬間だった。

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