6 星の海と謎 (Aju)
第6走者:Aju
「う‥‥」
小さな呻き声と共に、タカミツが目を開けた。
「大丈夫? あたしが誰だかわかる?」
「運転技術者のココミだ。」
「大丈夫だ。脳はやられていないみたい。あんた、なんであんなとこに行ったのよ? てか、なんで今目覚めてるわけ?」
立て続けのココミの質問に、タカミツはしかめた顔を片手でつるりと撫でてから上体を起こした。
「前のシフトの時にタイマーを仕掛けておいたんだ。クレイと話がしたかったから。」
たしかに‥‥。クレイとタカミツはシフトが重なっていないな。
タクマは沈思黙考する。
「それ、よくAJUに見つからなかったわね。」
「AJUはリョウコを生み出すのに夢中だった。AJUにリョウコを創るよう示唆したのは僕なんだ。」
「「「なんだって?」」」
3人が同時に声を上げた。
この会話も、AJUは聞いてるはずだよな‥‥?
タクマはまた沈思黙考する。
「聞いてると思いますよ。むしろ、聞かせたいんです。」
タクマは驚愕した。
思考を読まれた? 動物言語学者というのはこんなことができるのか? まるでテレパスじゃないか!
「違いますよ。表情です。人間は他の動物よりも、はるかに表情が豊かだ。」
タクマが言ってもいない言葉にタカミツが答える。
「ちょっと怖いわね。でも、タクマはたしかに表情に表れやすくてわかりやすいよね。」
ココミまで! そんなに顔に出るか、俺?
「ねえ、クレイ。」
タカミツはクレイに向かって疑問を投げかける。
「人類はこの宇宙空間で滅びた方がいい‥‥そんな考えをなぜ君は持つようになった? 冷静で合理的なエンジニアだったはずの君が、いつからそんな自殺願望のようなものを持つようになったんだ? 乗り込む前からか?」
「そ‥‥」
言われてみてクレイは気がつく。
たしかに、乗り込む前にはそんなことカケラも考えたことはなかった。
むしろ人類の未来を背負って旅立てることに喜びと誇りを感じていたはずだった。
いつから‥‥?
この退屈な任務を何年も続けるうちに?
何回となくコールドスリープを繰り返すうちに?
「僕は目覚めてからしばらくの間——イレギュラーなウェークだから体がすぐには動かなかったこともあるけど——コントロールルームをモニターしていた。
まだふらつくらしく、タカミツは座ったまま頭を振る。
「君たちはコールドスリープの間に、意識を操作されたとは感じないか?」
タカミツのその言葉に、3人は足元の床が消えるような感覚を覚えた。
そういえば‥‥。
移住できる星を見つけて妻を見つける‥‥?
人類のわずかばかりの生き残りは置いてきたというのに‥‥。新しい星に人類である自分の妻になる女なんかいるはずがないじゃないか。
タクマは自分の思考がおかしくなっていたことに、ようやく気付いた。
「僕が見ていただけでも謎はいくつもある。不思議なことに君たちはそれをスルーしているけれど‥‥。室温が上がっていないにも関わらず、君たちが感じた熱は何だ? アラームはなぜ鳴った? 桜の木とは何のことだ?」
居住空間は重力を発生させるために回転するから窓の星々は回ってゆくけれど、この星の海の中で宇宙船は止まっているようにも感じられる。
永遠に——だ。
「AJUはいつの間に人工意識になった? あれはもともと、ただのサポートAI だったはずだ。そのAI が我々の意識に干渉しているとすれば、それは初めに誰かが仕込んでおいたものだということになる。‥‥誰が?」
「それとも‥‥AJUが言うように、自ら学ぶうちに変化したのか? AJUの真の目的は何だ?」
タカミツの言葉に、3人は声もなく佇むばかりだった。
昨日、地湧金蓮 様のおかげで新しいキャラも登場し、続きが一気に湧いてきました。
公開作業をしてから1時間ほどで書き上げ、例によって本日10時の予約投稿にしました。
次のしいな様の締切は27日午前10時となります‥‥が、多分今日中に来ますよね?
幕田すわぁん、頑張ってね。(^^;)