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【変神(ヘンシン)】で俺の考えた最強ヒロインをプロデュース!…したはずが、彼女たちの熾烈な争奪戦のターゲットになってました!?  作者: のびろう。
第8章 絶望の戯曲と希望のプリズム

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逆襲のプリズム! 届け、私たちの本当の輝き

「そんなこと…私たちが、絶対に許さない!」


三人の少女――プリズム・ナイツの宣戦布告が、絶望に沈む王都にこだました。

それは、あまりにもか細く、しかし、決して折れることのない、決意の響きだった。


「ふはははは! 許さない、か! 素晴らしい台詞だ! 敗北を知った弱者が、それでもなお立ち上がる! それこそが、悲劇の観客カタルシスを最も沸かせるのだよ!」


黄金の鎧をまとった狂気の演出家、カミヤは、心底楽しそうに肩を揺らす。

彼は、右手を軽く掲げた。それが、開演の合図だった。

彼の指揮に呼応し、王都を埋め尽くす魔獣と魔人兵の軍勢が、一斉に牙を剥き、プリズム・ナイツへと殺到する。


「リゼット、左翼を! クラウディアさん、右翼をお願いします!」

「言われずとも!」

「任せて!」


エミリアの的確な指示に、リゼットとクラウディアが即座に反応する。

セーラー・フレアが炎の矢となって迸り、ナイト・ブリザードが蒼い流星となって駆ける。

ヒーリング・エンジェルは、その場に残って両腕を広げ、負傷者たちを守るように、優しい翠の光の結界を展開した。

三人の連携は、以前とは比べ物にならないほどに、洗練され、力強くなっている。

だが――。


「甘い!」


カミヤ本人が、黄金の残像を残してフレアの眼前に移動していた。

彼の放つ拳は、先日の模擬戦の時のように、単なる衝撃波ではない。憎悪そのものを物理的な力に変えたかのような、禍々しいオーラをまとっている。


「フレア・ナックル!」

リゼットが渾身の炎の拳を叩き込むが、カミヤはそれを黄金の腕甲で意にも介さず受け止め、逆にその腕を掴み取った。


「なっ…!?」

「光が強ければ、その分、生まれる影もまた濃くなる。君たちのその正義感、闘争心! それこそが、この私を、そして、この悲劇の舞台を、より一層輝かせるのだ!」


カミヤは、掴んだリゼットの身体を、巨大なハンマーのように振り回し、救援に駆けつけようとしたナイト・ブリザードへと叩きつけた。


「きゃあっ!」「くっ…!」


二人はもんどりうって地面を転がり、変身が解けそうになるほどのダメージを負う。

これが、民衆の「期待」と「注目」を魔力に変換するアーティファクト、『悲劇の王冠』の真の力。今の彼は、王都中の悪意と絶望をその身に受け、先日の模擬戦とは比較にならぬほどの力を得ていた。


