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【変神(ヘンシン)】で俺の考えた最強ヒロインをプロデュース!…したはずが、彼女たちの熾烈な争奪戦のターゲットになってました!?  作者: のびろう。
第9章 黒き刃は星影を断つ! 恋する忍者の猪突猛進アプローチ!?

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星を喰らう者たちの襲来! 緊急指令、プリズム・ナイツ出撃せよ!

僕の工房に、黒き刃こと犬神菖蒲が仲間(本人は妻のつもり)になってから、数日が過ぎた。

彼女の猪突猛進なアプローチは、リゼットとクラウディアという二つの大国の間に、新たな火種を撒き散らし、僕の周囲のラブコメ偏差値を危険なレベルにまで引き上げていたが…その裏で、彼女は僕の依頼を忠実にこなしてくれていた。


その日、朝霧がまだ王都を包む早朝。音もなく僕の背後に現れた菖蒲は、恭しく巻物を差し出した。

「主殿。お頼まれしておりました、先日の一件に関する調査報告でござる」

「早いな。さすがは犬神一族の情報網だ」


巻物を広げた僕は、そこに記された内容に、思わず息を呑んだ。

そこには、僕たちの想像を遥かに超えた、絶望的な事実が記されていたからだ。


「…なんだ、これは…」


巻物には、王都周辺の地図が描かれ、その数か所に、禍々しいほどの朱色で×印がつけられている。


「王都の南西に三つ、北東に二つ…。ここ数日の間に、同様の『生命力枯渇現象』が発生した村々でござる」

「五つの村が、同時にか…!」

「はい。いずれの村も、生存者はゼロ。家畜も、草木も、大地そのものも、まるで魂を根こそぎ吸い尽くされたかのように、死の土地へと変貌していたとのことにござります」


その報告は、僕の立てていた最悪の仮説を裏付けるものだった。

僕たちが遭遇したあのプレデターは、単独犯などではない。組織化され、明確な目的を持って、この星の生命マナを蝕む、侵略者。


「そして、これが、生き残った僅かな目撃者からの証言をまとめたものでござる」


菖蒲が差し出したもう一枚の紙には、三体の異形の似顔絵が描かれていた。

一つは、灼熱のマグマのような身体を持つ、炎の巨人。

一つは、絶対零度の吹雪をまとった、氷の怪物。

そしてもう一つは、人の魂魄とおぼしきものを啜る、影のような魔人。


「間違いない…」


僕は、悪の組織ファイルに記された、あの宇宙的規模の寄生生命体の名を、唇の端で呟いた。

「――『星喰らいの一族』…!」



奴らが、本格的な『捕食』を開始したのだ。


僕の工房の空気が、一瞬にして凍り付く。

ちょうど朝食のパンを運んできたリゼットも、報告書を読みに来ていたクラウディアも、お茶の準備をしていたエミリアも、その報告内容を聞いて、顔を青くしていた。


「そんな…じゃあ、この前のは、ただの一匹じゃなかったってこと…?」

「複数の個体が、同時に、計画的に村を…なんてことだわ…」

「これ以上、悲しいことが増えるのは、いやです…」


三人のヒロインたちの声が、不安に震える。

事態は、僕たちが思っていた以上に、深刻だった。

僕が次の手を思考していると、工房の扉が、今度は礼儀正しくノックされた。


「アルト・フォン・レヴィナス様はいらっしゃいますか! 王宮からの勅使にございます!」


現れたのは、王家の紋章を掲げた近衛騎士だった。

その表情は、国の危機を前にした、悲壮な覚悟に満ちている。


「国王陛下が、プリズム・ナイツの皆様を、緊急召集されております!至急、ご登城を!」



王城の、玉座の間。

そこは、僕がこれまでに経験したことのない、荘厳で、そして、張り詰めた空気に満ちていた。

磨き上げられた大理石の床。天を突くようにそびえる円柱。壁には、歴代の王たちの肖像画が掲げられ、僕たちを見下ろしている。

その最奥。巨大な玉座に、この国の王が、深く腰掛けていた。

齢六十は超えているだろうか。白くなった髪と、深く刻まれた皺が、その治世の長さを物語っている。だが、その瞳に宿る光は、未だ衰えを知らず、王としての威厳と、民を憂う深い苦悩の色をたたえていた。


僕たち五人は、王の御前で、深く膝をついた。


「…面を上げよ、若き英雄たちよ」


王の、低く、しかし、よく通る声が、玉座の間に響き渡った。


「プリズム・ナイツ。君たちの活躍は、先の『王都解放戦』にて、この国中の民が知るところとなった。本来であれば、その功績を称え、盛大な祝宴を開くべきところだが…」

王は、そこで言葉を切り、苦渋に満ちた表情で続けた。

「…国は今、存亡の危機にある」


王の手元にある報告書は、おそらく、菖蒲がもたらしたものと同じ内容なのだろう。

「『星喰らいの一族』…銀河の外より飛来し、星を喰らうという、伝説上の存在…。それが、今、現実の脅威として、我らの王国を蝕んでいる」



「騎士団の精鋭を、既に対策本部として派遣した。だが、敵の能力は、我らの騎士のそれを遥かに凌駕している。このままでは、王都が死の土地と化すのも、時間の問題であろう…」


