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【変神(ヘンシン)】で俺の考えた最強ヒロインをプロデュース!…したはずが、彼女たちの熾烈な争奪戦のターゲットになってました!?  作者: のびろう。
第6章 結成!プリズム・ナイツ!

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結成プリズム・ナイツ!…と、仁義なき席順争奪プレゼン大会

『嘆きの森』に、光が戻った。

呪いの元凶だった負のエネルギー集合体は、ヒーリング・エンジェルの慈愛の力によって浄化され、森は本来の生命力に満ちた姿を取り戻しつつあった。

小鳥たちのさえずりがBGMとして復活し、僕たちは英雄の凱旋のごとく、森を後にしていた。


「それにしても、すごかったわね、エミリアさん…」

「ええ。あの怪物を、戦わずに無力化するなんて…論理的には理解不能ですが、見事な結果でした」


リゼットとクラウディアが、傷ついた身体を引きずりながらも、賞賛の眼差しでエミリアを見つめる。


「そ、そんな…!わたくし一人の力じゃありませんです!アルトさんが作ってくださったプリズム・チャームと、お二人が戦ってくださったおかげで…!」


当のエミリアは、両手をぶんぶんと横に振って謙遜している。その姿は、先程までの聖母のような神々しさはなく、いつもの天然ドジっ子シスターそのものだった。

炎と氷、そして癒やし。三つの異なる力。三人の少女たち。

その光景を見ていた僕の胸に、ヒーロープロデューサーとしての熱い魂が、ふつふつと湧き上がってくるのを感じた。そうだ、今こそ、その時だ。


僕は、咳払いを一つすると、三人の前に進み出て、高らかに宣言した。

「皆、聞いてくれ!僕は、今、この瞬間をもって、我々のチームを正式に命名する!」

「「「え?」」」

三人の、きょとんとした顔。構うものか。こういうのは勢いが大事なのだ。


「太陽の光がプリズムを通して七色の輝きを放つように、君たち一人一人の個性と勇気が合わさる時、世界を照らす無限の光となる!悪の闇を切り裂き、人々の希望となる、聖なる騎士たち!その名は――」


僕は、天に指を突きつけ、叫んだ。


「――『プリズム・ナイツ』だ!」


………しーん。

森に、気まずい沈黙が流れる。

リゼットが、おそるおそる口を開いた。

「ぷ、ぷりずむ…ないつ…?」

「ああ!どうだ、素晴らしい響きだろう!」

「え、ええと…まあ、アルトが言うなら…」

「…ネーミングセンスの論理的整合性については、今は問いませんでおきましょう…」

「わぁ…!なんだか、かっこいいです…!」


三者三様の、いまいち締まらない反応。だが、純粋な瞳で目を輝かせているエミリアのリアクションに、僕はプロデューサーとして深く満足した。

かくして、後に世界を救うことになる英雄チーム『プリズム・ナイツ』は、僕のほとばしる特撮ヒーロー魂によって、ここに産声を上げたのである。



事件解決の報告を終え、王都へと帰還する馬車の中。

僕たちプリズム・ナイツの記念すべき初任務は、大成功に終わった。そのはずだった。

だが、この密室空間で、彼女たちを待っていたのは、新たな戦いだった。

それは、世界の命運などとは全く関係のない、しかし、彼女たちにとっては世界の命運以上に重要な、『アルト様の隣の席』を巡る、仁義なき戦いであった。


発端は、些細なことだった。

三人掛けの座席の真ん中に座り、今回の戦闘データをノートパソコンに打ち込んでいた僕の右隣にはリゼット、左隣にはクラウディアが座っていた。そして、僕たちの向かいの席に、エミリアが座っている。ごく自然な配置だ。

リゼットが、水筒を取り出し、僕に差し出した。


「アルト、喉渇いたでしょ。はい、特製のハニーレモンよ」

「おお、気が利くな、リゼット。クエン酸による疲労回復効果は、科学的にも証明されているからな」

「もう、理屈っぽーい!」

そんな僕たちのやり取りを、クラウディアが氷のような視線で一瞥し、フンと鼻を鳴らした。


「非効率的ね。本当に彼の疲労を回復させたいなら、アミノ酸やビタミンB群をバランスよく配合した栄養補助食品を摂取させるべきだわ。そもそも、なぜあなたが当然のように彼の隣にいるのかしら」

「なっ…!そ、それは早い者勝ちっていうか、幼馴染の特権っていうか…!」

「特権?論理的根拠の欠片もない、愚かな発想ね。プロデューサーの隣に座るべきは、不測の事態に最も迅速に対応できる、護衛としての能力が最も高い者であるべき。つまり――」


「異議あり!」


クラウディアの言葉を遮り、リゼットがばっと立ち上がった。ガタン、と馬車が揺れる。


「アルトの隣に一番ふさわしいのは、誰よりもアルトのことを想って、心と身体の健康を管理できる、私に決まってる!今日は、そのことをはっきりさせるために、プレゼンテーションをさせてもらうわ!」