『――二人とも、聞こえるか!』


その時、三人の耳にはめられた、小さなイヤリング型の通信機から、焦りと、しかし、決して諦めてはいない、力強い声が響いた。

声の主は、もちろん、僕、アルト・フォン・レヴィナス。

王都を見下ろす時計塔の最上階。そこに設置した即席の司令室で、僕は無数のモニターに映し出された戦況データを、超高速で分析していた。


「まずいな…敵のエネルギー出力、予測値を150%も上回っている…!民衆の負の感情を、リアルタイムで吸収・変換しているのか…!なんて悪辣なシステムだ…!」

だが、感心している暇はない。

モニターの向こうで、愛するヒロインたちが傷ついている。プロデューサーとして、これ以上の失態は許されない。


「だが、どんなシステムにも、必ず攻略法はある…!三人とも、プランBに移行する!僕の合図を待て!」

僕の言葉に、倒れ伏していたリゼットとクラウディアが、互いに顔を見合わせ、頷く。

そうだ、僕たちは、もう一人じゃない。


「何度やっても、同じことだ! さあ、絶望の淵で、さらに美しい悲鳴を聞かせておくれ!」

勝ち誇ったカミヤが、二人にとどめを刺すべく、その黄金の腕に、最大級のエネルギーを収束させ始めた。

その時だった。


『――クラウディアさん! 今だ!』


僕の、雷鳴のような号令が飛ぶ。

クラウディアは、唇の端を吊り上げて、不敵に笑った。

「ええ、待っていましたわ、プロデューサー!」


彼女は、傷ついた身体に鞭打ち、カミヤの死角へと、氷の刃となって舞う。

その動きは、先程までとは比較にならないほどに、速く、鋭い。

カミヤが反応する、そのコンマ数秒の隙を、僕は見逃さない。


「転送プログラム、起動! 対象、ナイト・ブリザード! エーテル体再構築、座標固定! 行けッ!」


僕が司令室のコンソールを叩くと、クラウディアの眼前に、空間が歪むほどの光が迸った。

光の中から、二振りの剣が、まるで彼女の手に吸い寄せられるかのように、実体化する。

刀身は、万年氷を削り出して作ったかのように透き通る、美しいクリスタル・ブレード。

絶対零度の連撃を可能にする、ナイト・ブリザード専用ウェポン。


「その名は――『ブリザード・エッジ』!」


僕の命名と同時に、クラウディアは、その両手に、二振りの氷の剣を、完璧に掴み取っていた。

水を得た魚。いや、吹雪を得た、氷の女神だった。


「さあ、第二楽章の始まりですわよ、演出家殿!」

彼女の身体が、回転する。

それは、もはや剣技というよりも、死の舞踏。

二振りの剣が、無数の蒼い残像を描き、カミヤの黄金の鎧に、嵐のような斬撃を叩き込んでいく。


キィン! ギャリリリリッ! ガガガガガッ!


火花が散り、甲高い金属音が、悲鳴のように連続する。

先程までは、傷一つつけられなかったはずの、絶対的な防御力を誇る鎧。

その表面に、初めて、無数の、浅いが、しかし、確かな亀裂が刻み込まれていく。


「なっ…馬鹿な!? 私の完璧な鎧に、傷が…!?」

カミヤの、初めて見せる動揺。

クラウディアは、攻撃の手を緩めない。

「あなたの鎧が絶対なのではありません! 私の剣が、あなたの想像を超えただけのこと!」

彼女の双剣は、もはやカミヤの動体視力すらも上回る。

これが、敗北を知り、理屈を超えた「想い」の強さを手に入れた、新生ナイト・ブリザードの力!


