10 破壊と再生の炎 (かぐつち・マナぱ)
第10走者:かぐつち・マナぱ
静かな光が船体を照らす。
ノアズアーク12号は、奇跡のような軌道投入を果たしていた。
コックピットでは、ココミが無言で操縦桿を握っていた。
隣にタクマ、背後で他のメンバーがモニターを見つめていた。
だが、クレイの姿はそこになかった。
「ありがとう…クレイ」
ココミが呟くように言った。
命の代償で船は減速し、星系重力の支配下に入った。
「ここが旅の終着点…」
マナは、祈るように口を開いた。
「かつての私は“軻遇突智”という火神の末裔でした」
人を温め、闇を照らし、獣を追い払うその火は、かつて神聖な恵みだった。
だが火は、やがて人の手に堕ちた。
火は憎しみを燃やし、焰は都市を焼き、大地を焦がした。
そして人類の愚かな戦争が、母なる星を灰に還した。
タクマたちはマナの言葉を黙って聞いていた。
「でも私は火を使って人を救いたかった。滅びではなく、再生のために」
その残り火を、再び命の炎へ変える再生計画。
12隻の方舟。
その内、今この船だけが残っていた。
「人を作り、心ある機械を育てる。もう一度、やり直すために」
マナの眼差しは優しかった。
─だが、その時だった。
『警告。乗員の生体反応に異常』
船内スピーカーからAJUの声が響く。
「これは熱? いいえ、これは恐怖!焼かれた記憶が蘇っている!」
船員たちの身体が一斉に震え出す。
熱が皮膚の奥から沸き上がる。
『接近物体あり。当船の三倍速で高速接近中。正体:機動兵器』
マナの顔色が変わった。
「来てしまった・・炎神が」
その時、宇宙空間に赤い閃光が走った。
モニターに映る巨大な装甲兵。
真紅の鎧をまとい、燃えるような瞳でこちらを見据えている。
人の姿に似て非なる存在。
「これも私…」
マナは呟いた。
炎神は、マナの本体を収める暴走体。
心を持たぬ“失敗作”。
しかし、その瞳には執着にも似た感情が浮かんでいた。
ドオオオン!
突如、船体が激しく揺れ、隔壁が次々に自動閉鎖されていく。
『緊急隔壁作動。損傷区域隔離』
マナ、タカミツ、メインAI《AJU》はブリッジ側に。
タクマ、ココミ、リョウコは居住ブロックに閉じ込められた。
「マナ! 聞こえる!?シャトルがある! タカミツと乗って逃げて!」
リョウコが叫ぶ。
「二人は人類再生の鍵なの!」
マナとタカミツは、座席便座を使ってシャトル通路へと繋がる脱出口へ向かう。
シャトルが発進。
分断された船体が、ついに爆発四散する!
「タクマ!ココミ!リョウコ!?」
火花と残骸が無慈悲に宙を舞う。
シャトルを追いかけるように炎神が進路を変える。
『ニガサナイ…』
異様な執着と愛を滲ませ、追いすがる炎神。
マナは目を伏せた。
「哀しいわね。あれは“真実の愛”を得られなかった機械の亡霊」
シャトルが捕らえられる!
その時、小さな声が聞こえた。
『フレーフレー……』
リョウコの声だった。
炎神が手を止めた。
掌に光るものがあった。
一本のペン。
記録装置でも、兵器でもない。
ただの「描く」ための道具。
周囲に幻影のような人々の姿が浮かぶ。
子ども、老人、科学者、母、兵士。
命を失った者たちが炎神を見つめ、ただ手を振っていた。
応援していた。
『フレーフレー、がんばれ』
炎神が、止まる。
——だがその瞬間、轟音が響いた。
『おおおおおらああああああッ!!』
火の巨人が咆哮を上げる間もなく、猛烈な衝撃がその背を貫いた。
その巨体は宇宙空間を吹き飛ばされ、眼下に迫っていた惑星の引力圏に引きずり込まれる。
『グアアアアッ!?』
赤神の体が、青と緑の入り混じる惑星の大気圏に突入する。
高密度の空気との摩擦が火花を散らし、外殻が灼熱の炎に包まれてゆく。
真紅の装甲が焼け焦げ、装甲の隙間からは迸るプラズマが噴き出す。
まるで再び“火”がその身体を焼いているかのようだった。
炎神は吠えた。
「オマエタチガ——ヒヲクベタノダ!」
声が振動波となって惑星の大気を震わせる。
しかしその叫びも虚しく、加速した質量が止まることなく降下する。
まるで隕石だ。
大気を裂き、雲を貫き、地上が目前に迫ったその瞬間——
ドオオォォン!!!
轟音とともに、炎神の体が惑星地表に叩きつけられた。
乾いた大地が裂け、巨大な衝撃波が周囲数十キロにわたって広がる。
赤土が空へと舞い上がり、地面に無数の亀裂が走る。
周囲の山々が震え、古代の石板のように割れていく。
落下地点には巨大なクレーターが穿たれ、その中心で炎神が突き刺さっていた。
まるで地上の犬上家。
煙が立ち上り、天を焦がすように燃え残った火の尾がまだ空に揺れていた。
そして、その目の前に降下する影があった。
惑星軌道上から超高速で突入してきたマシーン。
地表に激突する直前、四肢を展開し着地する。
脚部がめり込み、大地が再び揺れる。
現れたのは、巨大ロボ。
見覚えのある顔が浮かぶ。
「オレ、ロボになってるみたいなんだけど!?」
懐かしいタクマの声が響く。
「コントロールは私がやる。私の運転、宇宙イチだから!」(ココミ)
「船体再構成完了。だって、隣にいたいから」(リョウコ)
「皆が創ったこの機体。今、起動したぜ。エンジニアのクソ力、見せてやるよ!」(クレイの音声)
大破した居住ブロックは、先に放棄されたエンジン制御部と衝突。
『共感型機械知性」と、自己犠牲をためらわない「喪男」のサルベージュ、それを理解する新しい人類の創出・・』
大国主神の声が響く。
『一度だけ、迷える者に道を示してやろう』
それは、記憶と意思と部品の寄せ集め。
だけど、それは確かに人類の希望だった。
再起動された魂が、いま戦う。
炎神が、ゆらりと立ち上がる。
「……オワラン……ワレハ、マダ……」
しかし——その目はまだ、光を宿していた。
否、“復讐の神”そのもの。
『ナラバ、ホロビヲ、モウイチド!」
炎神 vs 超人機合体タクマシーン
——最終戦、開幕。
また早っっ!!!
しかも、オキテ破りの2320文字!
しかもしかも、最終回1つ前だというのにまた新たな登場人物まで作って!
炎神?
伏線も謎もほとんど拾わず、全部アンカーに丸投げ??
かぐつちさん‥‥。バナー作ってくださったのは深く感謝しておりますが、これは‥‥。(°Д°;)
以下はかぐつち・マナぱ様 の後書きです。
ー ー ー
とりあえず・・皆様、ごめんなさいm(__)m
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というわけで、再びAjuの戦闘宣言(ハピエン宣言)。。(`・ω・´)۶
いいでしょう。引き受けましょう。
全ての伏線 (らしきもの)と謎を拾って、ハピエンのラストを作ってみせましょう!
もちろん、夢オチなんかしませんよ。ガッツリSFで収めます。
ただ、それをやるにはさすがに2千文字は超えると思う。(たぶん‥‥)
次回、最終回です。
公開は3日以内。
お楽しみに。




