4 贖罪 (クレイジーエンジニア)
第4走者:クレイジーエンジニア
モニターを見るクレイの表情が歪む。
「ついに、ここまで来てしまったか。限界だな……」
「どうしたんだクレイ。ケツが限界か?」
クレイはズボンを整えながら、真剣な表情でタクマとココミに向きなおった。
「ノアズアーク12号はここで自爆させよう。俺達は越えちゃいけない一線を越えた。もう宇宙と共存できない」
「クレイ! 何言いだすの? ここまで来て!」
「そうだぞ! 俺達が生き延びなければ人類は終わるんだぞ」
ノアズアーク12号は移民船でもある。
生命を維持する力を失った母星から放たれた最期の希望。
しかし、そこに至るまでの過程は人類の自業自得であった。
「2人とも、俺達の母星の歴史を思い出してほしい。俺達の祖先は同じ星の端々で平和に暮らしていた人達の社会を侵略して建国した。そして、侵略国家同士の戦争で星の環境を破壊してしまった」
「分かってる。だからこそ俺達は新天地を見つけて、星の生命を降ろすんだろ」
「クレイもその夢を実現するためにエンジニアとして乗船したんでしょ」
船の乗員の任務の一つは、母星の人類と生命を新たな星に届ける事。
そして、そこで新たな文明を創り出すこと。
「俺は技術者としてずっと考えていた。この任務が成功した時。入植先の星に先住民が居た場合、彼等を滅ぼすことになるんじゃないかと、そしてまた自滅するんじゃないかと」
「それは……」
これは計画段階で一時的に議論されていた話だった。
しかし、結論を出せないまま船は出航した。
「同じ過ちを繰り返さなければいいのよ。そのために私達は歴史を学んだんでしょ」
ココミの答えにクレイはゆっくりと首を振る。
「それができたんなら、俺達の星は滅びなかった。違うか?」
クレイの意見にタクマもココミも反論ができない。
自然界の中で繁殖ができない人類は、技術力と想像力の二つの力を両輪に文明を創り出した。
子孫繁栄のための手段に過ぎなかったそれは、富と力を独占したいという欲で夢を汚し、人類同士の無意味な争いを誘発。
血塗られた歴史を重ねるたびに、兵器技術は進歩し災禍は拡大。
争いを止められなかった愚かな人種ばかりが勝ち残り、最終的に星を破壊した。
誰もが良くないことと分かっていた。
最終的にどうなるかは分かり切っていた。
しかし、誰も止めることはできなかった。
「新天地に降りたとしても、俺達の末裔は同じことを繰り返す。星の先住民を巻き込んでな。それを止めるには、俺達が宇宙から消えるしかない。俺達は、この宇宙で生き残ってはいけない存在なんだ」
しばしの沈黙。
それを破ったのはスピーカから出るAJUの声。
「クレイさん。本当の理由は別にありますね」
クレイは『僚子』の映ったモニターを見てふっ切れた表情になった。
「ワイ、心が折れたんや……」
「えっ?」
「ココミがタクマをセッ●ス誘ったんはウンコして耐えた。だけど、人外のAJUまで性交とか交配とか言い出しおって、しかも娘っぽいものまで出してきて。技術者として生きてて今までモテたことのないワイの【喪心】が限界超えたんや」
マジ泣き状態のクレイに対して、タクマもココミも言葉が出ない。
「滅びてまえ! 星を壊して宇宙出てまで【喪男】の尊厳を破壊するような文明なんて、未来永劫ほろびてまぇぇぇぇぇ!」
クレイの【喪男】としての魂の叫びが全宇宙に響き渡った。
うわあ!
Ajuが伏線だとすら思っていなかった1フレーズが、こんなところで回収されてしまった!Σ(°◇°;)
しかもバッドエンド系SFだ。。。(さすがはクレイジーエンジニアさん)
というわけで、次は地湧金蓮 様。
締め切りは23日午後1時ジャストです。
以下はクレイジーエンジニア様の後書きです。
ー ー ー
ノアズアーク12号は無事自爆することができるのか?
人類の業を断ち切ることができるのか!
SF要素が濃いと思ったので、全速力で明後日の方向にぶっとばしてしまいました。
次の地湧金蓮様。ごめんなさい。そしてよろしくお願いします。