「小賢しい真似を…!」

焦りを覚えたカミヤが、卑劣な手に出た。

彼は、近くで暴れていた魔人兵の一体を掴むと、自らの盾としたのだ。


「ぐっ…!」

クラウディアの剣が、寸でのところで止まる。

「ふはは! どうした、騎士殿! 罪なき(?)魔物も、君にとっては守るべき対象なのだろう!?」

「卑怯者…!」


その、一瞬の躊躇。

それこそが、カミヤの狙いだった。

彼は、魔人兵を盾にしたまま、リゼットの方へと、黄金の光線を放つ。


「リゼット!」

クラウディアの悲鳴が響く。

だが、リゼットは、もう、ただ守られるだけのヒロインではなかった。


『リゼット! 君の『守る力』を、本当の意味で解放する時だ!』

僕の、魂の叫びが、彼女の心に火を灯す。


「――アルトの声が、聞こえる…!」

彼女は、迫りくる光線を前に、怯まなかった。

それどころか、その光線から、背後にいる民衆を守るために、自ら、一歩前へと踏み出す。


「転送、第二弾! 対象、セーラー・フレア! その身に宿す太陽を、今こそ、その手に掴め!」


リゼットの頭上に、灼熱の光の渦が生まれる。

その中心から、ゆっくりと降りてきたのは、一振りの、巨大な剣だった。

刀身は、燃え盛る炎そのものを鍛え上げたかのように、陽炎を揺らめかせている。

炎の出力を最大化する、セーラー・フレア専用ウェポン。


「その名は――『フレイム・カリバー』!」


リゼットは、その両手で、まるでずっと昔から知っていた親友のように、自然に、その大剣の柄を握りしめた。

その瞬間、彼女の身体から、紅蓮のオーラが、天を焦がすほどに燃え上がった。


「あんたの光なんて…私の太陽に比べたら、線香花火みたいなものよ!」

彼女は、雄叫びを上げる。

そして、その巨大な炎の剣を、野球のフルスイングのように、薙ぎ払った。


「フレイム・サイクロン!」


放たれた灼熱の斬撃は、カミヤの黄金の光線を、いとも容易く飲み込み、霧散させる。

それどころか、余波の爆風だけで、周囲にいた魔獣の群れを、一瞬にして焼き尽くしてしまった。

圧倒的な、パワー。

それは、ただの破壊の力ではない。

「アルトを、みんなを、絶対に守る」という、彼女の、どこまでも真っ直ぐな想いが、形になったものだった。


「な…に…!? あの小娘が、これほどの力を…!?」

カミヤの顔が、驚愕と、そして、屈辱に歪む。

だが、彼の悪辣な演出は、まだ終わらない。


「ならば、これならどうだ!」

カミヤは、後方で戦況を見守っていた、負傷した騎士団員の一人を、その魔力で捕縛し、人質に取った。

そして、その喉元に、黄金の刃を突きつける。

狙いは、ただ一人。


「ヒーリング・エンジェル! お前が、その癒やしの力を使おうと一歩でも動いてみろ。その瞬間、この男の命はないと思え!」

「…っ!」

エミリアの動きが、ぴたりと止まった。

彼女の優しさ、そのものを、人質に取ったのだ。

これ以上ないほどに、卑劣で、そして、効果的な一手だった。


「く…!どうすれば…!」

動けないエミリア。その心に、再び、あの日のトラウマが、黒い影を落としかける。

私の力のせいで、また誰かが…。


『――エミリアさん!』

僕の声が、彼女の心の闇を、貫いた。

『君の優しさは、もう、誰も傷つけない! 君の癒やしは、悪意すらも浄化する力になる! 僕が、それを証明する!』


「アルト…さん…」

そうだ。

私は、もう一人じゃない。

私には、私の力を信じてくれる人がいる。私のために、戦ってくれる仲間がいる。


「第三転送、シークエンス・スタート! 対象、ヒーリング・エンジェル! 君の慈愛に、形を与えよう!」


エミリアの目の前に、天から、純白の光の粒子が、雪のように舞い降りてくる。

粒子は、彼女の祈りに応えるように、集い、一つの形を成していく。

それは、先端に、輝く翠の宝石がはめ込まれた、美しい、白木の杖だった。

広範囲の仲間を癒し、敵の精神を浄化する、ヒーリング・エンジェル専用ウェポン。


「その名は――『セラフィック・ハーツ』!」


エミリアは、その聖杖を、そっと、その胸に抱きしめた。

温かい。

アルトさんの、心が、伝わってくるようだった。


彼女は、もう、迷わない。

聖杖の先端を、天に掲げ、その瞳を、静かに閉じた。


「あなたを、裁きはしません」

歌うような、祈りの声が、戦場に響き渡る。

「ただ、どうか、その凍てついた心に、光が差しますように…」


「セラフィック・シャワー!」


聖杖から放たれたのは、攻撃的な光線ではなかった。

翠色の、オーロラのような、どこまでも温かく、優しい光の波動。

その光は、人質も、カミヤも、区別なく、戦場にいる全てを、平等に包み込んでいく。


「ぐ…うおおおっ!? こ、この光は…なんだ…!?」

カミヤの身体から、黒いオーラが、煙のように霧散していく。

彼の力の源である、民衆の負の感情が、この慈愛の波動によって、強制的に浄化されていくのだ。

人質の騎士も、その傷が癒やされていくのを感じ、驚愕の表情を浮かべている。


「馬鹿な…! 私の力が…! 私の描く、完璧な悲劇が…!」


新武装を得た、三人のプリズム・ナイツ。

その力は、もはや、カミヤの想定を、遥かに超えていた。


「さあ、ここからが、私たちのステージよ!」

リゼットが、炎の大剣を構える。

「ええ。あなたの、悪趣味な演劇の、幕を下ろす時ですわ」

クラウディアが、氷の双剣をクロスさせる。

「あなたの魂にも、きっと、救いはありますから」

エミリアが、慈愛の聖杖を、固く握りしめる。


三色の閃光が、再び、一つになる。

偽りの黄金の輝きを打ち破る、本物の希望の光となって。


「素晴らしい! 素晴らしいぞ、役者たち! それでこそ、私の悲劇は、より一層、美しく輝くのだ!」


追い詰められながらも、カミヤは、狂気的に、嗤っていた。

彼の瞳の奥で、さらに禍々しい、絶望の光が、その輝きを増していることに、まだ、誰も気づいてはいなかった。

反撃の第二幕は、まだ、始まったばかりである。

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