プレゼンテーション。なんと知的な響きだろうか。

僕が興味津々で見守る中、リゼットは咳払いを一つすると、熱弁を振るい始めた。


「議題!『私がアルト様の隣に座るべき論理的かつ情緒的優位性について』!第一に、私はアルトが転生した赤子の頃から、彼の成長を逐一見守ってきました!彼の好きな食べ物、睡眠サイクル、研究に没頭する時の癖まで、全てのデータを網羅しています!これにより、彼のパフォーマンスを最大化させるための、最適なサポートを提供できます!」

ほう、と僕は頷く。確かに、彼女の生活支援能力は極めて高い。


「第二に!何よりも重要なのは、精神的な安定です!私が隣にいることで、アルトは故郷を思い出し、心が安らぐはず!この精神的安定こそが、彼の天才的な発想力の源泉となるのです!私がアルト様の精神的安定に最も貢献します!以上!」


自信満々に胸を張るリゼット。なかなかどうして、説得力のあるプレゼンだった。

だが、それに対して、クラウディアがすっと立ち上がり、冷静な声で反論を開始した。


「幼稚な精神論ね。感情的な繋がりが、必ずしも戦闘効率に直結するとは限らないわ。私のプレゼンを始めます。議題『プロデューサーの隣席配置における危機管理と戦術的最適解』」


おお、こちらも面白そうなテーマだ。僕はノートを取り出し、ペンを走らせる準備をした。


「第一に、馬車での移動中は、外部からの襲撃リスクが最も高まる局面の一つ。この際、プロデューサーの隣には、防御力と即応性に最も長けた騎士が配置されるべきです。私のナイト・ブリザードとしての能力、そして騎士貴族としての訓練経験から鑑みて、その任に最もふさわしいのは、論理的に私であることは明白です!」



ふむ。危機管理の観点から言えば、彼女の言うことにも一理ある。


「第二に、私は常に冷静な分析と判断が可能です。あなたが隣で不必要に騒ぎ立てることで、プロデューサーの集中力を削ぐリスクがあるのに対し、私は彼の思考を妨げません。静かで、安全で、効率的な環境を提供することこそ、最高のサポートと言えるでしょう。結論として、最適解は私。異論は認めません」


ビシッとリゼットを指差し、完璧な理論武装で締めくくるクラウディア。

二人の間に、バチバチと激しい火花が散る。


「な、なんですってー!」

「事実を述べたまでよ」


一触即発の二人。その時、これまで黙って成り行きを見守っていたエミリアが、おずおずと手を挙げた。


「あ、あのぅ…」


二人の視線が、一斉にエミリアへと注がれる。


「わ、わたくしなんかが、お二人のような立派なプレゼンはできませんけど…」

彼女は、少し頬を赤らめながら、はにかむように言った。

「でも、その…アルトさんのお傍にいると、なんだか心がぽかぽかして…わたくしの癒やしの力も、一番安定するような気がするんです…。ですから、もし、わたくしが隣にいれば…」


彼女は、にこっと、聖母のように微笑んだ。


「お傍にいるだけで、マイナスイオンを放出できるかもしれませんです」


マイナスイオン。

その、あまりにも予想外で、科学的根拠が皆無でありながら、しかし、謎の説得力を持つパワーワード。

リゼットとクラウディアは、鳩が豆鉄砲を食らったような顔で、完全に沈黙した。

…勝負、あったかもしれない。


三者三様の、熱いプレゼンが終わり、三人の視線が、裁定者である僕へと集中する。

僕は、書き留めていたノートから顔を上げ、興奮に目を輝かせながら、三人に言った。


「素晴らしい…!実に、素晴らしいプレゼンだった!」

僕は立ち上がり、賞賛の拍手を送る。


「リゼット君の提案は、オペレーターの心理的安定とモチベーション維持に焦点を当てた、ヒューマンセントリックなアプローチだ!クラウディア君のは、物理的セキュリティとリスクマネジメントを最優先する、極めて合理的な戦術論!そしてエミリアさんのは、生体エーテル波による環境恒常性維持という、全く新しい概念の提示だ!どれもが、今後の『プロデューサー・サポート・システム』を構築する上で、非常に価値のあるデータだ!」


僕は、キラキラした目で三人に詰め寄る。

「ありがとう、君たちのおかげで、僕の研究は飛躍的に進展した!この仁義なきプレゼン大会、ぜひ、定例会議として定期的に開催しようじゃないか!」


僕の、心の底からの感謝と提案。

それに対して、三人のヒロインは。


「「「…………」」」


顔を見合わせ、そして、この日一番の、深くて長いため息を、三人同時に、つくのだった。

僕の平穏と、彼女たちの仁義なき戦いは、まだ、始まったばかりである。

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