玉座の間に、重い沈黙が落ちる。

王は、ゆっくりと玉座から立ち上がると、僕たちの目の前まで、歩み寄ってきた。

そして、その威厳に満ちた瞳で、僕たち一人一人の顔を、順番に見つめ、言った。


「…アルト・フォン・レヴィナス。そして、三色の輝きをまとう乙女たちよ。…いや、プリズム・ナイツよ」

王は、僕たちの前で、深く、深く頭を下げた。

一国の王が、だ。


「無礼を承知で、願う。どうか、この国を…この国の民を、救ってはくれまいか。もはや、君たちこそが、この国の…最後の希望なのだ」


王の、魂からの叫び。

それは、どんな命令よりも、どんな報酬よりも、僕たちの心を、強く、強く揺さぶった。


リゼットが、クラウディアが、エミリアが、そして菖蒲が、顔を見合わせる。

その瞳に、もう、不安の色はない。

あるのは、この国最後の希望として、全てを背負うという、ヒーローとしての、絶対的な覚悟の光だった。


代表して、僕が一歩前に出る。

「御意。国王陛下。我々プリズム・ナイツ、その勅命、謹んでお受けいたします」

僕の言葉に続き、四人の少女たちが、声を揃えた。


「はい!必ず、みんなを守ってみせます!」

「王の勅命、そして、プロデューサーの命令とあらば。騎士の名誉にかけて」

「これ以上、悲しむ人が増えませんように…わたくしたちが、光になりますです…!」

「主殿の、そして王の御命令とあらば、この犬神菖蒲! 万死に値すとも、必ずや完遂してみせまする!」


四者四様の、決意の言葉。

それを聞いた王は、顔を上げ、その目に、かすかに涙を浮かべながら、力強く、頷いた。

「…頼んだぞ、若人たちよ」


こうして、僕たちプリズム・ナイツは、王国公認の討伐部隊として、人類の存亡を懸けた戦いへと、正式に出撃することになったのだ。



王都の城門を、一台の、物々しい紋章が刻まれた軍用の馬車が出ていく。

見送る者は、いない。今回の任務は、民衆に無用な不安を与えぬよう、極秘裏に進められるからだ。


決戦の地へと向かう、馬車の中。

極度の緊張感が支配している…かと思いきや。

そこでは、いつも通りの、僕たちの日常が繰り広げられていた。


「主殿。長旅でお疲れでござろう。ささ、拙者の愛のこもった兵糧丸を、あーん…」

「あーん、じゃないわよ!そんなカチカチのものより、私の作った、愛情たっぷりふわふわサンドイッチの方が、絶対に美味しいんだから!はい、アルト、あーん!」

「二人とも、少しは静粛にしたまえ。今は、これから始まる戦いに向けて、精神を集中させるべき時だ。そのような非論理的なことで、プロデューサーの思考を乱すなど、言語道断だ」


菖蒲が差し出す黒い玉と、リゼットが差し出すサンドイッチを前に、僕がどうしたものかと固まっていると、クラウディアが、やれやれと首を振って二人を諌める。


「まあまあ、皆さん、落ち着いてくださいです。わたくし、飲み物も用意してきましたから、まずは、ゆっくり…」

エミリアが、おっとりと宥めようとするが、もはや火に油。


「クラウディアさんだって、さっきからアルトの横顔、じーっと見てるじゃない!」

「なっ…!み、見ていないわ!私はただ、彼の作戦司令官としてのコンディションを、観察していただけだ!」

「主殿の横顔を愛でる権利は、妻たる拙者にのみ許された特権でござる!抜け駆けは許さぬ!」

「あらあら、うふふ…」


四人の少女たちが、僕を挟んで、ぎゃあぎゃあと火花を散らす。

僕はといえば、そんな彼女たちの喧騒をBGMに、膝の上のノートパソコンに表示された敵の予測データを、ただ黙々と分析していた。

…もはや、このカオスな状況にも、慣れてしまった自分が少し怖い。


だが。

そんな、コミカルなやり取りも、馬車がある地点を通過した瞬間、ぴたりと、止んだ。

窓の外の風景が、一変したのだ。

緑豊かだったはずの大地が、生命の色を失い、灰色と黒だけの、死の世界へと変わっていた。

最初の、犠牲になった村だった。


馬車の中の空気が、一瞬にして、戦場のそれへと変わる。

リゼットは、サンドイッチを、ぎゅっと握りしめた。

クラウディアは、腰の剣の柄に、そっと手を置いた。

エミリアは、胸の前で、静かに十字を切った。

そして、菖蒲は、僕の隣で、その黒い瞳に、冷たい怒りの炎を宿していた。


「…許せない」

誰からともなく、漏れた呟き。


そうだ。

僕たちの、ふざけ合っていた日常。

僕たちの、譲れない想い。

僕たちの、愛するこの世界。

それを、理不尽に踏みにじる、絶対的な悪。


これから始まるのは、ただの戦いではない。

僕たちが、ヒーローとして、守りたかった、その全てを懸けた、聖戦なのだ。

馬車は、死の大地を、決戦の地へと、ただ静かに、進んでいった。

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